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日が暮れるころに、夏澄は帰ることになった。楪の祖母は夏澄に「ご飯食べていきなんしょ」と言ったが、夏澄はそういうところでは遠慮するのか「ありがとうございます、でも大丈夫です」と言っていた。
パン介がぎゃおぎゃお吠えながら、夏澄を見送りにやってくる。楪が苦笑いをしながらパン介を抱え上げれば、パン介はちらりと夏澄を見て、そして楪の顔をぺろぺろと舐めた。
「は!?」
パン介のぺろぺろに怒ったように夏澄が声をあげる。
なんでそんなにパン介と張り合っているんだよ……と楪が呆れていれば、ずんずんと夏澄が近づいてきた。
「パン介、貸して」
「はえ? いいけど」
抱っこしたいのか?
楪は夏澄の言動を不思議に思いながらも、パン介を差し出す。パン介は納得いかない……といった顔をしていたが、意外と大人しい。夏澄はパン介を抱っこすると、「よしよし」と棒読みでパン介をあやした。
「……」
「なに? 夏澄、さっきから変だぞ」
「犬ってさー……結構嫉妬深いんだよ。知ってた?」
「あー。たしかにパン介もおまえに嫉妬してるっぽいしなあ」
「……」
ギ、と夏澄が楪を睨む。
楪がびっくりしていると、その瞬間、夏澄が楪の頬に唇を押しつけた。
「……。……え」
「帰る!」
夏澄はパン助を楪に押しつけると、楪に背中を向けてドシドシとした足取りで帰って行ってしまった。
パン介がべろんべろんと楪の顔を舐める。
楪は呆然としながら、夏澄の唇が触れたところに触れて、また「え」と呟いた。




