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授業が終わって、休み時間になって。学校はその繰り返し。休み時間のたびに夏澄は楪に話しかけようとしたが、楪はそれを全部躱す。夏澄が酷く悲しそうな顔を浮かべるのを見るたびに心が痛むが、その痛みに理解を示せるほどに、楪の心には余裕がない。自分の痛みで精一杯だ。
昼休みがやってくる。
夏澄が、遠慮がちにちらちらと自分を見てきたことを、楪はわかっていた。しかし、楪は彼の視線に背中を向けるようにして、早足で教室を出て行く。教室に出る瞬間に、夏澄が近くの男子たちに手を引かれていたのを見て安心した。ちょっぴり、寂しかった。
立入禁止の屋上の扉。さび付いた扉に触れるたびに、心が高揚する。重い扉がガシャッと重々しい音を立てて開けば、その瞬間にビュオッと風が吹いてくる。あまり整備されていないせいか綺麗なところではないが、それでも楪は屋上が好きだった。何もかもから解放されるような気がしたから。
あれ――一人ってこんなに静かだったんだっけ。
久しぶりの一人の昼休み。
青空が、ひどく遠く見えた。
隣に夏澄がいない。それだけのことなのに、何かが「足りない」という気持ちになってくる。
ああ、こんな感じか。誰かを失ったときの気持ちは。
夏澄とは出会ってから、そんなに経っていない。だから、彼と距離をとったところでなんともないと思っていた。彼に情が移ってしまう前に距離をとらなければいけないと思った。けれど、少し遅かったらしい。
――さみしい。
お腹のあたりがギュッとなって、食欲がわかない。無理にパンを詰込んでみたが味がしない。
もうすでに、夏澄が自分の一部になっていたことに驚いた。
でも、これでよかった。
きっと彼と一緒にいたら、彼を何よりも好きになってしまっていただろう。




