第17話 初めての布
森の奥へ進んだ葵は、しばらく周囲を見回していた。
「えっと……丈夫な蔓と、木材……」
〖検索〗を使いながら、機織りに使えそうな素材を探していく。
すると――。
《素材:アイアンバイン》
《特徴:非常に強靭な蔓》
「これだ!」
少し離れた場所には、太く丈夫な蔓が木に絡みついている。
葵はナイフで必要な分だけ切り取った。
「これなら織機に使えそう」
さらに、平らで丈夫な木材も見つける。
必要な素材を〖保存〗にしまい、葵は小屋へ戻った。
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「よし……作ろう!」
拾ってきた木材を並べる。
〖検索〗で確認しながら、簡易的な織機を組み立てていく。
木材を組み合わせ、アイアンバインで固定する。
「……こんな感じかな」
簡素ではあるものの、なんとか形になった。
「服飾部でこんなの作ったことないけど……」
葵は苦笑する。
それでも、物を作ること自体は好きだった。
「じゃあ……魔糸を使ってみよう」
指先から白い糸を伸ばす。
それを織機に張っていく。
一本。
また一本。
縦糸を張り終えたら、今度は横糸を通していく。
トン。
トン。
トン。
「……」
葵は無言で作業を続けた。
時間を忘れて、ひたすら手を動かす。
トン。
トン。
トン。
「……楽しい」
思わず声が漏れた。
学校では、人と話すよりこうして一人で作業している方が好きだった。
誰にも急かされない。
誰にも話しかけられない。
ただ、自分の好きなものを、自分の好きなように作る。
「……やっぱり、こういうの好きだな」
気づけば、葵は夢中になっていた。
⸻
しばらくして。
「できた!」
目の前には、一枚の白い布。
まだ小さな布切れ程度だが、確かに布になっている。
葵は両手で広げてみる。
「ちゃんと布だ……!」
指で触れてみる。
普通の布よりも、かなり丈夫だ。
〖検索〗で調べてみる。
《素材:魔糸》
《耐久性:高》
《魔力親和性:高》
「魔力親和性?」
葵は少し首を傾げる。
「……これも後で調べてみよう」
今は、それよりも気になることがある。
葵は布を眺める。
「でも、真っ白だなぁ」
制服の修繕には十分。
けれど――。
「せっかくなら、もっと色んな布を作ってみたい」
そこで、ふと思い出した。
ブラックウルフ。
スモールリザード。
フォレストバード。
これまで倒してきた魔物たち。
「……魔物の毛とか、布に使えないかな?」
葵はすぐに〖保存〗の中を確認する。
ブラックウルフの毛。
フォレストバードの羽。
スモールリザードの皮。
「これ、使えたら面白そう……」
〖検索〗を発動する。
《ブラックウルフの毛》
《繊維化:可能》
《特徴:保温性・耐久性》
「やっぱり!」
葵の目が輝く。
さらに検索する。
《魔糸との混合:可能》
「……魔糸と混ぜて糸にできるんだ」
ブラックウルフの毛を手に取る。
「これで冬用の服とか作れそう」
次にフォレストバードの羽。
《衣服への利用:可能》
《特徴:軽量・保温》
「こっちも使える……!」
葵の頭の中に、次々と服のイメージが浮かんでくる。
「……もっと素材が欲しい」
そして気づく。
「森の奥に行けば、もっと色んな魔物がいる」
葵はしばらく考えた。
以前なら、危険な森の奥なんて絶対に行きたくなかった。
けれど今は――。
「……行ってみようかな」
強くなった。
武器もある。
〖検索〗もある。
そして何より。
「面白そうな素材、いっぱいありそうだし」
葵は小さく笑った。
生きるためだったはずの探索が、いつの間にか新しい素材を探す楽しみに変わり始めていた。
「次は、どんな素材が見つかるかな」
葵は新しく作った布を大切に〖保存〗へしまう。
そして翌日の探索に備え、静かに眠りについた。




