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電車を降りれば、広がる穏やかな町。楪の自宅はそこまで駅から離れていないため、徒歩で行ける。二人でのんびりと、楪の家まで向かった。
周囲には小さな畑などがあった。こうした自然を感じられる風景が、夏澄は好きだ。犬だったころも自然に囲まれて育ったから。昔を思いだして、懐かしくなる。
ふと、ぎゃ~お!という低い声が聞こえてきた。ぴく、と夏澄の体が震える。この声は、猫だ。喧嘩をしているかのようなこの声は――さ、とあたりを見渡して、夏澄は「ンぎゃ」と小さな声をあげてしまう。
そこには二匹の猫がいて、交尾をしていた。
「なっなななな破廉恥ナッ!」
「は、はれんち?」
「いやっ、なんでもなっ……ア! 楪! そっち見ちゃダメ!」
「えっ? は、はあ……」
今の夏澄にとって、猫の交尾は劇薬だった。
さんざん楪のことを意識してしまったあとだ。交尾を見せられると、さらに妄想が爆発してしまう。楪と、あんなふうに、後ろから――……
「わー! ばかばかばかばか!」
「な、なんなんだよ、おまえさっきからおかしいぞ!」
「ううっ、ごめんっ、でも、でもでもでもでも!」
とんでもない妄想をしてしまい、夏澄はうつむいてがしがしと頭をかく。またもや、楪はドン引きだ。
そうこうしていると、猫は交尾を終わらせたのかどこかへ行ってしまった。夏澄は心の底から安堵する。
元犬の人間生活、思った以上に大変だな……。そんなことを思いながら。




