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第26話 贖罪

イボスの町にある宿屋『夕暮れの子山羊亭』。


その食堂でアマンたち4人は、パーティー結成の祝いをしていた。



「シトリーは、なぜ炎の精霊を使役しようとしていたんですか?


ご自分で言ったいたように、種族的に火を好むとは思えないのですが?」



エール酒に少し酔ったのか、シトリーがアマンの問いに素直に答える。


「…贖罪かな。炎の力が欲しいわけじゃないの。


私が手に入れたかったのは精霊王フェニックスの持つ『蘇生の炎』よ。


まあ…手に入れたところで、あの人はもう帰ってこないのだけど…」



「そうか…その人は、よっぽど大事な人だったんだな」


サロスが真面目な顔で、つぶやく。


「あなたたちは、まだ産まれてない頃の話よ。


帝国との戦でね、私は自分の力に溺れて前線に出すぎてしまったの。


そんな馬鹿な私を庇って死んだ仲間がいたのよ…


あの人の最後の顔が、まだ目に焼きついて離れない…


長命種族の宿命なのか…あれからいくら経っても全然記憶が薄れていかないのよね」


アマンもサロスも、シトリーの言葉を黙ってじっと聞き入る。


「他に償う方法も見つからないから、『蘇生の炎』を手に入れようと…


もう2度と目の前で大事な人が死なないように…」



しばしの沈黙の後、アマンが意を決したように語る。


「シトリー。あなたが満足する償いの方法を一緒に探しましょう。


もう私たちはパーティーです。あなたの探すものは一緒に探します。


まずは…確かに他に当てもありませんし…


無駄かもしれませんが、第5階層の魔石を見に行ってみましょう」


精悍な笑顔でサロスも頷く。


エイミーも柔らかな笑顔で頷く。



「こんな子どもたちに励まされるとはね…」


苦笑しながら、憎まれ口を叩くシトリー。


でも、嬉しそうに微笑む。


「ありがとう。これからよろしくね」



再び乾杯する4人。


「そういえば、あなたたちってずっと3人でパーティーを組んでたの?」


「いや、最初は俺とアマンの2人だ。エイミーも最近仲間になったばかりだ」


「そう…。『精霊使い』の私にとって、精霊の加護が少ない迷宮は相性が悪いのは身をもって知ったわ。


でも、それを差し引いても第5階層の最深部に無事辿り着くのは、やっぱり難しいと思う。


本気で第5階層の魔石に辿り着こうと思うなら、もう1人メンバーを増やしてみない?」



「そうか?このメンバーでも十分な気がするけどな?」


サロスの言葉に、シトリーが笑顔で返す。


「確かに、最深部まで行くのはできそうね。


でも、魔石のある部屋には迷宮で一番濃い魔力が流れている。


魔物にとって居心地のいい場所なのに、そこからなんで出てきてしまうかわかる?」



「強力な魔物が住処にしているからでしょうか?


魔力の濃いところから薄いところへ弱い魔物は追い出されてしまう…」


アマンのつぶやきを聞き、シトリーはアマンを指差す。


「その通り。だから階層が浅いところほど弱い魔物が住んでいるわけ。


で、問題の最深部にある魔石の部屋なんだけど、そこには凶悪な魔物がいるらしいわ。


なんでも、大陸で最強と謳われる英雄王と大陸の賢者の2人が、かつてその部屋を見てきたそうよ。


特に討伐の必要もないから、そのまま帰ってきたらしいけど」



シトリーの言葉に、アマンとサロスが少し挙動不審になる。


そんな2人に構わず、シトリーは言葉を続ける。


「イボスの迷宮の最深部にある魔石の部屋は3つ。


英雄2人が確認した情報が、冒険者の間で2部屋分だけは漏れ伝わっているわ。


1つの部屋には、コウモリの翼とサソリの尾を持った人面のライオン…マンティコア。


もう1つの部屋には、魔人王デーモンロードがいたそうよ」



アマンとサロスが息を呑む。


「マンティコア…そんな伝説級の怪物がいたんですか…」


魔人王デーモンロードって、最上級魔族じゃねぇか…


なんで、討伐してこなかったんだ…親父…」


「親父?」


「いや、なんでもない!」


「だから冒険者ランクAのパーティーでも、第5階層の探索はしても魔石の部屋にだけは入らないのよ」


「そりゃ、そうなるな…」


「でもね…」


シトリーが少し悩むそぶりを見せる。



「でも、なんですか?」


「うん…でも、その魔石の部屋を本気で目指してる奴が、私の他にもう1人いるのよ」


「奇特な奴だな」


「ええ、それは間違いないわね」


自分も含められていることに気づき、苦笑いするシトリー。




「その方をメンバーに入れようと?」


「戦力だけを考えればそうね。冒険者レベル48の重戦士よ」


「確かに俺たちの今のパーティーバランスには、ちょうどいいな」


「でも、何か他にもありそうな口ぶりですね?」



少し苦笑いしながら、シトリーがアマンの問いに答える。


「端的にいうと、私がそいつを嫌いなの。もちろん向こうもね」


「なんだ、そりゃ?」



サロスの呆れ顔に、シトリーは拗ねたような表情で答える。


「ドワーフは、神話の時代から相容れない種族なのよ!」


「なるほど。ドワーフの重戦士ですか」


「なら早速、明日にでも会いに行こうぜ」


「そうですね。あちらの意向や動機も聞いてみたいですし。


どこにいらっしゃるか、ご存知ですか?」


アマンがシトリーを見つめる。


「パーティーが見つからずに、鍛冶屋でバイトしているみたいよ」



翌日、4人はさっそくそのドワーフが働いている鍛冶屋に向かうのであった。

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