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【第六話「2on2」】①

主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。

    戦術家だが感情に流されやすい。

    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望。

    現在3人目のチームメンバーを探している。

 親友:名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。

    知らない物の値段を当てる特技がある。

    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。

お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。

    アレッタのチームメンバー。

    防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。

    長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。

    相手を不快にしないお嬢様言葉が特徴、作中5本の指に入る美人キャラ。

    精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。

幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。

    アバターはニワトリっぽい大きめのフードのライサのチームメンバー。

    武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。

    高火力なので遠距離戦でアレッタを倒そうと思うのはやめた方がよい。

    陽気な性格の頭残念キャラだが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。

    口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。

【第六話「2on2」】

◆戦闘開始・廃墟フィールド ブッ――!! 鋭く乾いたブザー音が、廃墟と化した都市の裂け目を突き破るように鳴り響いた。


 その刹那――空が爆ぜた。 ズガァァァン!! 天を裂き、大地との縁を断ち切るような雷撃が、直上から落ちてきた。 空気が揺れる。世界が軋む。


「リゲル――頭上だッ!!」 ぴーちゃんの声が、警報のように突き刺さる。


「っ……なんだっ!!」


 言葉より早く、リゲルは腰を落とし、防御ビットを四方に射出。 瞬時に形成された防壁が、落雷の中心から弾けた白熱の雷柱に直撃された。


 ゴオッ! ――瞬間、ビットのひとつが爆ぜ、リゲルの右肩を掠めるように雷が滑っていく。 だが、何とかアバターへのダメージは皆無だった。


 焼け焦げた閃光が視界を白く染め、耳をつんざく轟音が脳髄を突き抜けた。


「く……そ……っ」


 振り返ると、ハクの姿が煙の中にぼんやりと見える。 彼は素早く膝を突き、地面の濡れた破片に掌を添える。


 次の瞬間、水が煌めき、雷を曲げて逸らした。 瞬時に形成した反射膜が、雷のエネルギーを曲げて逸らすが、反射角が狂えば即退場――そんなぎりぎりの攻防だった。


 落雷の衝撃で瓦礫が跳ね上がり、近くの廃ビルの壁面が音もなく崩落する。 鉄骨がねじれ、ガラスが砕け、舞い上がった灰塵が戦場を白く包む。


 これはもはや、試合の“開始”ではなかった。 初手で戦況を決着させるつもりだったのだ。


 8割のペアなら、何もできずにその場で消し飛ぶような――まさに、“雷の開幕20割”だった。


「……珍しく、あまり派手に壊れてないわね」


 光が収まると同時に、ライサは鞭を片手にゆっくりと降下してくる。 純白のドレスと雷雲を纏ったアバターが、廃墟の空に幻想的に浮かび上がった。


 彼女はすぐさま地面に降り立つと、足元に淡い雷光を走らせ、雷結界を張る。 結界内は、近づく者に継続的な雷撃を浴びせる自動防衛領域――防御と牽制を兼ねた制圧布告だった。


 そして、その中心、瓦礫に囲まれた開けた空間が「制圧エリア」であることは明白だった。 公式ルールでは、制圧エリアを15分保持すれば勝利となる。


「さて……どう出てくるかしら。地形を読むなら、あの方たち、北東から回り込むはずだけど――」


 ライサが呟くように言うと、その背後――


「ふーん、思ったより無事なんだ。やるじゃん。」


 アレッタの声が、どこからともなく響く。 赤いとさかのような飾りがついた白いフードが、遠くの瓦礫の隙間に一瞬だけ揺れた。


 彼女は初撃の直後にすでに潜伏行動に移っていたのだ。 高台や遮蔽物が多く、複雑な地形の多いこの廃墟群は、彼女のような狙撃手にとっては理想的な地形。


 ライサの結界を中心に広域索敵をしながら、後方支援とカバーに徹する位置へ静かに移動していた。


 アレッタは一度、南西の瓦礫の隙間からすさまじい量の矢の雨を放ち、敵の進行方向を誤認させるような軌道を描かせる。


「あ、適当に撃ったら、アバターに当たったみたい。通行料取れてラッキー♪」


 弛緩した表情が、即座に冷静な狩人のそれになる。「強ポジとったら、負けないもんね」


 ぽつりと呟いた彼女は、すぐさま視線を切り、戦場の裏側を回り込むように移動を開始した。 目指すは――廃墟の最奥、北東高台。 遮蔽と視界を兼ね備えた、完璧な狙撃地点だった。


