第18話 新しい素材
翌朝。
葵は小屋の前で、昨日作った布を広げていた。
「うん……ちゃんと布になってる」
指で触れてみる。
魔糸だけで作った布は、普通の布よりも丈夫だった。
でも、せっかくならもっと色々試してみたい。
「ブラックウルフの毛……」
昨日〖検索〗した結果を思い出す。
保温性と耐久性。
そして、魔糸と混ぜて糸にできる。
「これ、絶対面白いよね」
葵は必要な道具をまとめ、森の奥へ向かった。
⸻
しばらく歩く。
以前よりも森の奥へ進んでいる。
魔物の気配を感じるたびに〖検索〗で確認し、危険そうなら迂回する。
「……この辺りなら大丈夫そう」
すると、木の根元に見慣れない植物を見つけた。
「これ……?」
〖検索〗。
《素材:フワリ草》
《用途:繊維素材》
《加工することで柔らかな繊維を得られます》
「おお……!」
葵はさっそく採取する。
「食べ物だけじゃなくて、素材も探せるんだ」
これまでの葵は、食べられるものや薬草を中心に探していた。
けれど、目的が変われば見えるものも変わる。
「こういう植物、もっとありそう」
葵は周囲を見回す。
すると、少し離れた場所にも同じ植物が群生していた。
「……いっぱいある!」
必要な分だけ採取し、残りはそのままにする。
「全部取っちゃうと、来年なくなっちゃうかもしれないし」
そんなことを考えながら、さらに奥へ進んでいく。
⸻
しばらくすると――。
「……いた」
少し離れた場所に、ブラックウルフが一匹。
葵はすぐに弓を構えた。
以前なら恐怖で手が震えていた。
今は違う。
〖検索〗で相手の動きを確認する。
《対象:ブラックウルフ》
《危険度:低》
「大丈夫」
矢を放つ。
一撃。
二撃。
ブラックウルフが倒れる。
《討伐を確認》
《経験値を獲得しました》
《レベルが上昇しました》
《Lv.12 → Lv.13》
「よし!」
葵は小さく拳を握った。
倒したブラックウルフを〖保存〗へ。
そして――。
「今日の目的は、こっち」
葵は毛皮に目を向ける。
〖分割〗を使い、肉や皮、毛などに分ける。
「便利すぎる……」
毛を手に取る。
〖検索〗。
《ブラックウルフの毛》
《繊維化:可能》
《推奨処理:洗浄・乾燥・ほぐし》
《魔糸との混合:可能》
「よし!」
葵は必要な分を持ち帰ることにした。
⸻
小屋に戻ると、さっそく作業開始。
ブラックウルフの毛を綺麗に洗い、乾燥させる。
その後、絡まっている毛を少しずつほぐしていく。
「結構大変……」
服飾部で扱っていた布や糸とは全然違う。
それでも葵は嫌にならなかった。
むしろ――。
「こういう作業、楽しいかも」
黙々と毛を整える。
一本。
また一本。
時間を忘れて作業を続けた。
やがて、使えそうな繊維ができあがる。
「できた!」
今度は魔糸と混ぜる。
白い魔糸に、黒い繊維が絡んでいく。
少しずつ撚り合わせる。
「……いい感じ」
完成した糸を指で触る。
魔糸だけのものより、少し柔らかい。
そして――暖かい。
〖検索〗。
《素材:ブラックウルフ混合魔糸》
《耐久性:高》
《保温性:非常に高》
「……すごい」
葵は完成した糸を眺める。
「これで布を作ったら、暖かい服が作れそう」
さらに考える。
「これなら、防寒着も作れる」
そして、少しだけ笑う。
「……次は何を作ろうかな」
森に捨てられたときには、生き残ることしか考えていなかった。
けれど今は違う。
何を作ろうか。
そんなことを考えるのが、少し楽しくなっていた。
葵は完成した魔獣糸を大切に〖保存〗へしまう。
「もっと素材、探してみよう」
そう呟いて、明日の探索に思いを馳せた。




