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第18話 後継者

「いろいろ話づらいこともあるかもしれんが、質問させてくれ」


食堂でのお祝いを終えた3人は、エイミーの部屋で向かい合っていた。


エールは最初の乾杯だけで、誰も酔ってはいない。


サロスが真面目な顔をして発した言葉に頷くエイミー。



「まずは、サラマンダーと一緒に現れた女のことだ。


あれがアマンの前の契約者か?」


「はい、そうです」


「アマンは転移魔法だと言っていたが、あの現れ方はそうなのか?」


「はい。第3階層の魔物を巻き込んで、転移魔法によって現れたと思います」


「お前と会ったときのコカトリスもそうか?」


「はい、その通りです」


「冒険者ギルドで事情を知らないという態度だったが、あれは制約か?」


「半分は、そうです。


ただ、あの時首を横に振ったのは『知らない』という意味ではありません。


制約があるので『答えられない』という意味でした」


「なるほどな。確かに、そうともとれるな」


その時の様子を思い出しながら、サロスは納得する。



「では、私からもお聞きします。魔物と一緒に現れた女性は何者ですか?」


「あの方は、魔道師ディアナ様です」


「転移魔法を扱える方は、もういないと思っていました。


なぜ、ディアナさんが転移魔法を扱えるのかわかりますか?」


「はい。ディアナ様は、流浪の賢者アルケニー様の孫弟子です。


アルケニー様から教えを受けた唯一の弟子であるサリード様から伝授されたそうです」



魔道師の系譜が分かり、納得するアマン。


「やはりアルケニー様がからんでいましたか…


その唯一の弟子というサリードさんとは何者ですか?」


「申し訳ありません。私も詳しくはわかりません。


迷宮都市サイラスでアルケニー様と出会われたということくらいしか…


私自身は直接お話させていただいたこともありません」



サリードという人物に不穏なものを感じるアマン。


エイミーに質問を続ける。


「サリードさんには、どのくらいの仲間がいるのでしょうか?」


「詳しくは分かりません。けれども、大陸各地に拠点があるようです」


「エイミーはディアナさんとどこかの拠点にいたのですか?」


「はい。シルフ領とアイロニア領の狭間におりました」



サロスも質問を投げかける。


「その拠点には、どの程度の仲間がいたんだ?」


「すべて人間で、30名ほど。小さい部類の拠点のようでした」



再び、アマンが問いかける。


「エイミー。ディアナさんは、なぜ迷宮で魔物を転移させたりするのでしょうか?」


「ディアナ様は、サリード様の命により実験を行っているとおっしゃっていました」


「実験ですか?」


「ええ。最終的には深い階層の魔物を迷宮外へ転移できるようにする実験だと」



「なんだって!?」


サロスが驚きの声を上げる。


一方、その答えを予期していたアマンは眉間に皺を寄せていた。



「やはりそうでしたか…


どうやらこれは冒険者ギルドだけで対応できるような案件ではないようです」


「どういうことだ、アマン?」


「迷宮都市や冒険者を害する意図だけなら、冒険者ギルドだけでも対応できるかと思います。


しかし、おそらくその実験の先には、大陸中に魔物を転移できるようにする意図があるのかと。


そうなるとこれは国を相手にした謀略です。国が動かなければならない案件でしょう」


アマンの言葉に、サロスも眉間に皺が寄る。



「先日、助けを求めたばかりで些か気まずいところはありますが…


我らの出自からいえば、父上たちに知らせぬわけにはいかないでしょう」


「そうだな…仕方あるまい」


「エイミー。色々と聞いて申し訳ありませんでした」


「いいえ。アマン様のお役に立つならいくらでも」


「ありがとうございます。私はこれから自分の部屋で少々手紙を書いてきます。


エイミーは、部屋でゆっくりしていてください」



そう言って、サロスを連れ部屋を出て行くアマン。


2人とも、急いでそれぞれの父親に手紙を書きしたため始めた。



と、その時。


アマンたちの部屋にノックの音が響く。


「誰でしょう?」


警戒しながらも、扉に近づくアマン。


「どなたですか?」


扉に向かって声をかけると意外な声が返ってきた。


「私でございます。坊ちゃま」


「ルクバート!?」


慌てて扉を開けると、そこには身なりの良い格好をした、いかにも執事という細身の中年男性が立っていた。



「失礼致します」


ルクバートは、そう言って2人の部屋へと入ってくる。


「どうしたのです、ルクバート?」


「もちろん、ご主人様の命でございます」


「父上の?」


「はい。最近、イボスの迷宮に不思議な事象が起きているとか。


階層を越えた魔物の出現。おそろしいことです。


現場に居合わせた若い冒険者が、転移魔法の可能性を指摘したと聞き及んでおります。


そして、実際にそれらしい痕跡があったと」



「王都へも連絡が入っているのだな」


サロスがつぶやく。


「我が国の諜報部は優秀ですから」


笑いながら、ルクバートは応える。



「その件でルクバートは視察に来たんですか?」


「いえ、違います。


不思議な現象を起こしている犯人は、転移魔法という変わった手札を持った者である。


一方で、転移魔法の可能性を指摘できる冒険者など、あまり居るはずがない。


そして、坊ちゃまたちが突然、魔力人形マジックドールという変わったものと深いかかわりを持った。


これらのことだけですが、ご主人様は結界を無視して魔物を転送できるという危険性を重大視しております。


そして、今回の犯人に今一番近づいているのは坊ちゃまたちだと仰っています」



「さすが、おじさんだな…」


「ええ、父上には勝てません…」


サロスのつぶやきに、アマンはため息と共に同意するのであった。

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