第38話 Intensive training ~エイミー~
イボスの街から少し離れた森の中。
エイミーの姿がそこにあった。
森の中でエイミーは、一心不乱に剣を振っていた。
イボスの街で新たに購入した剣の感触を確かめるためである。
いつもと同じようにリズミカルに舞うような素振りである。
が、いままでとは違い、両手に剣を握っている。
素振りを繰り返すが、2本の剣を操っているとどうしても不慣れな左腕に意識がいってしまう。
『エイミー。お前の剣は、美しい。まるで舞をみているようだ。
スピードもテンポも良い。手数も多い。鋭さもある。
大概の相手であれば、遅れをとることはないだろう。
しかし、あえて言うならば、一撃の重みが軽い』
エイミーは、必死で双剣を操りながらサディアスのアドバイスを思い出していた。
『修練により、今よりは攻撃の重みを増すことはできるだろう。
しかし、それには限界がある。ならば、いっそ手数を更に増やしてはどうだ?
底の見える攻撃の重さを追うよりも、おまえのスピードとテンポの良さをより活かすのだ。
そのために、双剣のスタイルにしてはどうだろうか?』
エイミーは、サディアスの言葉に従った。
合理的な提案だったからだ。
自らの剣の軽さは痛感していた。スピードを更に上げ、手数を増やすことでそれを補うつもりだった。
双剣のスタイルにすることは、その課題に対する合理的な解答であった。
イボスに戻ると、エイミーはムラマサのバイトしている武器屋に向かった。
いままで使っていた剣を売り払ってしまい、それまでよりも重さの軽い長剣を2本購入した。
そして、そのままサロス同様、訓練のために森へと向かった。
最初は新しい剣の感触と2本操る感覚に慣れるため、ゆっくりとした素振りから始めた。
次第に慣れてくると森の木を蹴り、落ちてくる葉を双剣で踊るように斬っていった。
初めは剣に当てられずに落ちてしまう葉が多かった。
だが、時間が経つにつれ、そのまま落ちる葉は減っていった。
「手数は増やす。でも、鋭さは失ってはいけない」
エイミーは、そうつぶやくと再び落ち葉と格闘する。
剣に当てるだけではなく、落ち葉を切断するように心がける。
すると、また剣に当てられずに落ちてしまう葉が増える。
気が遠くなるような作業だが、エイミーはひたすら双剣で舞い続ける。
日も暮れかけてきた頃になると、無傷で地面に落ちる葉はほとんど無くなっていた。
無心で舞い続けるエイミー。
それを近くの木の上で、シトリーが見守っていた。
アマンやサロスのような規格外の才能は見られない。
しかし、そのひたむきさにシトリーは感心していた。
日が落ち、森が暗闇に包まれる。
エイミーは、まだ自分の剣に納得がいっていなかった。
しかし、これでは落ちてくる葉が見えない。
諦めて街に戻ろうかと考えていると、エイミーの周りに光の球がいくつも漂い始めた。
シトリーの召喚した光精霊である。
驚いているエイミーにシトリーが声をかける。
「暗くて何も見えないと不便でしょ?」
「シトリー…ありがとうございます」
いままであまり話したこともないシトリーの出現に戸惑うエイミー。
「私、がんばってる子見てるとほっとけないのよね」
そう言って笑いながら、いつも使っている弓ではなく細剣を抜く。
「相手がいた方が訓練になるんじゃなくて?」
シトリーの微笑みに、エイミーが笑顔で頷く。
2人の美女が薄暗い森の中、淡い光に照らされながら打ち合う。
幻想的な光景にも見えるが、打ち合いは見た目よりも激しい。
シトリーのメインウェポンは弓であるが、必要であれば細剣も使用してきた。
レベルも経験も遥かに凌駕しているシトリー。
前衛職のエイミー相手でも、シトリーの細剣は冴え渡っていた。
格上の相手に全力で舞うエイミーは、双剣の手応えを感じ始めていた。
こうして、夜が明けるまで2人の美しい舞は静かな森の中で続けられたのであった。




