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放課後がやってきて、帰路につく。
この時間の電車は空いていて、ゆっくりと椅子に座ることができる。楪は少し疲れた様子で、ふう、と息をつきながら椅子に座っていた。その楪の様子がちょっと色っぽいな――とちらりと頭のなかで思って、夏澄はブンブンと頭をふる。
なんだか、おかしい。
楪のことを「番になりたい」と一瞬だけでも思ってしまった、あのときから、楪のことで頭がいっぱいだ。楪も夏澄もオスなのに、番になりたいって何故思ってしまっているのだろう。楪はご主人さまなのに。
「……!」
やけに楪が静かだなと思ったら、いや、いつも静かなのだが、うとうとと船を漕いでいた。今日もずっと勉強をしたり本を読んだりしていたので、眠くなってしまったらしい。夏澄は彼の寝顔が可愛いな、と思って、こっそりと笑う。
しばらく電車に揺られていると、と、と肩に重力を感じた。ハッとして夏澄が肩に視線をやれば、楪が頭を乗せているではないか!
「――ッ! ……! ……!」
ぱ、と夏澄は自らの口を両手で塞いだ。声が出そうになったのだ。感動で。
ふらふらとしながら夏澄に頭を乗せている楪は、それはそれは愛らしかった。いつもツンとすまし顔をしている彼が、気がゆるんでいるような顔でおねむになっている姿。可愛くないはずがない。
夏澄はそっとスマートフォンをとりだす。そして、手をプルプルとさせながら伸ばして、インカメラで写真を撮る。
撮れた写真を見て、夏澄はぱーっと顔を輝かせた。楪が自分の肩に頭を乗せて寝ている顔。この写真は家宝になる……と嬉しくなった。
「んん……」
「アッ! 楪ッ! おはよ! もうすぐ着くよ!」
夏澄が微振動を送ったからだろうか、楪が目を覚ます。
楪はニッコニコ顔の夏澄を怪訝な眼差しで見てきたが、写真を撮られたことは気付いていないようだった。




