【第二十四話 『仮巣と観察の月曜日』】②
主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。
戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根
戦術家だが感情に流されやすい。
この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。
今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。
3人目の仲間に天才サポーターのサダルが見つかった!現在チームは連勝中
親友:現在スランプ中
名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。
戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身
知らない物の値段を当てる特技がある。
裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。
仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。
戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成
リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。
万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。
最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。
あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。
一度リゲルの誘いを拒絶した。
お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。
主人公のライバルチームのリーダー。
防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。
長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。
相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ
精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。
幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。
主人公のライバルチームのメンバー。
アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的。
武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。
高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。
陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。
口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。
破天荒:ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。
名前は、シェラ。太陽牡羊座月双子座。
主人公のライバルチームの3人目のメンバー。
性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。
すさまじい運動神経を持っている。
精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。
通常時は、爆発ハンマーと爆発ハチェットで戦う。
本気になると、両手持ちのリボルバーハルバードになる。
◆第四節:Z室の通知と編成(午前)
ランキング一覧が一巡した直後、リゲルの端末が静かに震えた。
画面には新たな通知が浮かび上がる。《選抜上位チーム対象:Z室アクセス権限通知》
通知を開くと、マップ表示とともに詳細な案内が表示された。
《Z室とは:選抜上位チームに一時的に割り当てられる訓練・交流・作戦研究のための仮想部室空間です》《1室あたり最大12名まで。チーム単位ではなく、編成のバランス・戦績・所属クラスなどを考慮して混成で割り当て》
「Z室……?」
リゲルが思わず声に出すと、ハクとサダルも端末を確認する。
「お、来た来た。どれどれ……」
表示された部屋番号とメンバー一覧を見た瞬間、リゲルの指先がわずかに止まった。
《Z室No.3 配置メンバー:リゲルチーム/ザビチーム/シャウラチーム/ライサチーム》
「……え、混成?」
ハクが驚いたように声を上げる。「てっきり、同じチーム単位で割り振られると思ってたのに……」
「いや、これは……」 サダルが画面を一瞥してすぐに言う。「戦績だけじゃなくて、観察対象としての組み合わせを意識してるね。間違いなく試されてる」
Z室No.3。 リゲルたちが入ることになったその仮想部室は、まさに12校ある学園都市でも屈指の“強者”たちと同室ということだった。
その名前を並べるだけで、部屋の空気が張り詰めそうな構成。
あのザビと、同じ空間で過ごす―― それだけで、何か背筋が伸びるような、でもどこか落ち着かないような気持ちになる。いつぞや訓練室で見かけたときの練度も半端なかった。 全勝のチームメンバーもきっとすさまじいに違いない。
ライサたちとは模擬戦で一度戦った。戦術は端正で、詰めの甘さがなかった。 アレッタの狙撃は意外と読めず、戦場では無邪気さが逆に厄介だった。 だが――シェラだけは、まだ一度も本格的に戦っていない。 普段の彼女は直情的で、茶化すように絡んでくることもある。 お菓子のときのことや秘密の部屋発見の時では、むしろ一番人間味があると言えるのかもしれない。 けれど、いざ戦場となれば、その体躯と火力は別格だ。 彼女が本気になったとき、どこまでのことができるのか。 それをまだ誰も、目撃していない。 ……得体が知れない。 単なる不明じゃない、“未踏の危険域”としての、得体の知れなさ。
「戦ってないからこそ、一番怖い」―― その認識が、リゲルの中でじわじわと存在感を増していった。
そして――シャウラ。 彼は、以前よりも何かが変わった。 だがそれが“柔らかくなった”のか、“危うくなった”のか、まだ分からない。 その笑みは、まるで獣が牙を隠しているかのようで、むしろ今の方が、ずっと不気味だった。 シャウラは、チームが変わってから異常なほど勝ててる、一体どんなメンバーなのだろう。
「……本気で、後半戦の前哨戦みたいなもんだな」
リゲルは無意識に喉を鳴らした。
画面の右下では、Z室の外観イメージと、入室時の仮想シミュレーションの一部が表示されている。 近未来的で洗練された空間。多目的な配置ができるソファや端末、壁面スクリーン。 情報共有・訓練記録・試合のリプレイなど、全てその場で行える設計。
だが、そこに立つ自分を想像したとき―― 無人の映像に、自分たちの影が重なるような錯覚がした。 白すぎる壁、整然と並ぶ家具、そのどれもが、心の機微を映し出す観察装置のように見えた。
「……ここで、何日も午後一緒に過ごすのか……」
ハクが笑いながらも、どこか真剣な目で呟いた。
「面白い。何を見られているか、試されているか、それを意識できるかどうかが鍵になる」 サダルの声には、少しだけ楽しげな色も混じっていた。
「これは訓練場じゃない。“観察装置”だ。誰が、どこで、誰と、どんな会話をして、どんな顔をするか――全部、次の選抜材料になる」
重いような、でもどこかワクワクするような感覚が、リゲルの胸の奥をかすめた。
自分の言動一つが、誰かの“評価”になる。 そう思うと、普段通りに振る舞える気がしなかった。
【リゲルの評価】 ライサ精緻で隙がない戦術家/拘束と結界が得意/連携の要/強烈な開幕雷撃気品と優雅さ/微笑の裏に静かな距離感/香りは“整った空間”のよう アレッタ強烈な狙撃と幸運に支えられた一撃必殺型/奇襲の象徴無邪気でおしゃべり/ニワトリ愛が重くて愛おしい/人懐っこさが際立つ シェラ圧倒的な火力・突撃型/不意打ちと突破力/まだ未知数生意気で直情的/誰よりも生活感がある/笑いの中心にいるが核心は見せないシャウラ一匹狼気質/トラブルが多い/黒炎を用いた高リスク高火力のカウンター型/一撃必殺を狙う危険な存在/あまり関わりたくないザビ 無敗のチームを率いる支配型リーダー/圧倒的な個人スペックと正確な攻撃かつ反応速度/毎日の遅くまでの鍛錬と見せていない本気
◆第五節:Z室への移動(午前後半)
空気が、少しずつ変わっていた。
掲示板の前でのざわめきも、次第に散っていく。生徒たちはそれぞれの行き先に向かい、廊下は再び静けさを取り戻しつつあった。
