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昨日はハリキリすぎてしまった。
そんなことをぼーっと考えながら、夏澄は今日も登校した。
夏澄が学校に着けば、クラスメイトたちが「おはよー!」と声をかけてくれる。夏澄も「おはよ」と返せば、きゃーっと女子達が色めき立った。
夏澄は自分の席に着くことはなく、まっすぐに楪のもとへ向かう。楪の正面に立てば、本を読んでいた楪がちらりと夏澄に視線を向けた。
「おはよう、楪!」
「……はよ」
楪は困惑したように、挨拶を返す。
昨日彼の家まで行ったのはいいものの、彼との距離は相変わらず。まだ友人とも言いがたいくらいに、彼との間に壁を感じた。
けれども、自分と楪は「ご主人さま」と「飼い犬」だった深い仲。いずれわかりあえる!と夏澄は意気込む。
「楪! 今日も楪の家行きたい!」
「登校早々言うことがそれ?」
「うん! 昨日、楽しかったし!」
「あっそ。勝手にすれば」
「勝手にする!」
今日も楪の家に行ける! と夏澄は嬉しくなった。るんるんと誰から見ても浮かれている様子で、夏澄は自分の席に着く。
きゅーっとなるくらいに嬉しい。夏澄は机に突っ伏して、嬉しさに悶えていた。
「ねえ、夏澄くん!」
隣の席の女子が夏澄に話しかけてくる。
「夏澄くんって、なんで深見くんと仲いいの? 昔からの知りあいだったり?」
「えっ?」
「昔からの知り合い」――それは間違いないが。彼女の言っている言葉はそういう意味ではないというのは、流石の夏澄もわかる。本当のことを言ってもいよいよ不審者扱いされるだけなので、夏澄は濁して言うしかない。
「……トクベツな仲」
「と、トクベツ!?」
机に突っ伏して、視線だけを彼女に向ける夏澄。そんな夏澄が目を細めてそんなことを言うものだから、彼女は仄かに赤らめる。夏澄はただただ頭のなかがハッピーになっていただけだったのだが、表情が妙に色っぽいものになってしまったせいで、彼女の心にとすっと矢をさしてしまったようだ。
とうの夏澄は、放課後のことを考えて楽しくなってしまっている。また頭をなでなでしてもらえないかな、そんなことをぐるぐると妄想していたのだった。