◆一方、攻撃側――リゲルとハク。


「さすが女子ペア一位だね。まともに受けてたら床ペロしてアバター化装置送りだよ」


 ハクが苦笑しながら、瓦礫の影からリゲルに声をかけた。


「……うん。でも、思ったより残ってる」


 リゲルは肩のビットを一つ回収しながら、焼け焦げた地面を見つめた。 煙がまだ揺らいでいる。


 幸い、このエリアは建物が密集していたため、雷撃は壁や瓦礫に拡散・減衰し、直撃は免れた。


「……まとまって動いたら、次は確実に仕留めに来るな」


「リゲルとは、別行動だね。合流地点、決めとこう」


 即座に判断が下される。 二人の視線が自然と向かう。


 フィールド北東にそびえる、崩れかけの高層建物群―― かつての中心市街地であり、今では“鬼門エリア”と呼ばれる場所だ。


 地形が入り組み、死角と遮蔽が多い。 潜伏や狙撃にはうってつけだが、裏をかかれれば即退場。 まさにハイリスク・ハイリターン。


「……じゃあ、そこで。また……」「“仕掛けるタイミング”は、風が変わったら、だな」


 軽く指を振って、ハクは左手側の廃墟通路に消えた。 リゲルも右手側の瓦礫の陰に滑り込むようにして姿を消す。


 ――制限時間は、あと15分。 空気はすでに焼けており、緊張と放電の余韻がまだ残っている。


 雷と光、影と音が交錯する戦場の幕が、静かに、しかし確かに、上がった。


◆ハクの単独移動


 数分後。 ハクは、建物の影を抜け、左側のルートから外縁部に出ていた。 瓦礫の配置を確認しながら、斜めに崩れたトラスの裏に潜み、周囲を見渡す。


「南西の高台から少し曲射射線が通っているな」「優秀なスナイパーがいるとしたら、この辺りから狙うはず……」


 呟いたそのときだった。


 ――キィン……!


 空気が張り詰める。 風が、音を連れてきた――低く、鋭く、耳の奥を掻き乱すような唸り。


 その刹那だった。


 ズドドドドドド――!!!


 空が、音を立てて割れた。 雷鳴ではない。だが、それに近い衝撃が、上空から降ってくる。


 光の矢が、まるで天蓋が崩れたように――数十、いや数百。 全てが放物線を描きながら、正確にハクの周囲を狙って突き刺さってくる。


「来る……ッ!!」


 ハクは片膝を突き、左手を反射的に魔力を床の一点に集中。 水のように透き通った光の幕が彼の横に浮かび、そこからもう一人の“ハク”が、幻のように滲み出る。


 輝水分身、通常のアバターよりもHPが多いハクだからできる実体性のある分身。


 アローレイン――それは「狙撃」ではなく「飽和攻撃」。 殺すより先に、動きを止め、心理を焼く魔弾の雨。


 ズシャッ、ズガン、ズドン!!


 分身の頭部――眉間に近い一点に、三発が集中して着弾。 光が炸裂し、分身の首が弾けるようにして崩れ落ちた。


 矢の残響が、瓦礫を打ち鳴らす。 戦場が、しばし静寂に包まれる。


「っ、速い……」


 分身が粒子に還元されていくのを確認すると、ハクはそっと口角を上げた。 狙われたのは、“あえて撃たせた”囮だった。


 リアルな損傷表現、最小限のマナ負荷、演出としては十分―― 何より、アレッタに「やった」と思わせるには完璧だった。


「……さて、“傷ついた敵”は一人演出完了。次は、“見えていない敵”をどう動かすか、だね」


 そう呟いて、ハクは煙と静寂の隙間を縫い、足音を殺しながら鬼門エリアの縁を静かに進み始めた。


◆リゲルの単独移動


 MAP全体の風向き、瓦礫の配置、光の当たり方。 リゲルの脳内には、今この瞬間のフィールドが立体的に再構築されていた。


「……風は、北西から東南。遮蔽物は多いけど、狙撃視界は四段階で通る……」


 リゲルは呼吸を静めながら、右手に小さく魔力を集中させる。 その指先に、孔雀の尾羽のような光の粒がいくつも現れ、ふわりと宙に浮かんだ。


 それは彼のアバターから生成された“羽”―― 壊れれば細かく鋭利に砕け、破片が肉に刺さると微弱な追跡信号を放つ、 彼が開発した《風印羽》という特殊な索敵・撹乱用ツールだった。


