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第20話 森の奥へ

新しい服を身にまとった葵は、小屋の前で軽く身体を動かしていた。


腕を回す。


しゃがむ。


少し走ってみる。


「うん。動きやすい」


昨日まで着ていた制服とは比べ物にならない。


暖かいし、丈夫。


何より、自分の身体に合わせて作った服だ。


「……なんか、冒険者っぽい」


少しだけ嬉しくなった。


そして、昨日決めたことを思い出す。


「もっと素材を探そう」


今までの探索では、食料や薬草を中心に集めてきた。


けれど今は違う。


服を作るための素材も欲しい。


布。


糸。


毛。


皮。


できれば、今まで見たことのない素材も。


「じゃあ……今日はもう少し奥まで行ってみよう」


葵は荷物をまとめ、森へと入っていった。


⸻


しばらく歩く。


いつもの場所を抜けると、少しずつ見慣れない植物が増えてきた。


「この辺り、来たことないな……」


〖検索〗を使いながら周囲を確認する。


《素材:スノーフラックス》


《用途:繊維》


《特徴:白く柔らかな繊維を持つ》


「また繊維!」


葵は嬉しそうに採取する。


さらに進む。


今度は赤紫色の実をつけた植物を見つけた。


《素材:ルビーベリー》


《用途:食用・染料》


《特徴:果汁に強い染色性を持つ》


「染料……!」


葵の目が輝いた。


「これ、服を染められるんだ!」


今まで作った布は、魔糸そのものの色を活かした白や黒ばかり。


色を付けられるなら、作れる服の幅が一気に広がる。


「これも採っておこう」


必要な分だけ丁寧に摘み取る。


「……赤い服もいいかも」


少し想像してみる。


「いや、黒に赤を合わせるのも……」


葵は一人でぶつぶつ呟きながら歩いていた。


⸻


さらに森の奥へ進む。


すると――。


ガサッ。


「……?」


茂みが揺れた。


葵はすぐに足を止める。


〖検索〗。


《対象:ウールホーン》


《危険度:低》


《特徴:全身を覆う柔らかな毛》


《素材:毛・角・肉》


「……毛!」


葵の目が輝く。


茂みから出てきたのは、羊に似た小型の魔物だった。


頭には小さな角が二本生えている。


「かわいい……」


思わず呟く。


しかし、魔物であることには変わりない。


葵は油断せず、ナイフを構える。


「ごめんね」


短い戦闘の後、ウールホーンは地面に倒れた。


《討伐を確認》


《経験値を獲得》


《レベルアップまで残り――》


「まだか」


葵は苦笑する。


最近は、危険度の低い魔物なら数体倒してようやくレベルが上がるようになってきた。


「まあ、強くなってるってことだよね」


そして――。


「じゃあ、素材をいただきます」


〖分割〗を発動する。


《対象を分割》


肉。


皮。


角。


そして――。


大量の毛。


「わぁ……!」


葵は毛を手に取る。


ふわふわしている。


「これ、絶対服に使える!」


〖検索〗。


《ウールホーンの毛》


《繊維化:可能》


《特徴:高い保温性・柔軟性》


《魔糸との混合:可能》


「ブラックウルフより柔らかいんだ」


葵は毛をじっと眺める。


「冬服にはこっちの方が良さそう」


すぐに〖保存〗へ収納する。


⸻


その後も探索を続けた。


スノーフラックス。


ルビーベリー。


ウールホーンの毛。


見たことのない植物や素材を見つけるたび、〖検索〗で調べていく。


そして、気づけば収納している素材がかなり増えていた。


「……いっぱい集まったなぁ」


葵は小屋へ戻る道すがら、〖保存〗の中身を確認する。


食料。


薬草。


魔物の肉。


皮。


骨。


牙。


毛。


植物。


繊維。


「……これ、ちゃんと整理しないと大変なことになりそう」


少し考える。


「種類ごとに分けた方がいいかな」


今度は収納そのものを整理する必要がありそうだ。


けれど、それすらも少し楽しい。


「帰ったら整理しよう」


そして最後に、ウールホーンの毛を取り出す。


「これで……もっと暖かい服が作れる」


葵は思わず笑った。


生きるために始めた森での生活。


いつの間にか、


「次は何を作ろう?」


と考えることが、一番の楽しみになっていた。


「……もっと奥に行ったら、もっと珍しい素材があるのかな」


葵は森の奥を振り返る。


木々の向こうには、まだ見たことのない場所が広がっている。


「明日は……もう少しだけ、奥まで行ってみようかな」


そう呟いて、葵は小屋へと戻っていった。

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