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第33話 サディアス公爵

サディアス公爵は、初老ながら現役の上級冒険者であるアマンたちを威圧するほどの存在感があった。


抜き身の剣が服を着て、そこにたっている。


そんな迫力だ。


思わず全員が身構えてしまう。



そんな反応にも動じず、サディアスはその鋭い視線でアマンたちの動きを確認する。


「その反応。腕は確かに立つようだな。


…しかし、おかしいな?私はイボスの冒険者に依頼を出したのだが?


何かの間違いだろうか?」


静かだが、低く響く声でサディアスがつぶやく。


もちろん、わざとアマンたちにも聞こえるようにだ。



シトリーとムラマサは、何を言われているかわからず困惑の表情となる。


一方で、サロスの表情が固まる。



そんな3人の反応を他所にサディアスが言葉を続ける。


「そうか!イボスの冒険者が到着したというのは誤報か。そんなはずがあるはずない。


いや、失礼しました。ようやくご自分の領地へご視察に来てくださいましたか、殿下」


サロスが脂汗を掻きながら答える。


「いえ、師匠。お願いですから殿下はやめてください…


私たちが依頼を受けたイボスの冒険者で間違いありません」



サロスの狼狽振りを気にすることなく、サディアスが続ける。


「これは異な事を。護衛対象よりも高貴な方が護衛になるなど聞いたことがございませんぞ」


「いえ、私は一介の冒険者ですので…」


サロスの返答にサディアスの目線が更に鋭くなる。


「まだ、そのようなことを!殿下は、このサディアスへ簒奪者になれと仰せか。


私はあくまでも殿下がお継ぎになるまでのつなぎの領主ですぞ。


我が公爵家は、このままこの地を統治するつもりは一切ございません。


私が倒れれば、この地を陛下に一時預かっていただく所存。これは我が一族の総意でもあります」



サディアスの言葉は、貴族の腹芸ではなかった。


現在、エンフィニア領の一部分をサディアス公爵領として、すでに嫡男が治めている。


将来、サディアスの嫡男がエンフィニア領全体を継がないことを正式に表明しているのだ。



「し、師匠。その話は、また後日ということで…」


サディアスの思いを知っているサロスは、しどろもどろになりながら依頼の話に戻そうとする。


そんなサロスを再び鋭い視線で見つめるサディアス。


「殿下、二言はありませんな?今度こそ、きちんと話し合いをしていただきますよ」


神妙な顔で頷き答えるサロス。


「わかりました…」



『デンカ』『コウキ』といった言葉が、いまいち飲み込めていないシトリーが質問する。


「よくわからないけど、そっちの2人の話は後回しってことね。


じゃあ、さっそく今回の依頼内容を伝えて欲しいのだけれども」



シトリーの言動に今度はムラマサが固まる。


「お主…本当に相手が誰かわかっておるのか…物怖じしないというか…無知というか…」


これだからエルフは…と、こぼすムラマサ。



シトリーの態度など全く気にしたそぶりのないサディアスが話し始める。


「では、『冒険者諸君』に今回の依頼内容を説明しよう。その前に、ソファーにでもかけたまえ」


サディアスの言葉で、ようやくソファーに腰を落ち着ける一行。


「君たちは事情を知っているということでイボスのギルドから推薦を受けている。


今回、私が行いたいのはサイラスの迷宮でも魔物の転移が行われていないかという調査だ」


サディアスの言葉にアマンが驚く。


「公爵閣下が自ら調査するのですか?」


「うむ。内容が内容だけに他に漏らせないことであるしな。あとは、私の鍛錬も兼ねている」


平然と言い放つサディアスに呆気に取られるアマン。



「ただ、私1人では目立つであろう。


そこでだ。サイラスでは見かけないイボスの冒険者に紛れようと考えたわけだ。


つまり、今回の依頼は護衛兼調査員というわけだな」


「…十分、目立つと思いますが…いろいろな意味で」


サロスが、ボソリとつぶやく。



トラネスの街から少し離れているとはいえ、領主の顔を知っている者もいるだろう。


それに初老のいかにも強者な冒険者がいれば、嫌でも目立つ。


確かに見慣れないパーティに紛れれば、少しは緩和されるであろうが…



「そういうことで、明日から私も君たちのパーティの一員として遇して欲しい」


サディアスの言葉に、サロスも注文をつける。


「では、我々のことも名前で呼んでくださいよ、師匠?」


「もちろん、そのつもりだ。では早速だが、明朝からよろしく頼む」

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