表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
菫色の署名が導く悪女の契約。甘い悪夢は終わらない  作者: 星見蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/70

22、幕間―揺れる灯

ベルモン商会との契約書を、机の引き出しに仕舞う。

契約については、姉上に報告し承諾を得ている。

小規模ながら堅実な商会らしく、問題なしと判断されたようだ。



――ベルモンさん!!


ヴェルナレット嬢が飛びつかんばかりの勢いで、ベルモン商会の商会長アルノー・ベルモンに寄っていった。

嬉しそうに彼の両手を握って、くるくると回る。

ふっくらとしたお腹の彼は困ったように眉を下げながら、合わせるように回っていたが、途中でよろけそうになっていた。


契約の話は、ヴェルナレット嬢が進めた。

驚くほどの手際の良さ。

契約を詰めるのも手慣れた様子で、ベルモンとの息もぴったりだった。


――お嬢さまが領地からいらっしゃらなくなったとお聞きした時は……


何かを言いかけたベルモンを、ヴェルナレット嬢は「あーあー」と声を上げて遮っていた。

聞かせたくないことがあるのだろう。


「……悪女、か」


契約書を読むのが得意で

商会長の手を握って踊って

服飾店では異性に挨拶回りをし

一番高い商品を買おうとする。


悪女と言えば、悪女なのかもしれない。

だが……


――可愛いのは、似合わないんです。


妙に潔い発言。

確かに似合っていなかった。

だから、店員に助言を求めれば、

彼女はなぜか慌てていた。

申し訳なさそうに背中を丸めて、落ち着かなく周囲を見渡して。


自分の行動は、普通のことだと思う。

望んだ物を揃えるのが店の仕事で、客として要求するのは当然だ。

それなのに――


菫色の瞳が、困ったようにルシアンに向けられ、

それをまっすぐ見下ろせば、諦めたように視線を逸らされた。


……なんなんだろうな。


不可解なのは、彼女の方なのに。


妙に胸がざわつく。

……だが、考えるのは苦手だ。


面倒なことは放棄して、部屋の灯りを消せば、机の上の燭台の灯りだけになる。


ゆらゆらと揺れる炎。

暗い室内で、ほんのりと明るく、やさしく。


不思議とヴェルナレット嬢に似ているような気がする。


ふわり、ふわり。

ゆらり、ゆらり。


いつまでも見つめているわけにもいかず、

そっと息を吹きかけて消す。


それでも――

揺れる残像が、まだルシアンの心を灯しているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