「……行こう。そろそろ」
リゲルがぽつりと呟いた。
掲示板をもう一度見る気には、なれなかった。
じっとしていると、考えなくていいことまで考えてしまいそうだった。 Z室。自分たちに割り当てられた、新しい“舞台”。 だからこそ、できるだけ早く、そこに身を置いてしまいたかった。
「えー、もうちょいゆっくりでよくない? どうせ部屋には時間通り行けばいいんだし」
ハクがのんびりした声で言いながら、ポケットに手を突っ込んだまま首を傾ける。
「早く行って損はない」
サダルがきっぱりと言った。「部屋の構成や設備を見ておけば、優位に動ける。最初に入った者が観察者で、後に来た者は被観察者。これは心理戦だよ」
その言い方があまりにも客観的だったせいか、ハクも「やっぱり水瓶座っぽいね」と笑いながら肩をすくめた。
リゲルは静かにうなずき、端末のマップを開いた。 Z室No.3。仮想部室棟の北側、訓練棟からもやや離れた位置にある。 画面を閉じ、視線を先に向ける。
無人の廊下が、まっすぐに続いていた。
その途中、目に入る物がいくつかあった。
掲示板裏に立てかけられたままの点検用のモップ。 窓際の台に置かれたままの、プラントベースの簡易鉢。 掲示物の一部が剥がれかけており、角がふわふわと揺れていた。
けれど、人の姿はどこにもなかった。
扉も、音も、気配もない。 まるで、リゲルたち三人だけが、この通路に取り残されたかのような静けさだった。
歩き出す。足音が、硬質な床に微かに響いた。
互いに視線を交わすわけではない。 だが、完全に逸らしているわけでもない。
ぎりぎりの距離感で、三人の意識が交錯していた。
教室でもなく、訓練棟でもない―― Z室は、これまでとはまったく異なる“場”だった。
名目上は、訓練と作戦研究のための共用部屋。 けれどその実態は、上位チーム同士の競争と観察の場。 そして、環境そのものがすでに“試験”の一部になっている。
その入り口が、目前に迫っていた。
リゲルはZ室No.3の前で立ち止まり、深く息を吸った。 指先が、静かに扉の取っ手へと伸びていく。
――まだ、誰の声も聞こえていなかった。
◆Z室の初訪問
カシャン、と機械的な音を立てて、扉が横にスライドした。
その瞬間、ひんやりとした空気が、外との境界を越えて流れてくる。 仮想部室――Z室No.3。 中庭に面した独立棟の2階にあるその部屋は、建物の佇まいからして、明らかに“選ばれた空間”だった。
リゲルが一歩、足を踏み入れる。
室内は思っていた以上に広く、静かだった。 機械音も、足音もない。 誰も来ていない、まだ誰の気配も染みついていない“まっさらな空間”。
床は灰白系のカーペットで、足音を吸収する。 照明はやや間接的で、壁の縁に沿って穏やかな光が差していた。
部屋の中心には、小さな共有ラウンジのようなスペースがあり、低いテーブルと多目的ソファが配置されている。 その周囲には、各チームごとに区切られた半個室型のブースが4つ。 仕切りは低めで、座れば見えないが、立てば互いの姿が自然に視界に入るように設計されている。
「……なんか、ホテルの上級フロアみたいな匂いしない?」
ハクがそっと言った。
窓の外には、訓練棟と、その背後に浮かぶ空中庭園の一部が見える。 今はちょうど日が高く、柔らかな陽光が部屋の中に射し込んでいた。 光はカーテンの薄布を透かして、壁に長く伸びる影を落としている。
壁面にはモニターと端末操作用のパネルが並び、冷蔵保管庫と小型ストレージも揃っていた。 人数分の座席、ワークスペース、映像記録用のハブ、簡易通話装置……すべてが完備されている。
「……なるほど、部屋割りで“偶発的な観察”を狙ってるね」
サダルが静かに言った。 その視線は、ソファの配置角度や、ブースの開口面に向けられている。
「動線が交差しやすい作り。おそらく、各チームの“距離感”を試す設計。あとは……こっちの意図とは無関係に、情報が漏れるようになってる」
リゲルは壁際の端末に目をやる。 スリープ状態のディスプレイに、微かに残る指紋の跡すらない。 本当に、誰もまだ来ていないのだと実感する。
「……んー、なんか、こう……」 背後で、ぴーちゃん(月曜日)のくすんだ羽根がふよふよと浮かぶ。
「この配置……情報戦だよ、完全に……胃が痛い……」
その声は、羽毛の中から聞こえるような、頼りないぼやきだった。
「座る位置とか、物の置き方とか、何気ない一言とか、そういうの全部“見られてる”空間だよ……ねえリゲル、今日帰っていい?」
「……まだ入ったばっかなんだけど」
リゲルは小さくため息をつき、部屋の中央にあるラウンジのソファに腰を下ろした。
