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夏祭りは夏課外のない休日だった。部活動をしている子もいるからということで、集合は夕方から。日中は特に用事がないため、夏澄は自宅で準備をしていた。しかし、夏澄は朝から落ち着かない様子だ。
「はあ……僕、楪と仲直りできるかなあ……」
「シャキッとしろよ。バカみたいに明るいことだけがおまえの取り柄だろ」
「僕だって落ち込むときくらいあるよ……」
シンクがはあ~っとこれ見よがしにため息をつく。
夏澄はぐでっとベッドの上で寝転がって動かない。
夏祭りのことを考えると憂鬱だ。楪は話してくれるだろうか。こっちを見てくれるだろうか。楪のことを考えるだけで、胸が痛くなる。
「花火大会のときに手を繋ぐくらいの男気見せろよ、だはは!」
「なんで手を繋ぐ必要があるのさ……」
「いいじゃん。犬と飼い主なんだから繋いどこうぜ」
「今は人間と人間ですぅ!」
――手を繋ぐ、か。
人間として生まれた今世では、ろくに楪に触れることはできていない。気まぐれに楪が頭をポンポンとしてきたときくらい。それ以外は、彼に触れる機会などなかった。
犬だったころは、よく触れあったものだ。手をぎゅっと握られたこともあったし、顔をぺろぺろ舐めてあげたりもした。……どちらも、人間になってからではできないようなことではあるが、それでも、楪ともっと触れあいたい。ごくたまにあるポンポンだけでは物足りない。
手を繋いでみたいな。
そんなことを思って、夏澄は天井に向かって手を伸ばす。
「シンク……手を繋ぐって、どんな感じ?」
「お? そりゃあ……」
シンクがどすどすとベッドに近づいてきて、夏澄の手をぎゅっと掴む。指を絡め合わせるようにして。
夏澄が思い切り顔をしかめれば、シンクが「こんな感じ」とにたっと笑った。
「ああ……僕のファースト手つなぎが……イジワル天使に奪われた……」
「だはは! おまえがちんたらしてるからだろ! 楪と繋いで確かめてこいよ!」
「ううー……シンクのイジワル……」
夏澄はぺいっとシンクの手を払って、ごろんと彼に背を向ける。
手をぐーぱーぐーぱーと開いて閉じてを繰り返し、夜の花火大会を想った。




