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第22話 山賊討伐

別室に入ると、すでに机には4人分の紅茶が用意されていた。


紅茶の置かれた席に、各々座るとヨハンが口を開いた。




「まずは、敵の様子からご説明しましょう。


山賊たちは、森の中に砦を築いております。


戦士らしき者たちが25人、これが主戦力のようです。


それに加えて魔法使いらしき者たちが3人、僧侶とおぼしき者が2人。


戦士たちは、少なくとも属性持ちであると考えております」


「魔法使いや僧侶までいるのか。山賊というより軍隊だな」



サロスの言葉にヨハンが頷く。


「砦の警備も厳重で、戦力を探るのにも苦労しました。


サロス様のおっしゃる通り、さながら軍隊のような集団です。


そのため、迂闊に手を出せずにおりました」



「それでこちら側の戦力は、どの程度なのでしょうか?」


アマンの問いにヨハンが答える。


「忍者が2人と暗殺者が10人です。


相手が予想以上の戦力だったので、近隣から腕の立つものを集めたのですが…


現時点では、これが限界かと」


「俺たちを入れても、倍の敵と戦うことになるのか」


サロスは困った顔をして腕を組んだ。



「人数を増やすことはできます。


しかし、諜報士レベルの者を連れて行くのは足手まといにしかならないかと」


「そうですね。ヨハンさんの判断は正しいと思います」


アマンの言葉にヨハンが頭を垂れる。



「この戦力で戦いに望むのは無謀だと、長も仰っていました。


しかし、その長が討伐を依頼された。


ということは皆さんのお力を借りれば勝機があるとお考えなのでしょう」


「勝機は十分あると思います。しかし、こちら側にも犠牲は出るでしょうね」


アマンが渋い顔をする。



「そこは気にしないでいただきたい。


これは我々の縄張り争いのようなものです。


これ以上、相手が戦力を増すようであれば、それこそ我々の居場所はない」


ヨハンの覚悟を決めた視線にサロスが頷く。



「わかった。だが、なるべく犠牲を出さずに勝てるよう尽力しよう」


サロスの言葉にアマンも頷く。



「それで、討伐にはいつ向かえますか?」


「すでに準備は整っております。我々の特性を活かすため、夜襲を考えております。


今夜など、いかがでしょうか?」


「よし、それでいこう」


サロスの言葉に、一同が頷いた。



夜も更けたところで、盗賊ギルドを出発したアマンたち。


盗賊ギルドのメンバーとは、トリスタンの町から少し離れた街道で合流した。



「こいつは、すごいな」


サロスは、音もなく進む一行に感嘆の声を上げる。



街道からはずれ、しばらく森の中を進んでいくとギルドメンバーたちが立ち止まる。


アマンたちも、音をたてないよう気をつけながら立ち止まった。



ヨハンの身振りに従い、木々に隠れながら指し示された方向を確認する。


すると、少し離れた場所にかがり火を焚いた砦が見えた。


よく見ると、砦の入り口とその奥に物見櫓が見える。



あらかじめ打ち合わせていた通り、ヨハンが率いる5人が裏手へ回る。


裏手へ回ったのは、忍者2人と暗殺者の中でも手練の3人である。


ちなみにヨハン自身が忍者である。



ヨハン達の別働隊が裏手に回った頃合を見計らい、アマンが火球ファイアーボールを放つ。


巨大な火の球が砦の出入り口を直撃する。


轟音と共に木っ端微塵となった入り口だが、それに気づいた見張りが警戒の笛を吹いた。



すぐさま入り口周りを山賊たちが固める。


再びアマンが火球ファイアーボールを放ち、山賊たちを散開させる。


その隙に、サロスたちが突撃を開始する。



砦の入り口付近は、混戦となった。


サロスたちの突撃と同時にアマンは氷の槍を放ち、物見櫓にいた見張りの腹に大きな風穴を開ける。


当初は混戦だったものの、徐々に盗賊ギルドのメンバーたちの劣勢に変わっていった。


その中であっても、サロスは周りの敵を薙ぎ払いながら戦線を維持していた。


山賊の戦士を5人倒したところで、すでにギルドメンバーは4人倒されていた。



ギルド側の味方が減ったところで、アマンが再び氷の槍を何本も放つ。


5人の戦士を氷の槍が葬ったのを見て、サロスが裂帛の気合を上げる。


咆哮とともに振られる剣に、山賊が2人、3人と胴を斬り離される。



それでも山賊の優位には変わらないように見えた。


しかしこの頃、山賊たちも異変に気づき始めていた。


後衛の魔術師や僧侶からの援護が全くないことに。



そのうち、後衛どころか後方にいた戦士たちもいつの間にか首を掻き斬られて死んでいる。


気づけば山賊は戦士7人のみとなっており、盗賊ギルド側の9人に前後からはさまれていた。


山賊が浮き足立ったところを威力を抑えたアマンの火球ファイアーボールが次々と襲う。


これにより戦意を失った山賊であったが、包囲から逃れる術はなくサロスの剣により切り伏せられていく。


最後まで残った3人の山賊は剣を捨てて投降した。



盗賊ギルドのメンバーが投降した山賊を拘束すると、アマンたちの下へヨハンがやってきた。


「ありがとうございました」


ヨハンの礼に、アマンもサロスも苦渋の表情で何も言い返せない。



「すまない…こんなに犠牲を出してしまった」


なんとかサロスが、搾り出すようにそれだけ告げる。


「何をおっしゃいますか。我々も覚悟の上で戦いに望んでいるんです。


あなたたちが責任を感じることはない」



後方からの奇襲部隊5人は全て生き残った。


しかし、アマンたちと共に正面から向かったものは1人しか生き残れなかった。


自分たちの力不足を痛感するアマンとサロスであった。



一行がトリスタンの町に着く頃には、朝日が昇っていた。


沈痛な面持ちで、それを眺めながら町へ戻るアマンとサロス。


盗賊ギルドについても、2人の顔は浮かないままであった。

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