誰もいない。 けれど、誰かが来る気配だけが、静かに部屋を満たしていた。
この空間で何が起こるのか、誰が何を語るのか。 そのすべてが、まだ始まっていない。
――そう、まだ、誰の声も聞こえていなかった。
◆Z室の会話(午前/Z室No.3内)
誰もいないZ室で、三人だけの会話が静かに交わされていた。 部屋の空気はまだ透明で、椅子も端末もまっさらなまま。けれどその無人の静けさが、逆に“誰が来るか”への意識を高めていく。
「……無敗か」
リゲルがテーブルの端に肘をつき、ぽつりと呟いた。 指先で端末をなぞるようにしながら、その視線は壁際のまだ誰も座っていないブースに向けられている。
「ザビチームだろ? あそこ、ほんとに全勝か……」
ハクも向かいのソファに座りながら、端末越しに同じ一覧を眺めていた。
「……メンバーのこと、知らないんだよな。ザビ以外」
「しかも、一人は外部からの編入者って噂もある」 サダルが端末の情報をスクロールしながら言う。「名前も経歴も、データベースには載ってない。仮登録のまま通過した可能性がある」
「実戦経験持ちってこと?」
「さすがに公式には記録がない。でも……それだけ消されてるなら、むしろ本物の可能性が高い」
「うん。というより、余裕がなくてチェックしてなかったってのもあるけど。 そういえば前に、“最強のサポーターがいる”ってアレッタが言ってたね。……一番、分析不能なタイプ。 その話のとき、シェラもすごく嫌そうな顔してたな。」
リゲルの声には、無意識の警戒がにじんでいた。 自分が“見て理解する”ことで戦う者である以上、得体の知れないものは、何よりも不安材料だ。
「しかも、もう一人の方は未知数。一体どんなメンバーなんだろう」
沈黙がひとつ挟まる。
続けて、ハクがちらりと左のブース――ライサチームの名前が割り当てられた領域に目をやった。
「……あのさ、ライサのとこにいるんだよ。シェラって子」
「うん?」
「なんか、前に言われたんだよね。“ドジ男”って」
「……ハクがドジ踏んだからでは?」
「違う! 戦ってもいないのにだぞ? しかも1回重いものが落ちてきたときにシェラに助けてもらっただけなのに、いきなりだよ。 しかもなんか……シェラってすごく前衛ぽいよなあ」
ハクの声には、軽く笑い混じりの調子がある。けれどその奥には、しっかりとした意識の重さがあった。
「戦うとしたら、たぶんハクが正面ぶつかる相手になるよね」
ハクの新しい双剣。最大HPを犠牲にした構造の分、正面衝突には細心の注意が要る。 だからこそ、力任せの突撃型相手には余計にシビアな調整が必要になる。
「一撃系前衛か……お前とは思想が真逆だな」「うん、こっちが『削って待つ』なら、向こうは『削られても当てる』系だろ、たぶん」
「……それに、向こうも強くなってるかもな」
ハクがぽつりと言った。
「ライサもアレッタも、前よりずっと“戦い慣れてる”感じがする。特にアレッタ、今の実力だと油断するとやられる」
「そっか……うん、確かにあの二人、あれだけじゃない気がする」
一方、サダルは窓際に立ち、Z室全体の配置を見回しながら静かに言葉を落とした。
「シャウラのチーム、最近変わったよね」
「ん? 前から強くなかったっけ」
「いや。前はシャウラのワンマンチームだった。けど今はメンバー変わって……全試合圧勝してる」
サダルの目が、天井近くの光源の反射を捉えていた。空間と構造を見る、その癖はどんな場面でも変わらない。
「組んでるメンバーが変わったと思う。実際、戦闘スタイルが変わってる。……構成による勝率の伸びっていうのは、だいたい“裏方”が関わってる」
「つまり……?」
「暴れてるのがシャウラ本人でも、勝たせてるのは別の誰か。たぶん、支援型か情報処理型。そういう奴が裏にいる」
「見たの?」
「いや、全く。情報がない。でも、“情報がない”ってことは、逆に隠してるってこと」
Z室にはまだ誰も来ていない。
この部屋のメンバーで、唯一まだ“実績が中堅”なのは、自分たちだ。 リゲルは無意識に視線を伏せる。 ザビ、シャウラ、ライサ――いずれも後半戦の有力候補。 そこに並ぶ自分たちは、果たして“同格”として見られているのか。
誰もいないはずなのに、視線のようなものを感じる。 きっとこの部屋には、すでに“ログ”が記録されている。 誰がどこに座るか、どの順で話すか、どんな表情か。 全部、どこかで誰かが見ている。
それでも、彼らの意識はすでに、それぞれの“戦い”に向かっていた。
カツン。 静寂の中、廊下の向こうからわずかな足音が響いた。 それだけで、三人の視線が、同時に扉の方へ向いた。




