↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/40

第3話 未知のスキル


「これからワシの〖神眼〗によって、皆の能力を確認させてもらう」


そう言ったのは、一人の老人だった。


白髪に長いローブ。


手には古びた杖。


老人の名は、セドリック・アーデル。


王国筆頭宮廷魔術師。


そして-


職業【鑑定士】の中でも最上位のスキル〖神眼〗の持ち主でもある。


最初に呼ばれた生徒が、セドリックの前へ進む。


セドリックが目を向ける。


「固有職【剣豪(ソードマスター)】スキル〖剣術〗〖剣気〗……」


「おお!」


周囲から声が上がる。


二人目。


「固有職【大魔導師(アークメイジ)】スキル……」


三人目。


「【竜騎士(ドラグーン)】」


次々と能力が判明していく。


そして。


「次。天城湊」


湊が前へ出た。


セドリックが彼を見る。


一瞬。


老人の目が見開かれた。


「……これは」


「何か?」


「……【勇者(ブレイブ)】」


広間がどよめいた。


「勇者!?」


「すごい!」


王国側の人間も明らかに喜んでいる。


国王も満足そうに頷く。


「素晴らしい」


湊は戸惑いながらも、


「……ありがとうございます」


と頭を下げた。


続いて。


「星咲優奈」


優奈が前へ出る。


鑑定。


「……【聖女(セイクリッド)】」


再び歓声が上がった。


優奈は困ったように笑う。


「私、本当にそんな……」


その様子を見て、葵は小さく笑った。


「二人ともすごいなぁ」


自分には何があるのだろう。


そんなことを考えていた。


そして。


「次」


名前を呼ばれる。


「一ノ瀬葵」


「……はい」


葵は緊張しながら前へ出た。


セドリックの〖神眼〗が、葵を捉える。


「……」


沈黙。


「……?」


葵が不安そうにセドリックを見る。


老人の眉間に皺が寄る。


「……おかしいのう」


「え?」


「固有職は……」


セドリックがもう一度鑑定する。


「…………」


そして。


老人の顔から血の気が引いた。


「【破壊神(アナイアレーション)】……」


「……え?」


葵には、その言葉の意味が分からない。


しかし――。


周囲の反応は違った。


「破壊……神?」


「なんだ、それ」


「聞いたことないぞ」


セドリックは杖を握り直す。


「……固有職として記録された例が、わしの知る限り存在せぬ」


国王の表情が変わった。


「セドリック。続けろ」


「は、はい……」


セドリックはさらに鑑定を進める。


「スキル……〖暴食〗」


「……」


「〖検索〗」


「……?」


「〖保存〗」


「……」


「〖分割〗」


そして最後。


「〖破壊〗……」


セドリックは言葉を失った。


葵は困惑する。


「……あの、これって悪いものなんですか?」


返事はない。


セドリックは葵を見つめていた。


その目には、先ほどまでの穏やかさが消えていた。


恐怖。


警戒。


そして――困惑。


「……国王陛下」


老人が低い声で告げる。


「この者は……危険すぎますぞ」


葵の胸が締め付けられる。


(……また?)


修学旅行でも。


ここへ来てからも。


自分だけが、どこにも馴染めない。


そして今度は――。


「固有職【破壊神(アナイアレーション)】を持つ者を、この王国に置いておくのは危険じゃ」


国王が静かに葵を見る。


その目に浮かんでいたのは――。


明確な敵意だった。


しばらくの沈黙。


そして。


国王が一際大柄な騎士へ視線を向けた。


「ガルド」


「はっ」


「この少女を西の森へ送れ」


ガルドと呼ばれた男が前へ出る。


王国騎士団総団長、ガルド・ヴァレンシュタイン。


身長は二メートル近くあり、分厚い肩幅と鍛え上げられた身体を、黒い鎧が覆っている。


厳つい顔には表情がほとんどなく、鋭い灰色の瞳だけが、まるで獲物を値踏みするように葵を見つめていた。


「……御意」


ガルドはそれだけ答えた。


葵の心臓が跳ねる。


「えっと……」


何か聞かなければ。


そう思った。


「西の森って……どんなところなんですか?」


ガルドは答えなかった。


代わりに、国王が口を開く。


「お前の能力は危険だ」


「我々には、その力がどのようなものなのか判断できない」


「でも……」


葵は言葉を探した。


「私、まだ何もしてません」


国王は少しも表情を変えなかった。


「だからこそだ」


「……?」


「何も分からぬ者を王都に置いておくわけにはいかん」


葵には、その理屈が理解できなかった。


「じゃあ……私、どうなるんですか?」


「西の森で暮らせ」


あまりにも簡単に言われた。


「森で……?」


「そこで生き、お前の力が危険でないことを証明するのだ」


葵は少し考える。


元の世界、日本の森ですら死と隣り合わせだ。


それが異世界の森ともなれば、どれほど危険が待っているかは計り知れない。


でも、今の葵には選択肢など無い。


「……分かりました」


その返事に、周囲は三者三葉の反応を見せる。


無関心な物。


嘲笑している物。


そんな中─


「待ってください!」


湊が国王の前へ出る。


「彼女を一人で森に送るなんて無茶です!」


ガルドが湊を見る。


「下がれ」


湊の声に力が入る。


「同じ学校の仲間なんです!」


「私も反対です!」


優奈も続いた。


「だって、葵ちゃんは何もしていません!」


優奈は真っ直ぐに国王を見る。


「それなのに、スキルが分からないというだけで追い出すなんて……」


周りに控えていた騎士たちが、二人に敵意の視線を向ける。


国王はため息をついた。


「勇者よ」


「……」


「お前には期待している」


「だったら――」


「だからこそ、余計なことに首を突っ込むな」


湊の表情が険しくなる。


「これは王国の決定だ」


湊は拳を握りしめる。


まだ自分のスキルを使いこなせるわけではない。


この場にいる騎士たちに勝てるとも思えない。


「……っ」


何もできない。


その事実が、湊自身にも分かってしまう。


優奈も同じだった。


固有職やスキル、日本にいた時とは全く違う。


何ができるのかすら分からない。


「………二人ともありがとう!」


葵は笑顔を作った。


本当は、怖い。


だけど。


自分のために声を上げてくれた二人を、これ以上困らせたくなかった。


「私、頑張ってみる」


葵はそう言った。


「森っていっても、もしかしたら普通に暮らせるかもしれないし」


湊は何も言えなかった。


優奈は唇を噛んでいる。


そして。


ガルドが葵の前に立った。


近くで見ると、さらに大きい。


葵は思わず見上げた。


「来い」


「……はい」


葵は小さく頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。