第24話 魔石の使い道
葵は小屋の机に、昨日手に入れた魔石を並べていた。
「……これが魔石か」
半透明の小さな石。
光にかざすと、内部に淡い光が揺らいでいるように見える。
「魔力が入ってるんだよね」
葵は一つ手に取った。
〖検索〗。
《素材:魔石》
《魔力含有量:低》
《魔力を蓄積・放出する性質を持つ》
「蓄積……放出……」
葵は少し考える。
「ってことは、電池みたいなもの?」
元の世界の知識から、そんなイメージを浮かべる。
「だったら……」
昨日見つけたルミナ苔を見る。
「これと組み合わせたら、夜の明かりにできないかな」
葵は魔石とルミナ苔を並べてみる。
〖検索〗。
《魔石とルミナ苔の組み合わせ》
《直接的な魔力供給は可能》
《ただし、魔力制御の知識が不足しています》
「……ダメか」
どうやら、今の葵には魔石を自由に扱うための知識が足りないらしい。
「魔道具って、結構難しいんだな」
魔石を〖保存〗へ戻す。
「まあ、これはいつかでいいか」
⸻
その日は、別の作業をすることにした。
昨日集めたレッドバイン。
「これで籠を作ってみよう」
蔓を適当な長さに切り、柔らかくしてから編んでいく。
最初はなかなか上手くいかなかった。
「……あれ?」
編んだ端がほどける。
「うーん……」
もう一度。
今度は少し強く編む。
「……できた!」
小さな籠が完成した。
「おお……!」
見た目は少し歪んでいる。
それでも、ちゃんと物を入れられる。
「これ、便利!」
葵は早速、薬草を種類ごとに分けて入れていく。
「擦り傷用」
「火傷用」
「毒消し用……は、今はまだ使うのやめとこう」
毒草の存在は知っている。
けれど、危険なものを食べるつもりはなかった。
葵は籠を並べて満足そうに眺める。
「ちょっとずつ、家っぽくなってきた」
最初は雨風を凌ぐだけだった小屋。
今では、寝床があり、調理場所があり、作業場があり、素材を保管する場所もある。
「……結構快適になってきたな」
⸻
午後。
葵は今日も森へ向かった。
目的は素材探し。
途中でスモールリザードと遭遇する。
「よし」
ナイフを構える。
戦闘は以前よりも安定していた。
攻撃を避ける。
反撃する。
そして――。
《討伐を確認》
葵は〖分割〗を使う。
肉。
皮。
爪。
魔石。
「……魔石」
今度は見落とさない。
小さな魔石を手に取る。
「これも取っておこう」
〖保存〗。
魔石が収納される。
「少しずつ増えてきたな」
保存された魔石を眺めながら、葵はふと思う。
「これって、強い魔物ほど大きくなるのかな?」
〖検索〗。
《魔物の魔力量と魔石の品質には相関があります》
《一般的に、強力な魔物ほど高品質な魔石を持ちます》
「やっぱり!」
葵は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もっと強い魔物を倒せるようになれば……」
より価値のある素材が手に入る。
もちろん、無理をするつもりはない。
けれど――。
「ちょっと楽しみかも」
⸻
その夜。
葵は焚き火の前で、今日作った籠を眺めていた。
隣には淡く光るルミナ苔。
そして、〖保存〗の中には大量の素材と魔石。
「……最初は何もなかったのにな」
魔の森に置き去りにされたときは、本当にどうなることかと思った。
食べ物もない。
道具もない。
安心して眠れる場所もない。
それが今では――。
「ちゃんと生活できてる」
葵は小さく笑う。
けれど、森の奥にはまだ未知の領域がある。
昨日見つけた、大きな足跡。
〖検索〗でも正体が分からなかった存在。
「……いつか、あそこにも行ってみたい」
今はまだ行かない。
もっと強くなってから。
「そのうちね」
葵はそう呟き、焚き火に薪をくべた。
ルミナ苔の淡い光が、静かな小屋を照らしている。
魔の森での生活は、今日も少しずつ変化していた。




