第29話 連携(後編)
筋骨隆々の人間の上半身にヤギの頭と下半身をもった魔人兵。
その怒りの咆哮は、通常の人間であれば恐怖で動けなくなるほど凶悪なものであった。
しかし、アマンたちには恐怖を与えることはなかった。
死霊を全滅させたサロスが魔人兵の前に立ちはだかる。
魔人兵の豪腕が繰り出した大剣をこともなく受け止めるサロス。
つばぜり合いをしている隙に、スケルトンを全滅させたムラマサが後ろに回る。
そのムラマサの戦斧に魔力を付与するアマン。
サロスの予想以上の膂力に、つばぜり合いへ集中せざるをえない魔人兵。
その背中にムラマサの戦斧が深々と刺さる。
咆哮を上げながら魔法によって戦況を変えようと魔人兵が詠唱を始める。
すると、再びシトリーがシルフに音を奪わせる。
一方、アマンたちの背後から別のスケルトンの集団が5体襲いかかっていた。
後方を警戒していたエイミーが、このスケルトンたちを迎え撃っていた。
しかし、今のエイミーでは5体を相手にしては押され気味であった。
そんなエイミーをアマンの魔法が援護する。
アマンの放った氷の槍が1体のスケルトンを木っ端微塵にする。
アマン自身も他のスケルトンに迫り、魔力を付与した短剣で1体のスケルトンの頭蓋骨を砕く。
負担の減ったエイミーが剣を舞うように振るい、2体のスケルトンの頭蓋骨を次々と砕いた。
4体のスケルトンを戦闘不能にしたところで、エイミーの援護はこれ以上必要ないと判断したアマン。
急いで魔人兵へと向き直ると、仲間の優勢を確認し安堵の息をつく。
背中に重傷を負った魔人兵に容赦なくサロスの剣が舞い、大剣を持つ手を斬り落としていた。
ムラマサも左足に深く切りつける。
左足に重大な怪我を負い、片膝をついてしまった魔人兵。
そこを見逃さずサロスの剣が閃き、魔人兵の首を刎ねた。
それとほぼ同時にエイミーも最後のスケルトンの頭蓋骨を砕いていた。
5人はすぐにフォーメーションを整え、さらに魔物が現れないかアマンが確認する。
アマンから警戒の必要がないとの言葉を聞くと、ようやく皆が一息ついた。
と同時に、初めて戦闘を共にした手応えを互いが確かに感じていた。
「おっさん、隙のない見事な動きだったな」
「何を言う。お主こそ、化け物みたいな強さだの」
前衛2人が言葉を交わしていると、シトリーも言葉をかける。
「なんで第4階層で魔人兵が出てくるわけ!?
でも、そんな状況で慌てもせずに的確な指示を飛ばす子どもって可愛くないわね」
「気を悪くするな、アマン。こやつなりの褒め言葉じゃ」
ムラマサが笑顔でアマンに声をかける。
「お気遣いありがとうございます、ムラマサ。
エイミーも後ろをしっかり守ってくれて、ありがとうございました」
エイミーがアマンの言葉に笑顔でうなづく。
「しかし、確かにこの階層で魔人兵が出たのは驚いたぞ。
それを苦もなく全滅させるお主らにも驚かされたが」
ムラマサの言葉にアマンが応える。
「下層の魔物を上層にわざと転移させている輩がいるのです。
詳しいことは迷宮を出たら、ご説明致します」
「人為的に起こしているっていうの?とんでもないやつね…」
「そうなんだ。そいつらの尻尾は掴みかけているんだが…」
シトリーの言葉にサロスが応えた。
「討伐部位も集まったことですし、一旦冒険者ギルドへ向かいましょう。
この件について、ギルド長も交えてご説明します」
サロスの言葉をアマンが継いだ。
2人の様子にシトリーもムラマサも神妙な顔で頷いた。