「……北側の西回りルートに、スナイパーが通るなら……このラインが定石」


 リゲルは手をかざし、そっと風を送る。 すぅ、と音もなく、羽根が風に乗って滑空し始める。


 舞い上がるでもなく、落ちるでもなく、瓦礫と瓦礫の隙間を縫うように、正確に風が導いていく。


「いくつかは、ただのトラップでいい。 一つでも“引っかかってくれれば”……こっちのターン」


 移動中の数分間、リゲルは羽を送り続けた。


 その瞬間――


 リゲルの視界外の廃墟の奥、白いフードの影が、ひらりと瓦礫の隙間を抜けていった。


 ふと風が揺れ、舞っていた羽のうちの一枚が、ゆっくりとフードの上に降りる。


 ……ぺたり。


 アレッタは気づかない。 けれど、その羽は、わずかに砕け、繊維に食い込むように固定された。


 それは、目視ではほとんど確認できない“索敵の針”だった。


 リゲルの感覚が、わずかに鋭さを帯びる。


「……やっぱり、1個何かについたな」


 手元の魔力が微かに震え、羽がどの方向に流されたかを示していた。


 アレッタの位置――いや、“最終到達予定地”が読める。


「高台に向かってる。なら……こっちは、少し引いたカウンター位置が正解」


 リゲルは瓦礫を飛び越え、すでに“次の風”を読んでいた。


 羽は風に乗る。風は敵を導く。 そして、自分はその風を使って“逆から撃つ”。


 リゲルが出した他の羽たちはアレッタを先回りして北東を狙う高台の奥に風に乗って終結していった。


 戦場の空気が、ゆっくりと形を変え始めていた。


◆合流地点


 崩れかけた高層ビルの裏路地で、リゲルとハクは静かに合流した。


「……遅かったね。けど、読めたよ」


 ハクが低く呟きながら、リゲルに小さく目配せを送る。


「アレッタの位置、わかった。……たぶん、北東最奥のスナイパーポイント。こっちの風が、一枚だけ“引っかかった”」


「羽、か。……本当に、ついたんだな」


 リゲルが頷く。 そこは、廃墟群の地形の中でも最も射界と遮蔽のバランスに優れた“強ポジ”。 アレッタなら必ず取る、と予想していた場所だった。


 リゲルは瞬時に戦術構成を切り替える。


「ハク、……君の“分身”、今出せる?」


「俺もそれを考えてた。  もし、本体が一撃でも食らったら僕も危ない。あれ、直撃したら普通に“即退場レベル”の火力だ」


 アローレインを間近で目の当たりにしたハクの声に、珍しく緊張が滲む。


 それもそのはずだった。 リゲルたちはまだ知らないが、アレッタの矢は、リゲルが全ビットを一点に集中して形成する防壁よりも、容易く貫通する。


 精密狙撃というより、貫通力特化の“超質量弾”。 しかもそれを、ほぼ無音で撃ち出せる。


「それでも、撃たせなきゃ進まない。狙撃主の矢は“撃った後”に隙が生まれるから」


「了解。……囮、出すよ」


 ハクが掌を前にかざすと、煌めく水の粒子が一体の“自分”を形作る。 その動きは本物と遜色なく、あえて重心を少しずらし、“手負いの兵”のように振る舞わせた。


 リゲルから共有された“羽の反応位置”――それを中心に、まるで「油断して立ち止まった敵兵」のような挙動をさせる。


 ――そして。


 ヒュッッッッ――!!!


 空気が引き裂かれた。 直後、閃光にも似た白い軌道が分身の眉間を穿つ。


 ズバァァァァンッ!!!


 分身が砕け、水飛沫のように四散する。


 だが、それだけでは終わらなかった。


 分身の爆裂の余波――水の粒子がマナごと吹き飛ばされ、近くの瓦礫に閃光反応が跳ねた。 熱波と衝撃が一瞬だけ領域を包み、リゲルが咄嗟に身を低くする。


「っ、危な……っ!」


 リゲルの肩をかすめるように、熱の残滓が滑っていった。 もし防御ビットを一枚でも使っていなければ、今ので肩ごと吹き飛ばされていた。


「これが……アレッタの矢……」


 リゲルは冷や汗を垂らしながら、矢の到達角と射線を即座に再計算する。つ”。


 リゲルが出した他の羽たちはアレッタを先回りして北東を狙う高台の奥に風に乗って終結していった。


 戦場の空気が、ゆっくりと形を変え始めていた。

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