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『領地から一歩も出てないのに悪女!? 契約書は読み慣れてますが、ひと月500万リアの契約婚約って……私生児の私にどうしろと?』  作者: 星見蒼


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3/6

3、女神の査定

時間は少し前に巻き戻る。


――ルシアンが部屋を飛び出すより前に。




「こちらが、ヴェルナレット嬢のお部屋でございます」


応接間からミレーニアを案内してくれた侍女がそう言って扉を開ける。

おそるおそる部屋へ入ると、レネの姿が見えた。


(ううう……レネ……)


今すぐにでも走って抱きついて、溜まった愚痴を聞いてもらいたいのを、ぐっと堪える。


「ありがとうございます」


侍女に頭を下げ、レネの方を改めて見れば――

その隣に立つ女性に気づいた。


(……えっと。この感じ。どう見ても血縁者よね?)


プラチナブロンドの髪を上品に結い上げた女性。

彫像か絵画のように整った顔立ち。


(なんなの?これは神様からのご褒美!?)


王都の貴族は皆こうなのだろうか。

ヴェルナレット領しか知らないミレーニアには分からない。


「はじめまして、ヴェルナレット嬢」


やはり、声も美しい。

ミレーニアへと歩み寄る一歩一歩が、洗練されすぎていて、もはや神の域。


「あ……あの、ミレーニア・ド・ヴェルナレットです」


ぎこちなく頭を下げる。

貴族の作法など知らないミレーニアには、それが精一杯だった。

控えていた侍女が鋭い視線を投げていたことにすら、気づけない。


「わたくしはセラフィーヌ・ド・クレヴォワール。ルシアンは弟です」

「そ……そうですか……」


セラフィーヌ様の肩越しに見えるレネが、ぶんぶんと首を左右に振っている。

『もっとまともな挨拶を!』と言いたいのだろうが、そのまともな挨拶が分からないのだ。

どうせなら、そこで首を振っているんじゃなくて、ミレーニアの前に出て、見本を見せて欲しい。


混乱のあまり立ち尽くすだけのミレーニアの手が、セラフィーヌ様の白くほっそりとした手に包まれた。


(……やわらかい……あったかい……)


先ほどは視覚、聴覚、もしかしたら嗅覚も美貌のクレヴォワール侯爵子息に奪われていたが、今度は触覚まで脅かされた。

ちなみに嗅覚は完全に支配されている。


(あ……いい匂い……お花……なんだろう、高級な……いや、これこそが『薫り』というものだわ)


ミレーニアの脳内でとっさに浮かぶ「いい匂い」は、美味しいご飯の匂いくらいだ。

しかし考えてみれば、それさえもヴェルナレット領での話。この豪華な侯爵家の食事は、これまた神の域なのかもしれない……


(……お腹すいてきた……)


「宝飾品はお持ちではないのですね?」

「……へ?」


唐突な指摘に、間抜けな声を上げてしまう。

セラフィーヌ様がミレーニアの指先や、手首のあたりを確かめるように撫でている。


「首飾りもありませんわね」

「え……えっと?」


(……そんなものは持ってないんですけど?)


どう答えるのが正解なのか?

なんとなく正直に『持っていません』と答えるのはいけない気がした。


何故なら、先ほど見せられた契約書の文面がおかしかったからだ。


――婚約者として私費利用を認める。ただし上限あり。


そこに記載された金額に、ミレーニアは度肝を抜かれた。

父のヴェルナレット伯爵だってあの金額を自由に使ってはいないはずだ。


他にも違和感を覚えたのは……

契約書の文字を脳内で思い起こしていたミレーニアの耳に、再びセラフィーヌ様の美声が響く。


「ドレスは三着だけ、でしたわね……」


(……え?何故それを……?)


驚いてレネの方を見れば、トランクが開きっぱなしになっている。


「持ち物を見させていただきましたわ」


(……それは、なかなかに失礼では?……いやでも、この家に持ち込むのだから、不審な物とかあったらいけないのか?……そうか……そうなのかなぁ……?)


ついつい首を傾けたまま、セラフィーヌ様を見つめてしまう。

すると、ふわりと微笑まれた。


(う……美しい!!)


あまりの美しさに、くらりと後ろへよろけそうになるもなんとか踏みとどまる。

そんなミレーニアの様子などお構いなく、セラフィーヌ様がさらに距離を縮めてきた。


「ちょっとよろしいかしら?」


白くほっそりとした指がミレーニアの着ているドレスに触れる。


(あぁ……やばい……いい匂いすぎる……)


鼻が勝手にヒクヒクと動いてしまう。

変態の域に辿り着こうとしているミレーニアのドレスが――

サイズの合わないまま着ている所有者不明のドレスが


セラフィーヌ様によって優雅につまみ上げられた。

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