66、虚構の終わり
静まり返った円卓の間で、微かな衣擦れの音がした。
ついで、ジルベールの後ろで扉が開く音。
カツンカツンと足音が響く。
それも一人ではない。何人もの足音。
その音はジルベールを追い越し、両側へと広がっていく。
(一体何が……)
ドクンドクンと心臓が嫌な音を立てる。
息が詰まる。
「皆、顔を上げるが良い」
その言葉にジルベールは顔を上げた。
「……っ!!」
「なぜあの娘が?」
堪えきれず声を上げたのはカトリーヌだった。
それを注意することもジルベールには出来なかった。
何故なら、そこにはミレーニアだけではなく、ミレーニアを挟んで守るかのように、コルヴァンとクレヴォワール侯爵子息が立っていた。
さらに、反対側にはクレヴォワール侯爵現当主セラフィーヌ。その隣にはエリオス・ド・クレヴォワールの姿もあった。
(……まさか、それで外務卿が……!!)
現当主の伴侶エリオスは外務卿ゼフィール公爵家の三男だ。
(これは一体どういうことだ……)
必死に状況を把握しようとするも最悪の想定だけが、脳を過る。
(……褒章では……なかったということか!?)
この状況を好転させるために何かを言わなくてはと思っても、喉の奥が詰まって何も出て来ない。
陛下の目がジルベールをひたと見据えた。
「これ以上そなたと話すのは気分が悪いから、結論から言おう」
ゾクリとするほどに冷たい目だった。
――ジルベール・ド・ヴェルナレット、そなたを当主の座から解任する。また今後ヴェルナレットの名を名乗ることを許さぬ。




