第23話 魔力の結晶
葵は目を覚ますと、まず自分の腕を確認した。
「……ほとんど治ってる」
昨日できた小さな傷は、もう薄い跡しか残っていない。
〖自己再生Ⅰ〗。
軽い傷なら、時間をかけて自然に治してくれる特性。
「便利だなぁ……」
今までなら薬草を探して手当てしていたところだ。
それをしなくても、身体が勝手に治してくれる。
「これなら、探索も少し安心かも」
とはいえ、怪我をしても平気というわけではない。
痛いものは痛い。
「無茶はしないようにしよう」
そう決めて、葵は今日も森へ向かった。
⸻
森を歩いていると、茂みからスモールリザードが飛び出してきた。
「また君か」
葵はナイフを構える。
以前よりも動きに余裕がある。
攻撃を避け、反撃。
一匹目を倒す。
その後も何度かスモールリザードと遭遇した。
二匹。
三匹。
四匹。
「……結構いるな」
戦いの中で腕を引っかかれ、小さな傷ができる。
「っ……!」
痛みに顔をしかめる。
けれど――。
しばらくすると、傷口からの出血が止まった。
「……〖自己再生〗」
傷が少しずつ塞がっていく。
「前より早くなってる?」
葵は自分の腕を眺めながら呟いた。
だが、まだ完全ではない。
「これなら、もっと強くなったら……」
そう考えながら、倒した魔物を処理する。
〖分割〗。
肉。
皮。
爪。
そして――。
「……ん?」
葵の手が止まった。
素材の中に、今まで見たことのないものがある。
小さな石。
半透明で、内部から淡い光を放っている。
「……これ、何?」
葵は手のひらに乗せる。
〖検索〗。
《素材:魔石》
《魔物の体内に存在する魔力の結晶》
《魔力を蓄積する性質を持つ》
「魔石……?」
葵は初めてその存在を知った。
「魔物の中に、こんなの入ってたんだ……」
今まで何度も〖分割〗を使ってきた。
肉。
皮。
骨。
牙。
爪。
いろいろな素材に分けてきた。
けれど、こんなものがあるなんて知らなかった。
「もっと早く〖検索〗しておけばよかった……」
葵は苦笑する。
魔石をさらに調べる。
《魔石》
《魔力含有量:低》
《品質:低》
《主な用途:魔道具の動力源・魔力素材》
「魔道具……」
葵は魔石を光に透かしてみる。
「これが、何かの動力になるの?」
今はまだ、その使い方までは分からない。
でも――。
「……取っておいた方がよさそう」
葵は魔石を〖保存〗した。
⸻
その後も探索を続ける。
スモールリザードを何体か倒し、素材を集める。
そして、いつものように食事の時間。
今日も採取したキノコや薬草を使って、肉を美味しく調理する。
「いただきます」
ゆっくり味わって食べる。
そして――。
《特性の成長を確認》
《【自己再生Ⅰ】》
《一定量の同一特性を確認》
《特性レベルが上昇します》
《【自己再生Ⅱ】を獲得しました》
「……!」
葵は思わず顔を上げた。
「来た!」
〖自己再生Ⅱ〗。
すぐに効果を〖検索〗する。
《【自己再生Ⅱ】》
《自己修復能力が向上》
《軽微な傷は短時間で修復される》
《出血の停止速度が向上》
「……Ⅰより、かなり早い」
葵は先ほどの傷跡を見る。
すでに、ほとんど分からない。
「すごい……」
たった一段階。
それだけなのに、明らかに違う。
「これなら、もっと森の奥にも行けるかも」
そう思った瞬間――。
昨日見つけた、大きな足跡が頭をよぎった。
〖検索〗でも正体が分からなかった魔物。
「……いや」
葵は首を横に振る。
「まだやめておこう」
自己再生が強くなったからといって、自分が無敵になったわけではない。
魔の森には、自分より遥かに強い存在がいる。
それを忘れてはいけない。
葵は今日手に入れた魔石を〖保存〗の中で確認する。
小さな魔石が、いくつも並んでいる。
「これ……いっぱい集めたら、何か作れたりするのかな」
魔石。
新しく見つけた、不思議な素材。
そして葵の頭の中には、また一つ。
「これを使って何か作ってみたい」
という好奇心が芽生えていた。




