第41話 砦攻略
戦の作戦は、トロイと歴戦の冒険者によって立てられた。
会議に参加しながら、アマンは感嘆と悔恨の念を抱いていた。
もし、盗賊ギルドだけで事を進めなければ…
もし、もう少し自分に綿密な作戦が立てられていれば…
だが、その後悔はもう遅い。
そう割り切って、同じ失敗を繰り返さぬよう会議に真剣に参加した。
現在、作戦に従って、それぞれが持ち場についてディアナの砦を包囲している。
正面には前衛職を中心とした集団が待機。不慮の事態に備え、魔道師1人と司祭・僧侶が帯同している。
正面から見て右側面には魔術師5人とシトリーが待機。
万が一の護衛としてムラマサとエイミー、そして僧侶が1人帯同していた。
反対側の左側面には、狙撃手と狩人、そしてアマンが待機していた。
こちらにも万が一の護衛としてサロスが帯同している。
それぞれが持ち場についた。
まずは、魔術師の集団の上空にシトリーの使役した光の精霊がうっすらと登る。
まだ日が高いので、出現すると分かっていなければ見分けられないほどの光量だ。
続いて、前衛職の集団の上空にも魔道師が放った魔力による光が登る。
こちらも同様に、分かっていなければ見分けられない光量だ。
2つの光を確認したアマンは、狙撃手と狩人に眼で合図を送る。
砦には物見櫓が設置されており、そこには2人の見張りが立っている。
油断なく周りを見渡す姿は、とても山賊には見えない。
装備もしっかりしており、どこかの国で鍛えられた兵士のように見える。
狙撃手と狩人が、それぞれ分担してその見張りへと弓を放つ。
それを見たアマンが魔力による光の球を上空へ浮かべた。
こちらは、はっきりとした明るい光だ。
この光で、冒険者全員に攻撃開始が伝わる。
見張りは2人とも矢で脳天を貫かれ、音もなく倒れる。
その間に、シトリーが土の精霊を使役し始める。
魔法使いたちの立っている場所が徐々に競りあがり、物見櫓と同じほどの高さとなる。
地面が固定されると、魔術師たちは竜巻の魔法を全員で一斉に放った。
砦の中は、5つの大きな竜巻に蹂躙された。巡回している者を切り刻み、建物を破壊する。
魔法による襲撃に気づいて、魔術師たちに向かい弓を構える者と詠唱を始める者がいた。
この反撃を試みようとしている5人の敵をアマンが補足する。
反撃を試みる敵へ放ったアマンの超高速弾が次々と相手の頭蓋骨を貫いた。
特訓の中で最も効率の良かった大きさである最小限度の岩の槍を暴風の魔法により最高速で放ったのだ。
暴風による発射音が多少聞こえるが、近くにいないと聞き取れない程度の音だ。
死体の損傷も最小限であるため、貫かれた頭蓋を近くで良く見ないと死因もわからないだろう。
狙撃手と狩人は、アマンが敵を倒したことは認識したが何をしたかわからず、驚愕の表情を浮かべた。
竜巻とアマンの狙撃から免れ、正面から逃げようとする者たちもわずかにいた。
しかし、正面の扉を開けるとそこには前衛職の面々が待ち構えていた。
魔道師の支援も受けた前衛職の集団は、労することなく1人も残さず敵を殲滅する。
こうして、あっけなくディアナの砦は陥落した。
魔術師たちが竜巻の魔法を消すと、前衛職の集団が油断なく砦内を探る。
結局、生き残っている者は1人もいなかった。
冒険者たちの完勝である。
しかし、アマンは1つ危惧していることがあった。
ディアナの死体がないのである。
あの魔道師が砦にいたならば、戦局も大きく変わっていただろう。
エイミーの話によれば、迷宮で魔物を転移させるために、この砦を拠点にしていたはずだ。
アマンは、胸の奥にザワつく不安を覚えた。
しかし、この情報はパーティ以外の人間には伝えられない。
エイミーの立場が危うくなるからだ。
同じ違和感を覚えたのであろう。
アマンにサロスが近寄ってきた。
「あいつがいないな」
「ええ。あの人がいなかったことで楽な戦いになりました。
けれども、あの人がここにいない意味が我々にとって好ましい状況なのか…
何か…何か一手…我々の行動が遅れている感覚がして、正直とても不安です」
勝鬨と歓声が上がる冒険者の中で、アマンたちだけは暗い顔を浮かべるのであった。




