第22話 小さな再生
葵は昨日見つけた足跡のことを考えていた。
〖検索〗でも正体が分からなかった魔物。
気にはなる。
けれど――。
「……まだ早いよね」
今の自分では、何かあったときに対処できない。
「もう少し強くならないと」
そう考えながら、葵は森の中を進んでいた。
⸻
しばらく歩いたところで、茂みが揺れた。
「……?」
葵はすぐに立ち止まる。
〖検索〗。
《対象:スモールリザード》
《危険度:低》
「スモールリザードか」
これまで何度も戦ってきた魔物だ。
葵はナイフを握る。
「よし」
小さなリザードが飛び出してくる。
葵は距離を取りながら攻撃を避け、隙を見てナイフを突き出す。
一撃。
二撃。
そして最後の一撃が入り――。
《討伐を確認》
《経験値を獲得しました》
スモールリザードが動かなくなる。
「ふぅ……」
葵は息を吐いた。
以前なら、これだけでもかなり緊張していた。
今では、危険度の低い魔物なら落ち着いて戦える。
「少しは慣れてきたかな」
そう呟き、死体を〖分割〗する。
「よし。じゃあ……」
葵は肉を取り出した。
「いただきます」
調理して食べる。
〖暴食〗を使い、身体へ取り込む。
すると――。
《対象から特性を獲得しました》
《【自己再生Ⅰ】》
「……自己再生?」
葵は表示された文字を見つめる。
「これ、何だろう」
〖検索〗。
《特性:【自己再生Ⅰ】》
《傷ついた身体を徐々に修復する》
《軽微な損傷ほど、より短時間で回復する》
「……回復?」
葵は自分の腕を見る。
「でも、今は怪我してないし……」
そこで、ふと思った。
「実際に試してみれば分かるかな」
葵はナイフを手に取る。
「……いや、さすがに自分で切るのは怖い」
少し考えた末、戦闘中にできた小さな擦り傷を見る。
ほんの少し血が滲んでいる。
「これでいいや」
傷を眺める。
数分後。
「あれ?」
血が止まっている。
それだけではない。
さっきまで赤くなっていた傷が、少しずつ薄くなっている。
「……治ってる?」
葵は目を凝らす。
完全に消えたわけではない。
けれど、確実に傷が小さくなっている。
「すご……」
思わず声が漏れる。
「これが自己再生……」
ただし、思ったほど一瞬ではない。
小さな傷でも、完全に治るまでには時間がかかる。
「まだⅠだからかな」
〖検索〗。
《特性レベルが上昇することで、修復速度が向上します》
「やっぱり」
葵は納得した。
「じゃあ、もっとこの特性を獲得したら……」
傷がもっと早く治る。
深い傷も治せるようになるかもしれない。
「……便利だな」
葵は嬉しそうに自分の腕を見る。
これなら、多少の怪我を恐れずに済む。
とはいえ――。
「無茶はしないようにしよう」
自己再生があるからといって、痛いものは痛い。
死ぬのだって怖い。
「治るからって、わざと怪我する必要もないしね」
葵はそう呟くと、残った素材を〖保存〗する。




