第40話 守護戦士トロイ
俺の名前はトロイ。
イボスで冒険者をしている。
かつて遺跡を探索したときに見つけたアーティファクト。
魔力を宿したミスリルの大盾が俺の相棒だ。
こいつで敵の攻撃を最前線で受け切るのが俺の仕事だ。
そんな戦い方からか、巷では『守護戦士』なんて2つ名で呼ばれている。
俺たちのパーティもリーダーが俺だから、そのまま『守護戦士』なんて呼ばれている。
俺たち『守護戦士』は、イボスではトップの冒険者パーティだ。
『守護戦士』を知らない奴は、モグリか成りたての冒険者くらいなもんだろう。
トップというのは誇張じゃねえ。
俺がランクAでレベルが63の『狂戦士』だ。
『狂戦士』は『重戦士』の上位職種だ。
3段階目の属性を持ってる奴なんて、そうはいねえ。
それに、他のメンバーだって強え。
ランクAでレベルが61の『侍』
ランクAでレベルが61の『魔道師』
ランクBでレベルが55の『狙撃手』
ランクBでレベルが51の『司祭』
俺たち5人の実力は、紛れもなくイボスのトップだ。
それに『狙撃手』や『司祭』なんて珍しい職種の奴までいるんだ。
どうしたって、目立つ。
最近、イボスの冒険者ギルドが高レベルのパーティに召集をかけている。
もちろん、俺たちにも声がかかった。
何か特別な依頼があるようだ。
ある日、その特別な依頼について説明があると連絡が入った。
ギルドの会議室に呼ばれていくと、俺たちの他にも5つのパーティがいた。
だいたいが知った顔だ。
イボスで活動しているなら高レベルのパーティ同士、互いにそれとなく知り合いになる。
『双剣』、『炎帝』、『大戦斧』、『舞姫』の4つのパーティ。
こいつらは、みんなランクBの冒険者で構成されているパーティだが、確かにイボスの最高戦力だろう。
イボスの冒険者ギルドは、戦争でもおっぱじめる気だろうか?
そんな会議室に、1つだけ見慣れないパーティがいた。
子どもが3人とエルフとドワーフで構成されたパーティだ。
明らかに浮いている。
子ども3人は冒険者に成り立てといった様子だからだ。
ランクもレベルも高いようには見えない。
さらに驚いたことに、一緒にいるのはシトリーとムラマサだった。
2人とも腕は確かだし、名も売れている。
だが、あんな気難しい奴らが、なんで子どもたちとパーティなんぞ組んでやがる。
それ以上に解せないのが、2人がパーティを組んでいることだ。
エルフとドワーフの仲の悪さは有名だが、特にこの2人は仲が悪くて有名だ。
訳がわからない…
他の連中も同じ事を考えているのだろう。
皆、この浮いているパーティをチラチラと見ている。
そうこうしているうちに、ギルド長のコンガスさんが会議室に現れた。
「みんな突然の招集にも関わらず、応じてくれてありがとう。
ここにいるのは皆、ランクB以上の冒険者だけだ。
これはつまり、皆が現時点でのイボスにおける最大戦力ということだ」
そうコンガスさんは、話を始めた。
しかし、皆一様に子どもたちを驚いた顔で見ている。
いまコンガスさんは、こう言ったのだ…
『皆、ランクB以上の冒険者だ』と。
「…嘘だろ?」
誰かが、そうつぶやいたのが聞こえた。
俺だって、にわかには信じられない。
しかし、コンガスさんがこんな大事な場で冗談や嘘を言うはずもない。
なんなんだ…本当に訳がわからない…
そんな場の空気を無視して、コンガスさんは話を続ける。
「なぜ、いまイボスの最大戦力たるお前たちを呼び出したかだが。
最近、イボスの迷宮で階層を越えた魔物が何度か出現している。
この中にも極秘裏に調査へ加わってくれた者もいるだろう。
王都とも連携をとり調査した結果、この現象は人為的に起こされていることがわかった」
会議室がどよめいた。
そりゃそうだ。俺だって、信じられない。
だが、それが本当なら迷宮だけで終わる話じゃねえ。
イボスの街全体の存続に関わる問題だ。
会議室のどよめきを鎮めてから、コンガスさんは言葉を続ける。
「犯人の潜伏先とおおよその戦力が判明している。
30名ほどの規模だそうだが、おそらく軍隊並みの戦力だ。
そいつらが砦を作って潜伏している。
正直、このメンバーでも全員無事に帰れるかはわからない。
だが、こいつらのやっていることはイボスへ喧嘩を売っているのと同じだ。
売られた喧嘩を買わないわけにはいかんだろう?」
コンガスさんの言う通りだ。
イボスの街に関わる者すべてに対して喧嘩を売ってやがる。
これを見過ごしたら、みんな良い笑いものだ。
周りを見渡すと、どうやらみんなも俺と同じように感じているようだ。
「愚かにもイボスへ喧嘩を売った犯人どもをぶっ潰す。どうか皆の力を貸してくれ」
コンガスさんの言葉に、皆が雄たけびを上げて応える。
俺も当然、叫んでいる。
誰に喧嘩を売ったか、せいぜい後悔させてやろうじゃねえか。




