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犬が転生したら飼い主と同級生になった件  作者: さく
第三章

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10

 授業が終わって、休み時間になって。学校はその繰り返し。休み時間のたびに夏澄は楪に話しかけようとしたが、楪はそれを全部躱す。夏澄が酷く悲しそうな顔を浮かべるのを見るたびに心が痛むが、その痛みに理解を示せるほどに、楪の心には余裕がない。自分の痛みで精一杯だ。


 昼休みがやってくる。


 夏澄が、遠慮がちにちらちらと自分を見てきたことを、楪はわかっていた。しかし、楪は彼の視線に背中を向けるようにして、早足で教室を出て行く。教室に出る瞬間に、夏澄が近くの男子たちに手を引かれていたのを見て安心した。ちょっぴり、寂しかった。


 立入禁止の屋上の扉。さび付いた扉に触れるたびに、心が高揚する。重い扉がガシャッと重々しい音を立てて開けば、その瞬間にビュオッと風が吹いてくる。あまり整備されていないせいか綺麗なところではないが、それでも楪は屋上が好きだった。何もかもから解放されるような気がしたから。


 あれ――一人ってこんなに静かだったんだっけ。


 久しぶりの一人の昼休み。


 青空が、ひどく遠く見えた。


 隣に夏澄がいない。それだけのことなのに、何かが「足りない」という気持ちになってくる。


 ああ、こんな感じか。誰かを失ったときの気持ちは。


 夏澄とは出会ってから、そんなに経っていない。だから、彼と距離をとったところでなんともないと思っていた。彼に情が移ってしまう前に距離をとらなければいけないと思った。けれど、少し遅かったらしい。


 ――さみしい。


 お腹のあたりがギュッとなって、食欲がわかない。無理にパンを詰込んでみたが味がしない。


 もうすでに、夏澄が自分の一部になっていたことに驚いた。


 でも、これでよかった。


 きっと彼と一緒にいたら、彼を何よりも好きになってしまっていただろう。


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