第30話 冒険者の面子
冒険者ギルドのギルド長執務室。
アマンたちパーティーは、ギルド長コンガスと向かい合っていた。
「そうか…。今度は、魔人兵が第4階層に…」
コンガスが苦渋の表情でつぶやく。
冒険者ギルドに来るまでに、エイミーがアマンだけに耳打ちしたことがある。
「アマン様。あの魔人兵が最初の実験体です。
転移魔法に魔人兵が抵抗したため、第4階層に残してきました。
私ともう1人の護衛がいたのですが、もう1人の護衛が魔人兵に殺されています。
それで深層の魔物の転移は危険と判断し、第3階層から第1階層への転移に方針を変えました」
しかし、この内容をそのまま伝えることは、エイミーの身元を脅かすことになる。
そこで、内容をわざとボカしてアマンは話を切り出した。
「第5階層の魔物を転移させるのは、犯人たちも難しかったのではないでしょうか?
攻撃魔法と判断して抵抗する可能性もありますし、相対するので危険もあります。
魔人兵で懲りたから、第3階層の魔物を第1階層に送ることにしたのではないでしょうか?
そう考えると我々が出会った魔物が最初の実験ではないかもしれません。
今回の魔人兵が最初の実験だった可能性が高いと思います」
「なるほどな。アマンの言うとおりかもしれない。
第5階層の魔物が第1階層になんか出てきたら、今みたいに秘密裏に調査するどころではないしな」
アマンの言葉にコンガスが頷く。
「この件に関して、王都から何か指示はあったか?」
「具体的には、まだだな。お前らの言うとおり、実態は把握しているようだが…
高ランク冒険者で調査をするように依頼されただけだ」
サロスの問いにコンガスが答える。
「確かに現状で冒険者ギルドが何かできるわけではないですからね」
「くやしいけど、その通りだ」
アマンの言葉に悔しそうな顔をするコンガス。
「でももし、犯人の居場所に目星がついたと言ったらどうしますか?」
アマンが意味ありげな目線でコンガスに問う。
それに気づいたコンガスは、少し考えてから答える。
「相手は、どのくらいの戦力だと思う?」
「少なくとも30名。軍隊並みの戦力層で魔道師までいると思います」
少し青ざめたコンガスだが、間を少しおいて答える。
「うちに所属している高ランク冒険者パーティーの精鋭が5つで25名いる。
下手に大軍を送るよりも、質の高い精鋭を送り込んで潰す」
コンガスの返答にアマンも答える。
「戦う意思はあるということですね」
「もちろんだ。冒険者もギルドも迷宮があって成立してるんだ。
それを無茶苦茶にされたら、生活が成り立たねえ。
だから今回の犯人は、俺たち迷宮に関わる者全員の敵だ。
冒険者と冒険者ギルドの面子にかけて、当然戦うし潰す!」
コンガスの強面が迫力のある笑顔を見せる。
「なるほど。よく理解できました。では、私たちを加えて6パーティー30名ということですね」
「まぁ、確かにお前らなら見劣りしねえけど…
ランクCのパーティーをそんな危険なところに送るのはな…」
渋い顔をしてコンガスが答える。
「なに、難しく考えることはない。出発までに俺たちがランクBになっていればいい。そうだろ?」
サロスが精悍に笑い、そう言い放つ。
「シトリーとムラマサも、それでいいのか?」
コンガスの問いにムラマサが淡々と答える。
「第5階層の最深部に行くためには、相応の修練が必要じゃ。これも良い機会じゃろ」
「たまには良いこと言うじゃない。私もそう思うわ」
シトリーも同意する。
「わかった。その時は、よろしく頼む。
ただし、全員が冒険者ランクBになっていることが条件だぞ?」
「問題ないな」
コンガスの念押しに、あっさりとサロスが答える。
いかつい顔に心配そうな表情を浮かべたコンガス。
「ランクが上がったばかりのお前らに頼むのは気が引けるが…
確かに精鋭の中にお前らは入る。条件をクリアしたら是非頼む」
「任せておけ」
サロスがコンガスの肩を叩きながら、軽く言い放った。
コンガスと別れ、執務室から依頼掲示板の前に移動したアマンたち一行。
しかし、そこで5人はため息をついていた。
高ランクの依頼が全くなかったからである。
「あれだけ大見得切った手前、ランクBに上がれなかったっていうのは格好つかないな」
サロスが苦笑いする。
「とりあえず今日は宿に戻って休みましょう。
まだ第4階層の魔物の討伐数もランクアップ課題に届いていませんし、討伐しながら依頼を待ちましょう」
「それしかないわね」
アマンの言葉にシトリーも同意する。
こうしていつもの宿に戻っていく一行であった。
翌朝、早速迷宮へ向かったアマンたち。
いつも通り、第4階層まではエイミー1人で討伐していく。
エイミーもステータスが上がってきているため、第4階層に辿り着くのに時間は左程かからなかった。
第4階層に到着すると、昨日と同様のフォーメーションで探索していく一行。
この日は魔人が出るといったアクシデントもなく、軽々と討伐をこなしていった。
最初からかみ合っていた連携も更に磨きがかかり、結成して2日とは思えない仕上がりとなっていた。
「ドワーフがいるから認めたくはないけど、私たちってずいぶんと相性が良かったのね」
シトリーが悔しそうに言う。
「何を言うか。こっちこそエルフなんぞが居る割りに、今までのパーティーより戦い易くて驚きじゃ」
ムラマサも手応えを感じているようだ。
「歴戦の2人がそう言うのであれば、パーティーとしての動きに問題はなさそうですね」
アマンがほっとしたように言うと、シトリーとムラマサが呆れたような声をあげる。
「そっか…あんたたちパーティーを組むのは、これが初めてなんだっけ…」
「呆れた小僧たちじゃのう…」
2人の様子がおかしかったのか、エイミーが嬉しそうに笑う。
そんな雰囲気を満足そうに見ていたサロスが声をかける。
「連携もばっちりということで、今日は一日ここで魔物を倒しまくるか!」
皆が、その声にうなづく。
結果、この日だけでランクアップに必要な討伐数の魔物をしとめてしまう一行であった。




