第34話 改めて自己紹介
サディアスとの会見も終わり、街の宿屋を探そうとしていた一行であった。
しかし、城内で一泊するよう強く言われてしまい、断ることも出来ず泊まることになった。
1人に1部屋づつ豪華な部屋を割り当てられ、シトリーとムラマサは落ち着かないようだ。
それに先ほどの会話の内容にひっかかり、サロスの部屋に押しかけている。
当然、放っておくこともできず、メンバー全員がサロスの部屋に集まった。
最初に口を開いたのは、意外にもムラマサだった。
「サロス。お主は、まさか王族なのか?」
「ああ、その通りだ。現国王の第3子だよ」
「え?え?それって…第3王子ってこと?なんで、あんたそんなこと知っているのよ!」
シトリーが、なぜかムラマサに食って掛かる。
「普段の振る舞いから貴族の子弟であるとは思っておった。
御家の経済状況が芳しくなければ、嫡男以外の子弟が冒険者として身を興すこともあるからな。
だが、まさか王族の…しかも第3王子だとは…
さっきの公爵閣下の話がなければ、にわかには信じられんわい」
「え?さっきの話でそこまでわかるの?」
「…これだからエルフは世間知らずだと言われるんじゃ。
最高位の貴族である公爵。しかも6大領地の1つを任せられている公爵が殿下と呼んで目上として扱う人物は少ない。
それにこの領地の本当の領主であるとも言っていたからのう」
6大領地とは大陸を統一した王国が、その領土を治世の都合で大きく6つに分けたものである。
国王直轄地、王太子領、第2王子領、エンフィニア領、アイロニア領、シルフ領。
このうち、アイロニア領、シルフ領は、鉄の国と風の国と呼ばれたドワーフとエルフの国を本領安堵されたものである。
それ故、ある程度の自治が許されている領土でもある。
それ以外の4つの領地は、王族により統治されていた。
エンフィニア領は、元々戦乱を起こした帝国のあった場所であったので、信頼できるサディアス公爵が統治に当たっていた。
しかし、いずれは王族…順番的には第3王子が継ぐべき領土であった。
「サロス!なんでそんな大事なことを教えておかないのよ!」
シトリーの文句にサロスが答える。
「さっきムラマサも言っていただろう?こんな話をして、まともに信じるか?」
そう言って、ニヤリと笑うサロス。
「確かに、そうじゃな」
1本とられたわいと、ムラマサが笑う。
シトリーは、未だに不満そうに聞く。
「じゃあ、サロスっていうのは偽名?」
「いや、偽名ってわけじゃない。サロス・ロキ・コンコードってのが正式な名前だ」
「本当に王族なのね…」
「ちなみにこいつの本名は、アマン・ソーサリス」
「ソーサリスって、大陸の賢者の!?」
「おいおい、わしらはとんでもない連中とパーティを組んだもんじゃの…」
シトリーもムラマサもあきれ返った顔をしている。
「で、お主らは、これからどうするんじゃ?」
「もちろん、この依頼をこなしてランクBになる。
そして、魔物の転移を行っている連中を潰す!」
サロスの当然だといわんばかりの言葉に、ムラマサは微笑む。
「しばらくは冒険者として、放蕩するということか。
まあ元々、わしはお主らが気に入ったからついてきただけじゃ。付き合う分には構わんよ」
「もちろん、その後は約束通り、第5階層の魔石の部屋へ行くぞ」
「英雄王の息子が言っていると思うと、前よりも現実味が増して感じるのは不思議じゃな」
そう言って、ムラマサは笑う。
「冒険者として活動して、第5階層の魔石の部屋へ行くっていうのは変わらないのね?
だったら、私もそれでいいわ。嘘をついていたわけじゃないしね」
シトリーもその言葉に溜飲を下げたようだ。
アマンとサロスは、ムラマサとシトリーの言葉を聞きながら、自分たちの出自を知っても態度を変えないことを静かに喜んでいた。




