第23話 誇り
ジェイドの部屋に通されたアマン、サロス、エイミー。
涼しげな眼差しを3人に向けたジェイドは礼を述べる。
「厳しい戦いになったようだが、よくやってくれた。感謝する。
君たちがいなかったら、山賊の討伐はできなかっただろう」
優しげな微笑を浮かべたジェイドだったが、浮かない顔をしたアマンとサロスに気づく。
「どうした?随分と浮かない顔をしているな」
「私たちの力不足で、ギルドメンバーの方を多く失ってしまいました…
本当に申し訳ありません」
アマンの言葉を聞き、ジェイドの眼差しが鋭さを帯びる。
「アマンくんは、今回逝った者たちに対して責任を感じているということかい?
しかし、それは傲慢というものだ。彼らは死力を尽くして目的を成し遂げた。
君たちは貢献こそすれ、彼らに仇なしたわけではあるまい。
実力があるとはいっても万能ではない。それは皆が分かっている。
責任を感じるということは、彼らは君たちに守ってもらわないといけない存在だったのか?
君たちが責任を感じるということは、そんな風に彼らを下に見ていることになるんだよ?」
「いえ、決してそんな風には思ってはいません…」
「しかし、彼らからすれば誇りある戦死を汚されることになるんだ。
勇敢な戦士ではなく守られるべきだった存在として」
ジェイドの言葉に、アマンもサロスも反論できない。
再び笑みをたたえたジェイドが言葉を続ける。
「今回、残念ながら逝ってしまった者たちも、君たちと戦えて誇りに思っていることだろう。
生き残った者たちも、君らの力と勇気を賞賛しているぞ。
特にアマンくん。君はすでに忍者なんじゃないかとね。それに加えて魔道師並の魔法も使う。
皆、君に将来の盗賊ギルドを担ってもらえないかと話していたよ」
ジェイドの言葉に驚いた顔をするしかないアマン。
そんなアマンにジェイドが語りかける。
「君らのことを誇りに思い感謝する者はいても、恨んでいる者などいないんだよ。
それは死んでしまった仲間たちも同じだ」
ジェイドの言葉に、アマンとサロスから沈んだ表情が消えていった。
「ありがとう、ジェイドさん。今回、俺たちは凄く大切なことを教わったと思う」
「私からもお礼を言います。サロスの言うとおり、今回学んだことを決して忘れません」
「そうしてくれるか。君たちがそう思ってくれるだけで、彼らも誇り高く逝けるだろう。
今夜は祝勝と弔いの宴を行うつもりだ。是非、君たちにも参加してほしい」
「はい、是非参加させていただきます」
その夜、行われたのは宴というには小さなものであった。
しかし、皆が思い思いに今回の戦闘と仲間の思い出を語る温かい催しとなった。
アマンは、その話を聞いているうちに1つの疑問が頭に浮かんだ。
「なぜ、こんな強力な戦力が山賊などしていたのだろうか?」
浮かび上がった疑問は、アマンの頭の中でどんどん大きくなっていく。
「ジェイドさん。あの山賊たちは、まだそんなに活動をしていなかったのですか?」
「いや、かなり前から街道回りで被害は出ていたね」
「その割には、砦には財物が置いてありませんでしたね」
「確かにそうだな。食料は随分貯えていたようだが、奪ったものはどこに行ったんだろうか?」
アマンの中では、ある仮説が作り上げられていた。
「サリードという人物の組織は、大陸各地に拠点を持っているようです。
あの山賊砦も拠点の1つだったとしたら、どうでしょうか?」
「組織の資金を得るためと考えれば…
軍隊並みの戦力が山賊をやっていたことと折角奪った財物が手元にないのも納得できるね」
ジェイドの回答を得て、ほぼ確信に近いものを感じたアマンだった。
2人の会話を聞いていたサロスが話しに入ってくる。
「ということは、やつらの各地にある拠点は軍隊並みの戦力を備えているってことか?」
「そう考えた方が良さそうですね。ジェイドさん。
相手は思っていたよりも大きな組織かもしれません。
プロにこんなことを言うのもなんですが、気をつけて探ってください」
「そうだね。思ったよりも厄介な存在かもしれないね。
だとしたら、余計早く組織の全容を掴んでおきたいな。できれば目的なんかも」
ジェイドが美しい眉根を寄せて、そう言う。
「かなりの戦力を保持した組織が、魔物を使った混乱に乗じて何をしようとしているんだろうか…」
アマンのつぶやきに答えられる者は、いなかった。




