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第35話 サイラス迷宮

サイラスでは、かつて古代魔法王国の動力源として扱われていた火の精霊王であるイフリートが封じられていた。


大陸統一の英雄たちが火の精霊王を解放したが、イボス同様、封じていた魔石の処理に困ってしまった。


イフリートを封じていた4つの魔石からも、そこから漏れる魔力により魔物が生み出されてきたからである。



そこでサイラスにおいてもイボスと同様、神殿の地下に迷宮を作り魔石を封じることとした。


その方法として、やはりイボスと同じように迷宮の各階層の出入り口に結界を張った。



結界は、強力な魔物を通さないように深層へ行くほど巨大なものとなっている。


しかし弱い魔物は、巨大な結界を通り抜けてしまう。


そこで上層階に上がれるにつれ結界を細かくして、全ての魔物が迷宮の外へ出れないように作られている。



イボス迷宮と違う点は、サイラス迷宮は10階層から成っていることが挙げられる。



封じた魔石の数が多いせいか、サイラス迷宮の方が強力な魔物が生まれやすかった。


安全のため冒険者が活動できる制限が階層ごとに厳しく決められている。


最深部の第10階層を探索するには、冒険者ランクAでレベルが71を超えていなければならない。



また、もう1つの違いとしては、第8階層より下が分岐していることである。


第8階層より下へは4つのルートが存在しており、それぞれのルートの第10階層に魔石の部屋が個別に設置されていた。



パーティで探索する場合は、その中で1番低いランクとレベルの者に合わせて制限が課せられる。


現在、アマンたちの中ではエイミーのレベルが1番低く、ランクCのレベルが35である。


そのため、サイラス迷宮の探索は第5階層までしか行えないことになるのであった。



この点について、依頼主のサディアスに聞いたところ、魔物の転移についての調査は第5階層まで行ければ十分とのことであった。



サイラスの冒険者は探索制限の効果もあって、安全マージンをかなり取る傾向にあるらしいのだ。


制限よりも1~2階層上で探索を行うのが、サイラス迷宮における冒険者の常識であった。


そのため第5階層以降に潜れる冒険者は、魔物を転移されてもそうそう遅れを取らないであろうという判断であった。



また、いるかわからない転移した魔物を発見するには相当な時間がかかるうえ、運にもよる。


そこで、同じ冒険者という立場で、周りの冒険者たちから実地の聞き込み調査をすることの方がメインと考えているらしい。



第5階層を探索するに辺り、安全マージンに関して話合いが行われた。


エイミーはギリギリだが、シトリーとムラマサでも第7階層まで潜れるので、全体として問題ないだろうということになった。



「さあ、サイラスの迷宮はどんなものかな?」


サロスが意気込んで向かう。


隊列は、前衛にサロスとサディアス。中衛にアマンとシトリー。後衛にムラマサとエイミーという布陣である。


護衛対象が前衛というのはどうかという話になったが、サディアスの強い要望でこうなったのだ。


しかし、結果として大変バランスの良くとれた隊列となっていた。



サイラスの迷宮では第1階層から上位種の魔物が集団の統率をとっていて、本来よりも手ごわい。


その上、戦闘が少しでも長引くと、必ずといっていいほど後ろから他の魔物の集団が挟み撃ちに来る。


後衛であっても、エイミーもムラマサもほとんど前衛と変わらぬ働きをしていたからだ。



第3階層に入ると早速、ゴブリンロードが率いるゴブリンの集団と遭遇していた。


「浅い階層の割りに上位種が混ざっていることが多いですね」


「だから皆、安全マージンをとるのだろう」


アマンの言葉にサディアスが相槌を打ちながら、ゴブリンを斬り伏せていく。



サロスとサディアスがゴブリンをなぎ倒しながら、最後尾にいるゴブリンロードに迫る。


が、その間にまたゴブリンジェネラルの集団が後ろから襲ってきていた。


「それに何しろ魔物の数が多いのぉ」


ムラマサが呆れたように言いながら、ゴブリンジェネラルの集団に向かっていく。


「魔石の数が多い分、魔物も多く産まれるのでしょう」


ムラマサの戦斧とエイミーの剣に魔力付与エンチャントをかけながら、アマンがそう応える。


「なかなか歯ごたえのある戦場だな」


そう言いながらゴブリンロードの首を刎ねたサロスが笑う。



本人たちからすれば思ったよりも時間がかかったのだが、通常の冒険者では考えられないスピードで迷宮を降りていく一行。


昼頃には目的の第5階層に到達していた。


初見で挑んだにしては驚異的な速さであった。



口には出さなかったがサディアスは、サロスのパーティの実力に安堵していた。


大事な第3王子を託すに値するパーティだと認めたのだ。



第5階層を軽く探索したところで、アマンたち一行は街へ戻ることにした。


特に異常は見られず、魔物の転移については何の手がかりもなかったからである。



サイラスの街へ戻り、大量の討伐部位を冒険者ギルドに引き渡す。


大量の成果に受付嬢の顔が引き攣っていたのは、サイラスでも同じであった。


冒険者ギルドでの手続きを終えると、アマンたちは聞き込みを兼ねて、冒険者が多く出入りする酒場へと向かうことにした。

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