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【第二十四話 『仮巣と観察の月曜日』】①

 精霊:名前はぴーちゃん。孔雀の精霊。曜日ごとに性格や見た目が変わる。


    土曜日のぴーちゃんは、寝坊助でネガティブ。


    イメージカラーは紫色。


    ゲームで夜更かしすることが多く、7匹の中で唯一リゲルに起こされている。

主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。


    戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根


    戦術家だが感情に流されやすい。


    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。


    今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。


    3人目の仲間に天才サポーターのサダルが見つかった!現在チームは連勝中


 親友:現在スランプ中


    名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。


    戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身


    知らない物の値段を当てる特技がある。


    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。


 仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。


    戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成


    リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。


    万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。 


    最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。


    あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。


    一度リゲルの誘いを拒絶した。


お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。


    主人公のライバルチームのリーダー。


    防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。


    長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。


    相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ


    精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。


幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。


    主人公のライバルチームのメンバー。


    アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的。


    武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。


    高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。


    陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。


    口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。


破天荒:ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。


    名前は、シェラ。太陽牡羊座月双子座。


    主人公のライバルチームの3人目のメンバー。


    性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。


    すさまじい運動神経を持っている。


    精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。


    通常時は、爆発ハンマーと爆発ハチェットで戦う。


    本気になると、両手持ちのリボルバーハルバードになる。

◆第一節:月曜日のぴーちゃん(朝/リゲルの部屋)


 目が覚めたのは、いつもよりほんの少しだけ早かった。


 時計はまだアラームを鳴らしていない。けれど、まぶたの裏に差し込む光はすでに夜の気配を追い払っていた。 ただ、その光は――どこか鈍く、曇っていた。


 窓の向こうに広がっているのは、灰色がかった朝空。 カーテンの隙間から差し込むその色は、昨日の透明な空とは違って、どこか“先が見えない”色だった。 ガラスには細かい結露が滲み、光を歪ませている。まだ冷たさが残る空気が、ゆっくりと布団の隙間から入り込んできた。


 リゲルは、布団の中でゆっくりと膝を抱えたまま、しばらく動かなかった。


 ――昨日。日曜日。 ハクとサダルと、ゲーセンで麻雀をした。 笑った。驚いた。勝った。


 ……けれどその余韻は、朝になったとたん、なぜか遠くに押しやられていた。 日曜の夜に見た夢も、内容は思い出せないのに、やけに重たかった気がする。


 今日からまた一週間が始まる。 そして今日は――選抜戦前半の結果が発表される。 それだけでも十分、気が重い。


 リゲルは、布団の外に手を伸ばし、羽根の器にそっと触れた。「ぴーちゃん。……起きて」 何の反応もない。「……ぴーちゃん」 もう一度、ゆっくりと声をかける。すると、ようやく空間が淡くきらめいた。


 ふわり、と。 くすんだ紫の羽根が、ゆっくりと浮かび上がる。


「……んあ? もう朝?」


 現れたのは、他の曜日とはまるで雰囲気の違う、どこか沈んだ気配の“ぴーちゃん”だった。


 羽根の縁はぼやけ、いつもの孔雀のような華やかさは見られない。 光沢も鈍く、ふわふわと定まらない軌道で漂っている。


「早くない? てか、月曜日じゃん……最悪だ……」


 言葉だけでなく、羽根そのものが重たげだった。 ぴーちゃんはそのままリゲルの布団の上にふにゃりと着地し、目も開けきらないまま羽根で顔を半分隠す。


「りげるぅ。今日は結果の発表でしょ……その後の集まりとか、ああいうの、あんまり得意じゃないんだよね……」


「……俺も得意ってわけじゃないけど。それにぴーちゃんが出るわけじゃないでしょ」


 リゲルが布団をめくりながら呟く。


「……あうぅ。でも、ボクも精霊として人がいっぱいいる雰囲気っていうか、そういうのが苦手なんだんよねー」


 ぴーちゃんは、羽根の端を枕みたいにして、ぐだっと寝転がる。


「すごいよね、リゲルは、緊張しないの? えー、ボク無理……人がいっぱいいるだけで、もうムリ……」


 その言い草は、半ばふて寝しそうな子供のようだった。


 リゲルは、制服のシャツに手を伸ばしながら、微かに笑う。


 自分より緊張している人……というか鳥を見るとなぜか緊張しない気がする。「ありがとう、ぴーちゃん」


「……そっちがそれなら、俺ももうちょっとがんばるよ」


 そう言いながら、窓の外を見る。


 空はまだ曇っていた。 遠くのほうに、薄く光る雲の層が折り重なっている。 その奥に、わずかに晴れ間がのぞいているようにも見えた。 風はなかった。 だからこそ、その雲の変化が、じっくりと進んでいくような気がした。


