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楪の部屋に行っても二人がやることは変わらない。夏澄が一方的に喋って、楪が相づちをうって。楪が「何でわざわざうちにくるの」と尋ねてみれば、「楪と一緒にいたいから!」とカラッと笑って返してきた。いつもいつも、意味がわからない。
ふと、夏澄が部屋に飾ってある写真をのぞき込む。
楪、父、母。三人が映った写真だ。
「この楪、今より幼い感じで可愛いね。いつの写真?」
「中学」
「中学生の楪か~! えっと、一緒に映っているのはお母さんとお父さん?」
「……うん」
あれ、と夏澄も思っただろう。
夏澄は何度かこの家に来ているが、一度たりとも楪の親に会っていない。が、夏澄も踏み込まないほうがいいと感じたのか、それ以上言及してこなかった。
楪はその配慮に居心地悪く感じてしまう。
「中学生のとき、父さんと母さんが死んだんだ」
だから、自分から切り出した。
「交通事故で……俺だけ生き残った」
「――……、ごめん、辛い話をさせて」
「いや、べつにいいんだけど。もう大丈夫だから」
変わらず、夏澄は気を遣った様子で、あれだけマシンガントークをしていたのに黙り込んでしまった。おまえ配慮できたんだな、と思ってしまったのは場にそぐわないだろうか。
「……楪」
ふ、と夏澄が楪の手を握る。
「――……きみは、また」
「え、なに?」
夏澄が楪の手に、自らの額を押しつけるようにして。まるで祈っているかのような彼の仕草に、楪は困惑する。
「また」ってなんだよ。
楪が言葉を失っていると、ぱ、と夏澄が手を解放する。
「ううん! なんでもない! 僕、きみのこと大事にするからね」
「は? 何脈絡のないこと言ってんの?」
相変わらず意味の分からないやつ。
夏澄はカラッ笑って、またどうでもいいことをペラペラと話し始めた。変に気を遣われるよりも気が楽だったので、さらっと流してくれて助かる。
けれども、夏澄の様子がおかしかったことだけが、どうしてもひっかかってしまった。




