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今日ほど登校するのが怖いと感じたことがない。夏澄がそろそろと教室の扉を開けると、入り口付近の席に座っていた男子が「はよー」と挨拶をしてくれる。夏澄が「おはよう」とどんよりとした空気で言ったものだから、周囲にいた生徒たちは「おや」となった。
――また深見くんと喧嘩したのかな。
――あの二人本当に世話が焼けるよなー。
夏澄は恐る恐る楪に近づいていく。「楪」と夏澄が読んだ瞬間、ビックン!と楪の肩が跳ねた。
「おっ……お、おはよ!」
「おはよう……」
また周囲の生徒たちが「おや」となる。
――喧嘩したわけではない?
――でも気まずそう……。
「あのさ、楪。昨日はごめん」
「なにが?」
「いや……だから、その、き……キs」
「……」
最後のほうは聞こえるか聞こえないかくらいの声量でいったものだから、夏澄が何を言ったのか楪にはよく聞こえていないだろう。それでも楪は察したようだった。
カッと顔を赤らめて、昨日夏澄にキスをされた頬を抑える。
「謝るくらいならするなバカ!」
「ご、ごめんっ……」
「もう知らない」
「ゆ、楪ぁ~~~~」
夏澄が楪にしなだれかかる。楪は鬱陶しそうにぐいぐいと夏澄を押し退けた。
そんな二人を見守っていた周囲の生徒たちは(仲よさそうでよかった)と、二人の間になにが起ったのかもわからないまま安堵していたのだった。




