↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
29/40

第28話 甘いスライム

葵は小屋の外で、新しく作った服の袖を眺めていた。


「うん。やっぱり魔獣糸って丈夫」


以前の制服とは比べ物にならない。


自分で作った服を着て森を歩く。


それだけで、少しだけ冒険者になったような気分になる。


「でも……」


葵は小屋を振り返った。


壁は木材を組み合わせただけ。


屋根にはところどころ隙間がある。


棚もまだ簡素なものしかない。


「もうちょっと、家を快適にしたいな」


そして武器にも目を向ける。


「武器も、もう少し丈夫にできたらいいんだけど」


そんなことを考えながら、葵は森へ向かった。


⸻


しばらく歩いていると――。


ぷるん。


「……?」


地面に、半透明の緑色をした何かがいる。


ぷるん。


ぷるん。


「……スライム?」


葵は少し距離を取った。


〖検索〗。


《対象:グリーンスライム》


《危険度:低》


《特徴:柔軟な身体を持つ》


「危険度は低いんだ」


葵はナイフを構える。


スライムが、ぴょんっと跳ねた。


「わっ!」


思ったより速い。


けれど、攻撃の動きは単純だった。


一度避ける。


もう一度避ける。


そして――。


「そこ!」


ナイフを突き込む。


スライムの身体が大きく揺れた。


ぷるぷる……。


そして、動かなくなる。


《討伐を確認》


《経験値を獲得》


「よし」


葵は〖分割〗を使った。


すると、スライムの身体がいくつかの素材へと分かれる。


「……これが肉なのかな?」


不思議な半透明の塊を手に取る。


〖検索〗。


《グリーンスライムの核》


《食用:不可》


《魔力を蓄積する性質を持つ》


「核は食べられないんだ」


そして、その隣に残ったぷるぷるした部分。


《グリーンスライムゼリー》


《食用:可能》


《味:甘味》


《食感:弾力性・柔軟性》


《推奨:生食》


「……え?」


葵は目を丸くした。


「甘いの?」


もう一度確認する。


《味:甘味》


「……」


葵はゼリーを見つめる。


魔物。


スライム。


でも――。


甘い。


「……食べてみよう」


恐る恐る一口。


ぷるん。


「……!」


もちっ。


「……!」


葵の目が輝いた。


「何これ!」


ぷるぷるした食感。


噛むと少し弾力があって、ほんのり甘い。


「グミみたい!」


もう一口。


「……美味しい!」


今まで食べてきた魔物肉とは、まったく違う。


デザートみたいだ。


「スライムって甘いんだ……」


葵は夢中になって食べる。


そして――。


《〖暴食〗が発動しました》


《対象からスキルを獲得しました》


《〖粘着〗》


「……粘着?」


葵は表示を見つめる。


〖検索〗。


《〖粘着〗》


《任意の対象に粘着性を付与する》


《付着力・持続時間は使用者の魔力に比例》


「くっつけるスキル?」


葵は近くに落ちていた小枝を二本拾った。


片方に触れる。


「〖粘着〗」


ペタッ。


二本の枝がくっついた。


「……!」


軽く引っ張る。


取れない。


「すごい……!」


さらに力を入れる。


ミシッ。


枝そのものが折れそうになる。


「これ、接着剤みたいに使えるじゃん!」


⸻


小屋に戻った葵は、早速〖粘着〗を試してみることにした。


まずは棚。


今まで紐で固定していた部分を、木材同士で組み合わせる。


「ここを……」


〖粘着〗。


ギュッ。


「おお……!」


しっかり固定される。


次に、壁。


隙間に木材を当てる。


〖粘着〗。


「これなら風が入りにくくなる!」


屋根も補強する。


床も、ぐらついていた場所を固定する。


「……すごい」


今までよりずっと丈夫になった。


「〖粘着〗、めちゃくちゃ便利!」


そして最後に、武器を見る。


木材と魔物素材を組み合わせる。


〖粘着〗。


ギュッ。


「これなら、前より丈夫そう」


もちろん、何でも永久にくっつくわけではない。


強い衝撃を受ければ剥がれる可能性もある。


「でも、これなら色々作れそう」


葵は新しいスキルを手のひらに感じながら、嬉しそうに笑った。


そして――。


「それに……」


〖保存〗の中に入れたスライムゼリーを思い出す。


「甘いもの、また食べたいな」


肉料理だけだった食生活に、思いがけずデザートが加わった。


「スライムにも色んな種類がいるのかな……」


もし種類によって味が違うのなら。


「……探してみたい」


葵の頭の中に、新たな探索理由が生まれた。


強くなるため。


素材を集めるため。


そして――。


美味しいものを食べるため。


「明日も探索しようっと」


葵は満足そうに笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。