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第43話 2つ名

イボスの酒場で宴会が開かれていた。


参加しているのは、イボスの冒険者でも最上級のパーティだけだ。


しかし、その中で風変わりなパーティが1つあり、同じ酒場の冒険者たちは訝しげに見ていた。


子どもが3人に、エルフとドワーフ。


しかも妖精族の2人は、変わり者で有名だ。


なぜ、この宴会に参加しているのか?


いろいろな意味で奇異の眼にされされていた。



そんな視線を浴びながら、居心地悪そうにするアマンたち。


一方で、シトリーとムラマサは知らん顔で酒を煽っていたが。



そんなアマンたちに、トロイが話しかけてきた。


「正直、俺はお前たちを舐めていた。申し訳ない!


お前たちは、ここにいるどのパーティにも引けをとらずに強かった。


いやあ、本当に申し訳ない」


トロイは早くも酔っ払っているようだ。



「いえ、この外見ですから致し方ないと思います。


私たちも今回の戦いで、大変学ぶことが多く、感謝しております」


トロイの呂律の怪しい言葉にも、丁寧に返事するアマン。



「謙遜するなって!今回一緒に戦った連中はお前たちのことを認めてるんだぜ」


トロイの言葉に、それぞれが賛同の声をあげる。


「特に、アーロン…あ、うちの『狙撃手』な。あいつがアマンをすげえ褒めてたぞ。


自分は何もする暇もなかったってな。攻撃が速すぎてアマンが何をしたかも正直分からないそうだ。


けど、気づいたらすげえ数の敵が倒れてたってな。


しかも殺ってたのが全部、迎撃体制をとってた奴らだったらしいな。


自分しかいなければ魔術師たちに確実に被害が出てただろうとさ」



「いえ、あの戦略こそが勝利の要諦だったと思います。本当に勉強になりました。


その中の働きは枝葉にしか過ぎません」


「嬉しいことを言ってくれるねえ」


アマンの言葉に、余計機嫌を良くするトロイ。



他の参加者も、それぞれ自分が戦場でどう立ち回ったか自慢しあい盛り上がっている。


その中でも『狙撃手』アーロンの話が一番盛り上がっているようだ。



「あの竜巻の中でも、魔術師たちに向かって迎撃しようとしてた奴が結構いたんだ。


良く訓練されてたみたいだな。弓兵に魔術師、こいつらが攻撃を仕掛けようとしていた。


俺はマズイと思って冷や汗を流したね。


俺の弓の連射でも全員は倒せねえし、下手したらこっちの場所がバレて反撃をくらう。


そう思った瞬間、風を切る音みたいなのが聞こえたんだよ。


何をどうしたかはわからねえ。けどな、迎撃体制をとってた奴らが全員バタバタ倒れていきやがる。


俺はその時、思ったね。今後一切、アマンに狙われる場所には絶対に行かねえってな!」



遠隔攻撃に関しては、イボスの街で一目置かれているアーロンの言葉だ。


皆が興味津々といった感じで話を聞いていた。



「アマンよお。手の内を全て明かすのは冒険者としてありえないだろうが、何がどうなってたんだ?」


「魔法を組み合わせて狙撃したんですよ。それ以上は秘密です」


アーロンの問いにアマンが答える。



「魔法による狙撃か。あれは本当にヤバイ。…魔撃…うん、『魔撃』のアマンだな!」


アーロンの言葉に皆、頷いている。


どうやら、アマンの2つ名が決まってしまったようだ。



「おい、アマン。どうやらこれから俺たちは『魔撃』って呼ばれるようになるみたいだぞ」


様子を見ていたサロスが笑いながら、アマンに言う。


「まあ、悪くないんじゃない?」


シトリーも笑っている。


エイミーもムラマサも笑顔だ。



宴も終わりに近づいてくると、参加者が三々五々に宿に戻っていく。


アマンたちもその流れにのって、宿へと戻った。



宿に戻り部屋に入ると、アマンは難しい顔をしていた。


アマンもサロスも、そんなに酒を飲んでいない。


ディアナが戦場にいなかったことが、2人とも気になっていたためだ。


「やはり、気になるか?」


「ええ。前線基地は潰した…そう考えても良いとは思います。


しかし、魔物を転移させていた張本人を逃したままというのは…」


「また、仕掛けてくると思うか?」


「わかりません。エイミーがこちらについたことで、あの砦のことがバレたのは承知だったでしょう。


たまたま不在だったのか、あの砦を捨てたのか…わからないことだらけです。


しかし、鍵となるディアナという魔道師がいなかったことは父上たちにも知らせておきましょう」


「そうだな。それが良いと思う。…で、これからどうする?」


「そうですね…相手の組織についての情報はまだありませんし、魔物の転移を警戒しながら迷宮に潜りますか」


「わかった。そうしよう!早く第5階層にも行きたいしな」



そうと決まったらという様子で、早速明日に備え寝る準備をするサロス。


その様子を見ながら、アマンは父に向けた手紙をしたためるのであった。

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