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第4話 追放

王城を出てから、葵は一台の馬車に乗せられていた。


馬車の前後には、数人の騎士が馬に乗って付き従っている。


規則正しく響く蹄の音。


窓の外を見れば、鎧を身につけた騎士たちが馬を操っている。


「……すごい」


葵は思わず呟いた。


映画やゲームでしか見たことのない光景。


自分が本当に異世界へ来たのだという実感が、少しずつ湧いてくる。


けれど、そんな気持ちも王都を離れるにつれて薄れていった。


石造りの建物が減り、街道の周囲には草原が広がっていく。


さらに進むと、遠くに巨大な森が見えてきた。


「……あれ?」


葵は窓から身を乗り出すようにして森を見る。


木々が異様なほど高く、空を覆い隠すように密集している。


「……大きい森」


すると、隣を走っていた騎士が馬を寄せてきた。


「見えてきたな」


「え?」


「西の森だ」


葵は森を見る。


「西の森……」


「ああ」


騎士は少し間を置いてから続けた。


「我々は、あの森を別の名でも呼んでいる」


「別の名前?」


「ああ」


騎士は森へ視線を向ける。


「魔の森だ」


「……魔の森」


その名前に、葵は思わず聞き返した。


「どうして、そんな名前なんですか?」


「魔物が多いからだ」


騎士は淡々と答える。


「それだけじゃない。あの森には、通常の森では見られないほど強力な魔物が生息している」


「強い……魔物?」


「ああ」


「森の入り口付近なら、比較的弱い魔物もいる。だが、奥へ進めば進むほど魔物は強くなる」


葵は森を見つめる。


「王国の騎士や冒険者でも、あの森の奥へ入る者は少ない」


「そんなに危険なんですか?」


「普通の人間なら、一人で入って生きて帰れる可能性は低い」


「……」


葵の顔が強張る。


「じゃあ……私、どうなるんですか?」


騎士は葵を見る。


「すまない……」


騎士はそれ以上、何も言わなかった。


葵は窓の外を見る。


魔の森が、どんどん近づいている。


「……」


胸が、嫌な音を立て始めた。


⸻


しばらくして、馬車がゆっくりと速度を落とした。


「止まれ!」


先頭を走っていた騎士の声が響く。


馬車が止まる。


周囲を見れば、もうすぐ目の前に魔の森が迫っていた。


葵は馬車から降りる。


「……」


目の前に広がる森。


近くで見ると、さらに巨大だった。


木々が空を覆い、森の中は薄暗い。


「ここから先は、お前一人だ」


騎士が馬上から告げる。


「……え?」


葵は騎士を見上げる。


「私、一人で?」


「ああ」


「でも……」


葵が森を見る。


「魔物がいるんですよね?」


「いる」


「私、戦ったことなんて……」


騎士は何も答えない。


ただ、馬の向きを変える。


「待ってください!」


葵が声を上げる。


「どうやって生きればいいのかも分からないんです!」


騎士たちは振り返らない。


一人、また一人と馬を走らせていく。


蹄の音が遠ざかっていく。


やがて――。


葵は完全に一人になった。


「……行っちゃった」


目の前には魔の森。


背後には、誰もいない。


葵はしばらく立ち尽くしていた。


そして、自分のバッグを抱きしめる。


「……どうしよう」


怖い。


でも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。


「よしっ!!」


葵は大きく息を吐く。


そして、魔の森へ足を踏み入れた。


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