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国王陛下は傷心中  作者: 可嵐
余暇は楽しく過ごしましょう
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 煩い。うるさい。ウルサイッ!!!


 陛下や天使ちゃんの嫌味でもなく、故郷の夏を賑わせる虫の鳴き声でもなく。城を出発してから何度となくそう抗議しているのは自分の心音に対してだった。死にたい病に掛かっていた時も鬱陶しいと思っていたけど、こんなにムカムカしなかった。……まぁ、それはあの時より元気になったって証拠なのかもしれないけど、待ち合わせ前からドキドキドキドキって。こんなんじゃ一日保たないよ?! 男の人とデートするのが初めてって訳でもないし、そんなに初心じゃないでしょうにっ! ふざけんな、わたしっ!

 陛下の態度が軟化して、曲がりなりにも姫様と呼ばれる生活を続けるうちに改善していた口調が心の中だけだけど素に戻っていて泣ける。この動揺っぷりも神官長様には全て筒抜けなんだと思うと余計に。

 あぁ、もう早く! 早く早く! 先生の家に着け!

 そんな切なる願いが天に届いたのか、この車を引いていた馬が足を止める。窓からそっと覗いてみれば、予想通りの豪邸。

 やっぱり、身分が違う……!!!

 理解していた現実を改めて実感させられ、目眩を覚える。許されるなら逃げ出したい。一刻も早く。

 しかしーーーー

「おはようございます」

 おそらく当主様であろう先生自らに迎えられ、初手から逃げを封じられた。

「……おはようございます。えー、本日はお誘いありがとうございます」

「こちらこそ。急なお誘いなのにお受け頂いてありがとうございます。では、どうぞ」

 ナチュラルに手を差し出され、渋々と借りる。本当は先生相手に借りなんてこれ以上一つも作りたくないのだけれど、これもこの世界のマナーらしいから仕方ない。居心地の悪い世界だ。

 わたしよりも体温の低い手にエスコートされ、あの豪邸へと足を踏み入れる。重そうな扉が開いて閉じても、特に使用人さんたちの出迎えもないことに酷く安心した。客間らしき部屋へ通され、先生手ずからお茶を入れていただき一呼吸。お城で出されるより香りも味も癖のない綺麗なグリーンのそのお茶は、故郷で飲んでいたそれを思い出すようで胸の奥がギュッとした。

「これは……?」

「発酵させる前の茶葉らしいです。街のお茶屋さんで偶々見つけて以来、気に入っているんです。お気に召しましたか?」

「はい、とても」

 出されたカップの中身を空にしてしまうことがはしたないことであることは覚えていた。けれど、こちらに来て以来初めての懐かしさと安心感に気付けば、ズズッと音を立ててお茶を飲み干していた。その所作に一瞬眉を顰めた先生。だけど----

「結構なお点前で」

 わたしがそう言って丁寧に頭を下げると不思議な顔をしつつも、「恐縮です」と同じように頭を下げて応じてくれた。

 故郷ではやったこともないやりとり。それが今の場面にきっちりハマっていないことは分かっていたけれど、なんとなく口から出たのは……未練もないはずの故郷にやっぱり少しの思いがあったからなのかな。それとも、久しぶりの味わう緑茶の味が「この世界で生きていける」って思わせてくれたからなのかな。

 それは定かではないけれど、とりあえず勇気を出して城を出発してよかったと心から思えた休日だった。



「生きててよかった」

 おねだりして入れてもらった二杯目のリメン茶(とこの世界では言うらしい)を味わっていると、ポツリと先生が呟いた。まさに心に思い浮かべていた思いを読み取られ、わたしは危うく噎せそうになる。

「大丈夫ですか?」

 カップを置いてわたしの隣に来て、背中を摩ってくれる先生。その手は相変わらずひんやりしていて、ちょっと心地よい……じゃなくてっ!

「大、丈夫っ! ですけどっ……! な、なんで、それっ!」

 懸命に呼吸を整えながら訴えるわたしに、先生は瞳を丸くして「いや、そんな顔してるなと思って」と首を傾げる。その仕草にいつもの裏は感じられない。……ということは。

「先生って、神官長様みたいにわたしの心を読めるわけではないんですよね?」

「そうですね。姉のようには無理ですけど……姫様は顔に出やす方ですからなんとなくなら分かりますよ」

「えっ?」

「元気になられて、本当によかったです」

 ポンポンと頭を撫でてから、「では、そろそろ出掛けましょうか」と立ち上がる先生。衝撃的な告白に頭は全く機能していないはずなのに、再び差し出された掌を素直に受け入れてしまう訓練された自分の反応が悔しい。

「……先生怖い」

「失礼な。いくら自棄になっていたとはいえ、陛下相手に死罪確定な発言を繰り返す姫様を見ている方が余程怖かったですよ。もうあんなことはしないで下さい」

 悔し紛れの一言にもそんな風に返され、本当にぐうの音も出ない。

 はい。と素直に返事をすると、先生は満足そうに微笑んでいた。




お久しぶりです、可嵐です(定型文)

一週間で更新なんて自分を褒めてあげたい気持ちでいっぱいになりましたが、毎日更新とかしていらっしゃる方がいるのにありえないですね。とはいっても、わたしは平日仕事から帰ったら寝る生活をしておりますので大分大分頑張ったと自負しております!←

次も頑張りたいけれど、話を広げなければならなくなるので難しいかもしれません! また頑張ります!


ではでは、読んでいただいてありがとうございました!

また次回!


  可嵐

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