47、お嬢さまとメイド
(……レネ)
ルシアン様と冒険者ギルドの前まで戻ると、レネの姿が見えた。
レネはこちらに気づくと安心したような顔をして、それから唇を噛んだ。
口元を上げようとして、失敗している。
笑おうとして笑えない。それが分かる。
(……どうしよう、どうしよう)
ミレーニアが傷つけたのだ。
いつもミレーニアの傍にいて、笑ってくれて、撫でてくれて、抱きしめてくれて。
そうやって守ってくれていたのに。
「ミレーニア嬢」
傍で声がしたかと思うと、
とん、と背中を押されて、
ぽん、と前に押し出されて。
でもどうしたらいいのか分からない。
「大丈夫。そのまま走って」
ルシアン様が言う。
走るの?どこへ?
「走れば、辿り着けるから」
声に押されて、足に力を入れて地面を蹴る。
勢いがついた体は、そのまま前へ転がり出る。
一歩一歩進むたびに、勢いがついていく。
人にぶつかりそうになっても、ぶつかっても、足は止まらない。
勝手に動く体のまま、そのまま、ひとつの塊になって。
「お嬢さま!!」
レネの声がした。
どんって衝突する。
痛いはずなのに、痛くなくて。
弾かれても、すぐにやわらかい腕が抱きしめてくれて。
「お嬢さま……」
ぐすぐすと声がした。
泣いている。
レネが泣いている。
「ご……ごめんなさい」
「謝らないでください!!」
怒られた。
でも、いつものレネだ。
泣いてるけど、いつものレネだ。
ミレーニアは、ぎゅうぎゅうとレネの体を抱きしめる。
レネが泣いているから、ミレーニアも一緒になって泣く。
子供みたいに、わんわん泣いた。
ギルドの前。
冒険者たちが不思議そうに見ていたことにも気づかずに。
ふたりで、子供みたいに泣いた。




