第25話 ソロ冒険者
冒険者ギルドの1室で目を覚ましたエルフの女性。
付き添っていたギルド職員がアーリンを呼びに行く。
「討伐の確認をお願いします」
「相変わらずあっさりと課題をクリアしますね…」
アーリンが苦笑いしながら、確認作業を行う。
「でも、今回はエイミーだけで討伐したんだぞ?」
サロスの言葉に余計苦い表情となるアーリン。
「確かに確認致しました。
それと盗賊ギルドより依頼の事後報告を受けています。
緊急クエストの場合、依頼者から事後報告があれば正式な依頼として認定されます。
今回は、大規模な山賊の討伐ということで、報酬とは別にCランクの課題もクリアとなります」
「本当か?それは助かるな」
「ええ。従いまして、3人とも冒険者ランクCに昇格です。
更新いたしますので、ギルドカードをお預かりします」
「これで一気に第4階層まで探索できるようになりましたね」
「エイミーのレベル上げも楽にできそうだな」
盛り上がる3人の横で作業していたアーリンの下へギルド職員が寄ってくる。
「アマン様。皆さんが救助された冒険者の方が目を覚ましたそうです。
報償の件などもありますので私も立ち会います。先にこちらへお越しください」
救助した際のルールなど知らなかったが、アーリンの言葉に素直に従う3人。
冒険者ギルド内の1室に通されると、そこにはベッドに腰掛けているエルフの女性がいた。
「あなたたちが私を運んでくれた冒険者?
こんな若い子たちに助けられるなんて、随分ついていたのね」
「シトリー様。救助してくれた方に、その言い方は不適切です」
アーリンの抗議に手のひらをヒラヒラさせて応えるシトリー。
「悪かったわよ。助かったわ、ありがとう」
「回復魔法までかけてもらって、その態度はなんですか!」
「まあまあ、アーリンさん。私たちは特になんとも思っていませんから。
実際、見た目はこんなですし」
事情を知らない者が3人を見れば、確かに駆け出しの冒険者にしか見えない。
アマンたちはそれを自覚しているので、シトリーの反応にも特に嫌悪感はない。
しかし、アーリンの怒りは収まらない。
「いいですか?迷宮内で死に掛けているところを助けてもらったんですよ?
足でまといにしかならないあなたを命をかけて救う義務は、彼らにはないんです。
それをあなたはわかっているんですか?!」
アーリンの言葉は正論である。
しかも駆け出しの冒険者であれば、気を失った者を連れて脱出するのは困難である。
さすがにそこに気がつき、少し気まずそうにするシトリー。
「助けてもらって、ありがとう…」
「いえ、特に何の負担にもなりませんでしたし、お気になさらないでください」
「受付の子の言うとおりよ。私が気絶したのは確か第三階層の最深部でしょ。
そんなところから連れてきてもらったんだから、それなりの礼をするわ」
エルフは気位が高いことで有名な種族である。
そのため最初は、つい強気に出てしまったシトリーであった。
しかし、冒険者稼業を続けてきた彼女は、現在の状況を正確に把握した。
まだ強気な口調は抜け切れていないが、明らかに最初とは態度が変わっていた。
「別に報酬が欲しくていたわけではないので、本当にお気になさらず…」
「借りを作ったまま、逃げる気?」
感謝の念を表したいのだが、どうしても方向がずれるシトリー。
「そんなことより、他のパーティーメンバーはどうしたんだ?」
サロスが気になっていたことを尋ねる。
「私は、ソロで潜っていたの。ただ、迷宮をまだ甘く見ていたわ。
第4階層で運悪く2グループの魔物に囲まれて、ボロボロになったわけ」
「良くそれで生き残れましたね」
アマンの言葉に、素直に返すシトリー。
「これでも冒険者ランクBだからね。レベルも50よ」
「確かに上級冒険者のようですが、なぜソロで第4階層まで行かれたんですか?」
「本当は第5階層まで行くつもりだったのよ」
シトリーの言葉に驚く一同。
そんな中、アーリンが声を上げる。
「なんで、そんな無謀な真似を!」
「最初はパーティーを組んで迷宮攻略してたのよ?
でも、ついこの前、人間関係が悪化して私だけパーティーから抜けたの」
「第5階層にこだわる理由があるんですか?」
静かにアマンが問いかける。
「あまり言いたくはないんだけど、助けてもらったんだし仕方ないわね。
第5階層には元々炎の精霊王を封じていた魔石があるんでしょ?
エルフは火を好まない種族だけに、火と炎の精霊と親和性がないのよ。
でも、魔石の力を借りれば炎の精霊を使役できるかもって思ってね」
「魔石は精霊を封じていただけですからね。使役に役立つ力があるとは思えませんが」
アマンの指摘にシトリーはうなづく。
「ダメでもともとだとは考えていたんだけど、途中で諦めるのも癪で」
「これに懲りて、ソロで第5階層を目指そうなんて辞めてくださいね!」
アーリンがとどめの言葉を投げかけた。
「わかったわ。今度は、きちんとパーティーを組んでからにするわ」
「だったら、俺たちと第5階層を目指してみるか?」
シトリーの言葉にサロスが反応する。
「あなたたちが第5階層?助けてもらっておいてなんだけど、それっていつになるのよ?」
シトリーは、馬鹿にして言っているのではない。
アマンたちをまだ駆け出しの冒険者だと思っているのだ。
「確かに見た目どおり俺たちは駆け出しの冒険者だ。
でも、第5階層に行くだけなら、そんなに時間はかからないと思うぞ」
サロスがニヤリと笑う。
困ったシトリーがアーリンに目線を送る。
視線を受けたアーリンが応える。
「確かに、この方たちは冒険者登録をしたばかりです。
冒険者ランクも本日Cランクになったばかりです」
「え?あなたたちCランクなの?!」
驚くシトリーにアーリンが言葉を続ける。
「男性2人が冒険者登録されてから1ヶ月ほどしか経っておりません。
我が冒険者ギルドの最速記録でランクアップされていっております。
ちなみに、登録された時点で2人とも冒険者レベルは55以上でした。
自分で説明していて馬鹿馬鹿しい位、規格外な方たちです」
「どうだ?悪い話じゃないだろ?」
そう言って、サロスが再びニヤリと笑った。




