第39話 Intensive training ~アマン~
イボスの街から少し離れた砂漠。
見渡す限り荒涼とした場所に佇み、アマンは瞑目していた。
『アマン。お前は、優れた忍者であり魔術師だ。
共に戦った感覚からすれば、すでに魔道師の域にあるだろう。
しかし、その能力を存分に発揮できているのだろうか?
お前の父は、常にその場で必要となる事柄を掴み取り行動する。
例えば、迷宮での戦いと盗賊の討伐では、戦い方を変えるだろう。
お前は忍者の能力も備えている分、父より戦い方の選択の幅が広いだろう。
だが、見ている限りお前は戦い方に選択の幅を持たせていないように思えるのだ』
アマンは瞑目しながら、サディアスの言葉を反芻していた。
図星であると思った。
そして、盗賊ギルドのメンバーと挑んだ山賊の討伐を思い起こさせられた。
自分の戦い方次第で、死者の数は減っていたのではないかと。
あの戦いにおいて、最初に見張りを倒すところまでは隠密と魔法を上手く使えたと思う。
しかし、その後は魔術師として戦線に立ち、暗殺者としての能力を活かせていない。
もし、砦を破壊した後、前線に立たずに隠密を活かして敵の勢力を減らしていたら…
反省と後悔の波が、アマンの脳裏に押し寄せていた。
「父上なら、どうしていただろうか…」
そうつぶやきながらも、答えはないことをアマンは自覚していた。
サディアスの言う通り、父と自分では持っている能力が異なるからだ。
隠密を活かして敵の勢力を減らす。
そう考えた時、どのような戦い方が自分にできるのか。
突然、強く吹いた風がアマンに砂を浴びせる。
しばらくして、瞑目していた眼を開けるとアマンはつぶやいた。
「死角から目立たない魔法を放ち、敵を無力化する」
隠密により相手に気づかれない位置を保つ。
そして、そこから敵の急所を狙い撃つ。
再び隠密により相手に気づかれない位置へ移動する。
無防備な敵を狙い打つことで、真正面から戦うよりも倒せる数が増やせるかもしれない。
場合によっては、指揮を執る者を早々に倒せるかもしれない。
それにより相手側が気づかないうちに戦況を変えることもできうる。
「目立たない魔法…」
再び、つぶやくアマン。
山賊の見張りには、氷の槍を高速で飛ばした。
大きな氷の槍が見張りの山賊の腹を貫いた。
見張りが複数いれば、襲撃を気づかれる可能性が高い。
もし、隣にいても気づかない倒し方ができれば、見張りが複数いても襲撃を知らせる前に倒せるかもしれない。
目立たないようにするには、どうすればよいか…
より小さな魔法…
より速い魔法…
音のしない魔法…
そこまで考えをまとめると、アマンは腕を前に突き出した。
そのまま、荒涼とする砂漠に向かって魔法を放つ。
次々と槍の大きさを小さくしながら放っていく。
氷の槍が砂漠へと飛んでいき、離れた場所で次々と砂埃が上がる。
「小さくする分、確実に急所を貫通させる必要があるな」
貫通力を確かめるために的が必要だと感じたアマンは、離れた位置に土魔法で大岩を出現させる。
今度はこれを的にしながら、氷の槍を放つ。
段々小さくしていくと、ある大きさから岩に当たると砕けてしまう。
氷の槍は小さくするほど破壊力が落ちることが分かった。
「もっと速く飛ばせば貫通するだろうか」
そこでアマンは、出現させた氷の槍を暴風の魔法で弾き出してみた。
すると、それまでとは比べ物にならない速度で氷の槍が飛んでいった。
しかし、超高速で打ち出された氷の槍は、的に当たる前に空気摩擦で解けてしまった。
失敗はしたが、求める速度を出す方法としては合っているとアマンは考えた。
次に、氷ではなく小さな土の槍を創り出し、暴風の魔法で弾き出す。
打ち出された土の槍は超高速で飛び、空気摩擦で真っ赤になりながらも的である岩を貫いた。
既に辺りは暗くなっている。
自分の求める方向性を見出したアマンは、最適な大きさを探るため土の槍を放ち続けた。
真っ暗な砂漠に、真っ赤な光線が朝まで流れ続けるのであった。




