第28話 連携(前編)
アマンたち5人は迷宮の第4階層へと続く階段を降りていた。
「実戦練習を第4階層でいきなりやるとは、たまげた小僧どもだわい」
ムラマサが呆れて、つぶやく。
「しゃくだけど同意見ね。
ここまではエイミーの経験値を上げるために1人で戦うって言うし…
でも、実際問題ないんだからしょうがないわね」
シトリーも呆れ顔で同意する。
第4階層は他の階層よりも瘴気が濃く薄暗いのが特徴である。
ムラマサとシトリーが同じような顔をしていることに2人は気づいていない。
「シトリー、ムラマサ。
ここからはパーティーとして戦いたいと思います。
実戦の中でお互いの戦い方やパーティーのあり方を掴んでいきましょう」
アマンの言葉に、うなづく2人であった。
第4階層に降りても、これまで通り先頭はアマンが索敵しながら進む。
サロスとムラマサが、それに続く。
最後尾はシトリーとエイミーだ。
「ここからエイミーは、後ろからの襲撃に備えてシトリーをガードしてください」
アマンの指示にエイミーが頷く。
こうして第4階層を進んでいくと、アマンが魔物の気配を察知する。
「どうやら、パーティーでの初めての敵が現れたようです。
物音からすると、おそらくスケルトンの集団ですね。8体います」
そう言いながら、サロスとムラマサの後方へ移動するアマン。
第4階層の特徴は、居座っている魔物による影響が大きい。
この階層には主にアンデットを中心とした魔物が多いのだ。
不死の者たちが放つ瘴気が階層ごと薄暗くしているのであった。
「よっしゃ!いっちょやったるか」
サロスに気合が漲る。
ほどなくして、少し離れた暗がりからスケルトンの集団がゆっくりと近づいてきた。
空洞となっている瞳にサロスが敵として映ったのか、スケルトンたちも戦闘態勢を取り始める。
汚い盾を構え、古びた剣を振りかざしたスケルトンたちにサロスとムラマサが突っ込んでいく。
サロスは、スケルトンの攻撃を避けながら頭蓋骨を次々と砕いていく。
頭蓋骨を砕かれたスケルトンは、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちていく。
一方、ムラマサは大きな戦斧を力任せに振るい、盾ごとスケルトンを吹き飛ばしていく。
胴体がバラバラになったところを最後に頭蓋骨を砕いて回る。
2人とも前衛としての感覚が鋭いため、互いの距離感をすぐにつかんだようだ。
互いの動きが邪魔にならないように上手く位置をとっている。
あっという間にスケルトンの集団を片付けた2人に、シトリーが声をかける。
「まだ私の出番が来ないんだけどー。っていうか、あんたたち本当に初対面?」
「ムラマサは居て欲しいところで戦ってくれるから、動きやすかった」
「当たり前だ。戦闘経験の多さをみくびってもらっては困るのお。
しかし、お主はその歳で、まぁ…おそろしいセンスじゃな」
本人たちも手応え十分のようである。
討伐部位を拾いながらアマンが声をかける。
「前衛の2人は問題ないようですね。あとは後衛の我々との連携がうまくとれれば完璧ですね」
「上手いこと皆で戦える相手が出てくるといいな」
アマンの言葉にサロスが応える。
討伐部位を拾い終わったアマンが、再び敵を察知する。
「おしゃべりは一旦おしまいです。また来ました。
今度は何種類か違う魔物が群れをなしているようです。個体数もはっきりしません。
これは気を引き締めてかかりましょう」
薄暗い回廊の先からまず現れたのは、先ほどと同じく5体のスケルトン。
そのゆっくりした歩みの後ろから死霊が3体揺らめきながら現れた。
そして、最後尾から現れたモノを見た5人に緊張が走る。
「魔人兵!」
シトリーが叫ぶ。
「あいつが他の魔物を指揮しているようだな」
サロスが獰猛な笑みを浮かべる。
そのまま魔人兵に突っ込んでいきそうなサロスを制するアマン。
「サロス!あなたは、まず死霊の相手をしてください。
ムラマサは、スケルトンをお願いします。
シトリーは、私と一緒に魔人兵の足止めをお願いします。
エイミーは、後方への警戒を引き続き頼みます」
アマンの言葉にサロスが頷き、自分の剣に回復魔法を纏わせる。
物理攻撃が効かない死霊だが、回復魔法には滅法弱いからだ。
サロスの付与魔法に少し驚いた顔をしたムラマサだが、すぐにスケルトンに向かう。
ムラマサの戦斧が前衛のスケルトンたちを粉々に蹴散らしている間に、サロスが死霊に向かう。
サロスが孤立しないように、アマンが魔人兵に火球を放ち牽制する。
その隙を逃さずサロスの剣が死霊たちを薙ぎ払い、霧散させていく。
魔人兵も火球の魔法でアマンの攻撃を迎撃しようとするが、慌てた様子を見せる。
シトリーが風精霊を召喚して空気の振動を封じ、魔法の詠唱を阻んだのだ。
そんな魔人兵に火球が直撃し、上半身が燃え上がる。
地面を転がり炎をかき消した魔人兵が怒りの咆哮を上げた。




