第5話 魔の森
森の中は静かだった。
鳥の声もほとんど聞こえない。
「……怖いな」
葵は周囲を見回しながら歩いていた。
しばらく進んだところで、ふと思い出す。
転移したときに手に入れたスキル。
【暴食】【検索】【保存】【破壊神】
「そういえば、スキルってどうやって使うんだろう?」
試しに【検索】を意識する。
《固有スキル【検索】を起動します》
「……!」
目の前に半透明の文字が浮かんだ。
「本当に使えるんだ……」
何を検索しようか考える。
そして、最初に思いついたのは――。
「食べられるもの」
《周囲の対象を検索します》
すると、近くの草やキノコに表示が現れた。
《食用可能》
「これ、食べられるんだ」
別のキノコを見る。
《食用可能》
「こっちも……」
さらに別のキノコ。
《食用不可》
《毒性:強》
「ひっ……!」
葵は慌てて手を引っ込めた。
「危なかった……」
【検索】がなければ、何が食べられるのかすら分からない。
葵は食べられる草やキノコ、木の実などを少しずつ集めていった。
「これなら、食べ物は何とかなるかな」
次に水を探す。
《周囲の水源を検索します》
近くに小さな水場があることが分かった。
《飲用可能》
「よかった……」
水を飲んで、一息つく。
「次は……寝る場所と火かな」
さらに検索する。
大きな木の根元に小さな空洞が見つかった。
《危険度:低》
「ここなら寝られそう」
続いて、火起こしに使えそうなものを検索する。
《火起こしに適した素材》
乾燥した枝。
樹皮。
火打石。
「これも分かるんだ……」
必要なものを拾い集める。
その途中、地面に落ちていた金属片を見つけた。
「何これ?」
検索する。
《用途:刃物》
「刃物……ナイフみたいに使えるかな」
さらに尖った金属片を発見する。
《用途:矢尻》
「矢尻?」
近くには丈夫そうな枝も落ちている。
「弓でも作れるのかな」
今は作り方が分からない。
それでも、使えそうなものは全部拾っておく。
「……なんとか、生きていけるかも」
集めたものを並べて、葵は少しだけ安心した。
食べ物。
水。
火を起こすための道具。
ナイフ代わりの金属片。
そして矢尻。
まだ何も分からない。
それでも、少しずつ準備はできている。
「よし……」
そのときだった。
――ガサッ。
「……?」
葵が振り返る。
何かがいる。
――ガサッ。
今度は、もっと近い。
「……何?」
葵は拾った金属片を握りしめる。
木々の隙間から、何かがこちらを見ている。
赤い目。
黒い毛。
鋭い牙。
「……狼?」
しかし、その姿は葵の知っている狼とは比べ物にならないほど大きかった。
狼が低く唸る。
「……っ」
葵は息を呑んだ。
そして――。
狼が、ゆっくりとこちらへ歩き出す。




