第25話 森の恵み
葵は小屋の中を見回していた。
作った籠には薬草。
壁際には乾燥させた食材。
〖保存〗の中には、これまで集めてきた大量の素材。
「……結構、色々揃ってきたなぁ」
魔の森に置き去りにされた頃とは大違いだ。
「これなら、しばらくは困らなそう」
そう思ったところで、葵はふと思い出した。
森の奥に残されていた、大きな足跡。
〖検索〗でも正体が分からなかった魔物。
「……やっぱり気になる」
けれど、まだ戦うつもりはない。
「今日は、その手前まで」
そう決めて、葵は森へ向かった。
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いつもの探索場所を抜ける。
さらに進む。
木々の間隔が狭くなり、地面にも大きな根が増えてきた。
「この辺りから、見たことない植物が増えてきたな」
〖検索〗。
《素材:ミストリーフ》
《特徴:乾燥させることで香りが強くなる》
《用途:香料・料理》
「料理に使える!」
葵はすぐに採取する。
さらにその近くには、小さな黄色い花。
《素材:ヒールフラワー》
《特徴:微弱な治癒効果》
《用途:薬剤・ポーション》
「これも薬草なんだ」
今まで集めてきた薬草とは違う種類だ。
「持って帰ろう」
必要な分だけ採取する。
⸻
そのとき。
「……ん?」
木の上から、何かが落ちてきた。
ドサッ。
葵が身構える。
〖検索〗。
《対象:フォレストモンキー》
《危険度:低》
「猿……?」
森の木々を飛び回る、小型の魔物。
葵を見ると、威嚇するように牙を見せた。
「襲ってくるなら……」
葵はナイフを構える。
フォレストモンキーが飛びかかってくる。
避ける。
反撃。
一撃では倒れない。
「結構素早い!」
二度、三度と攻撃をかわしながら、ようやく隙を見つける。
「そこ!」
ナイフが命中する。
《討伐を確認》
《経験値を獲得》
「ふぅ……」
以前よりは楽になったとはいえ、素早い相手はやはり厄介だ。
「〖自己再生Ⅱ〗があるからって、油断しちゃダメだね」
葵は倒した魔物を〖分割〗する。
「……ん?」
《素材:フォレストモンキーの毛》
「毛?」
手に取ってみる。
黒褐色の毛は、意外にも柔らかい。
〖検索〗。
《フォレストモンキーの毛》
《繊維化:可能》
《特徴:柔軟性が高い》
「また服に使える!」
葵は嬉しそうに毛を集めた。
「これで違う種類の布が作れそう」
素材が増えるたびに、作れるものも増えていく。
それが楽しくて仕方ない。
⸻
その後も探索を続けた。
小型の魔物を何体か倒し、素材を集める。
そして――。
《レベルが上昇しました》
《Lv.13 → Lv.14》
「やった!」
葵は拳を握る。
「少しずつだけど、ちゃんと強くなってる」
レベルアップを確認したあと、自分の身体を動かしてみる。
「……前より軽い」
走る。
跳ぶ。
身体能力が確実に上がっている。
「これなら、もう少し奥まで行けるかも」
そう思った瞬間だった。
――ドン。
遠くから、地面を揺らすような音が響いた。
「……!」
葵は動きを止める。
〖検索〗。
《周辺に大型魔物を確認》
《詳細情報:取得不能》
「…………」
昨日の足跡と同じ。
検索できない。
「……帰ろう」
今回は迷わなかった。
「まだ、私には早い」
葵はすぐに来た道を戻る。
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小屋へ戻ると、今日の素材を整理する。
「ミストリーフ」
「ヒールフラワー」
「フォレストモンキーの毛」
「魔石……」
どれも新しい素材だ。
葵は一つ一つを丁寧に〖保存〗する。
そして最後に、フォレストモンキーの毛を手に取った。
「これで、また新しい布が作れる」
次に作る服。
防具。
もしかしたら、鞄や寝具だって作れる。
考えるだけで楽しくなる。
「……もっと色々作りたい」
葵は焚き火の前で笑った。




