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犬が転生したら飼い主と同級生になった件  作者: さく
第三章

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23/43

7

 電車を降りてからは、楪はぼんやりと歩いていた。


 頭のなかは、夏澄のことでいっぱい。


 女子と一緒にいたのに、……彼は、彼女たちを振り切ってきたとでもいうのだろうか。この年頃の男子なんて、女子と一緒にいたほうが楽しいだろうに。彼女たちの誘いを断ってまで、なんで追いかけてきたのだろう。


 彼も――俺のもとから去る、その一人だと思っていたのに。



「――おっと、楪じゃん」


「……、」



 歩いていると、声をかけてくる青年がいた。


 午後の日差しに照らされて笑う彼は、[[rb:深紅 > しんく]]という名前の青年。この辺に住んでいるらしい怪しいヤツ。びっくりするくらいに顔立ちが整っているので、見るたびに怖じ気づいてしまう。彼はたまに現われては、楪に声をかけてきた。



「どうしたんだよ、浮かない顔をして」


「べつに……」


「べつにってことねえだろ。彼女にでもフられたか~?」


「彼女なんていませんよ」


「じゃあ、彼氏?」


「はあっ?」



 つまらない冗談だ。


 冗談だけど――ぱ、と夏澄の顔が頭に浮かんできてしまった。そんな自分に驚いて、楪は言ったのだ。「はあっ?」と。



「あんた、本当になんなんですか。怪しいですよ」


「通りすがりの天使様だよ」


「意味わかんな……」



 天使といえば、夏澄も天使の話をしていた。粗雑だなんとかかんとかと。


 ――ああ、また夏澄のことを考えて。俺はどうにかしている。



「オレさまになんでも相談してみろよ、話くらい聞いてやるぜ?」


「……」



 マジで意味不明。


 深紅はいつでも怪しさたっぷりだが、今日に限ってはありがたい存在かもしれない。


 頭のなかがモヤモヤとして晴れないのだ。自分で自分が何を考えているのかわからなくて、頭がおかしくなりそうになっている。


 夏澄のことばっかり考えて。彼がいなくなるのが怖くて彼とは距離を取りたいのに。それなのに、電車のドア越しに見た彼が忘れられなくて。



「……あのさ」



 楪はうつむきながらつぶやく。



「友達との関係に永遠ってあるの?」


「ほお?」


「……そいつ、俺にいっつもつきまとってきて。友達になってやってもいいかなって思うんだけど……。どうせ、いつか、そいつは俺から離れていくと思うんだ」


「なんでそう思んだよ」


「……あいつが、男だから。結局、男にとってのイチバンって女だろ。結婚できるのは、女とだけだ。奥さんや、子どもがイチバンになる。そんなやつと、友達になる意味ってあるのか? どうせ、俺のことは忘れていくだろうし……そういうことがなかったとして、……もしかしたら、……事故にあって、死――……」


「――永遠ならあるさ」



 楪の言葉を遮るように深紅が言う。



「おまえが夏澄と出会った時点で、おまえと夏澄の永遠が始まる。どんな出会いも、どんな瞬間も、おまえという存在がある限り、それは永遠だ」


「……難しいこと言いますね」


「ふっふーん。簡単に言ってあげよう。今を精一杯生きろ、少年! あとのことなんて考えないでさ!」


「……」



 なーはっはっは! と笑って、深紅はどこかへ言ってしまった。


 楪は深紅の背中を見つめて、ため息をつく。結局あの人はわけのわからない人だ。


 自宅の屋根が見えてきた。あともう少しで着く――というところで、ふと楪は思う。



「あれっ……? 俺、深紅さんに夏澄の名前教えたっけ……?」



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