「……でも、行くんでしょ?」


 羽根の奥から、ぴーちゃんが小さくつぶやく。


「じゃあ、さ。……一緒にがんばるか。いや、がんばれたら、だけど」


 その声は相変わらずくぐもっていたけれど―― リゲルの中に、ほんのわずかに火が灯ったような気がした。


 布団から出る。 重さを感じながら、でも確かに一歩を踏み出す。


 窓の外では、雲がゆっくりと流れていた。 その奥にある光は、まだ届いていない。けれど――きっと、そこにある。


◆第二節:掲示板とZ室通知(登校直後〜午前)


 月曜日の校舎には、週明け特有の静けさが漂っていた。


 けれどそれは、ただの眠気や倦怠感から来るものではなかった。 選抜戦前半のすべての試合が終わり、今日、その成績が正式に発表される。 それを知っている生徒たちの空気は、いつもより少しだけ張り詰めていた。


 校舎の廊下。端末の前や掲示板の周囲には、小さな人だかりができている。 それぞれのチームが固まって、戦績を確認していた。 ときおり、画面を指差してささやき合う声が漏れる。 驚き、落胆、安堵――いろんな感情が、目に見えない粒のように漂っている。


「え、ここまで落ちるの? 嘘でしょ……」「えー、あのチームより下ってありえる?」「マジか、俺ら補欠か……いや、まだチャンスは……」「Z室ってどこ割り当てられるんだろ、怖い怖い……」


 モブたちの声が、途切れ途切れにリゲルたちの耳に届いた。


 リゲルは、人の波を避けるようにして廊下を歩いていた。 昨日までの余韻は、すっかり薄れていた。 端末に映る情報が、現実に引き戻す。


「おーい、リゲル」 少し離れたところから、ハクの声がした。 その声に振り向くと、軽く手を挙げながら歩いてくるハクの姿があった。


 そのすぐ後ろから、制服の上着を着崩したサダルも現れる。「もう掲示出たって。集まってるってことは、だいたい……そういうこと」


 合流した三人は、掲示板の人だかりから少し離れた場所に立った。 リゲルとハクは、自然と口数が少なくなった。 言葉を交わさなくても、胸の奥にじわじわと緊張が広がっていくのがわかった。


 視線の先、端末の向こう側―― 遠くには、いくつかの目立つチームの姿が見えた。


 ひときわ鋭い存在感を放つ、ザビ。 壁際に腕を組んで立つ黒衣のシャウラ。 その近くで、金色の髪を揺らしながら仲間と何か話しているライサの姿も見える。


  近くの生徒が、小声でささやいた。「見て、あれザビじゃない? やっぱ上位だよな……」「シャウラもいる。なんか怖くて近づけないんだけど」「うわ、ライサたちもいるよ。マジで……全員集まってんじゃん」


 彼らは、誰よりも目立っていた。 そして、その存在が周囲に無言の圧を放っていた。


  リゲルもハクも、無意識に息を詰めた。


「うーわ、絶対あそこらへんと同じ部屋になりたくない……」「なんでザビたち普通にいるの? 近寄りがたすぎる」 モブたちの会話は、緊張をさらにかき立てる燃料のようだった。


  だが、サダルだけは違った。 ポケットに手を突っ込んだまま、どこか興味なさそうな顔で掲示板のほうを見つめている。 まるで、風景の一部でも眺めているかのように。 そわそわする素振りもなく、手足の動きに無駄がない。 むしろ、これから何を食べるかでも考えているような、そんな余裕すらあった。


「……ほんと、肝が据わってるというか」 ハクがぽつりとつぶやいた。


 リゲルは何も言わなかった。 ただ、自分の手のひらが、少し汗ばんでいるのを感じていた。


◆第三節:選抜戦前半の結果発表(掲示板前)


 端末に表示された情報が、次々とスライドしていく。


《第21回アバター化戦術選抜戦(3年おき開催)》《14試合勝敗表(上位20チーム)》


 ザビチーム    :14勝0敗 Team 7      :13勝1敗 ライサチーム   :13勝1敗 シャウラチーム  :12勝2敗 Team 14     :11勝3敗 リゲルチーム   :11勝3敗 Team 2      :11勝3敗 Team 5      :11勝3敗 Team 8      :10勝4敗 Team 11     :10勝4敗 Team 23     :10勝4敗 Team 17     :10勝4敗 Team 18     :10勝4敗 Team 10     :9勝5敗 Team 12     :9勝5敗 Team 31     :8勝6敗 Team 24     :8勝6敗 Team 22     :8勝6敗 Team 34     :8勝6敗 Team 16     :8勝6敗


 画面上部には、追加の通達も表示されている。《校内代表は、後半戦14試合、合計28試合終了時の優秀な上位4チームが選ばれる》《※必ずしも勝敗で決まるわけではないが、勝敗を第一次的に考慮。》《選抜後半戦は中間試験終了後に開催予定》《本日以降、各チームに後半戦開始まで訓練室(Z室)が割り当てられます》《後半戦に代表入りしなくても、全日程完了で4単位付与》《各日のMVPチームには、進路選択の優遇措置あり》


「うわ、ザビのとこ全勝かよ……」「うち、9勝でダメだったってことか……」「まさかシャウラも3位じゃなくて4位とはね」


 掲示板の前には次第に人が増え、小さなどよめきが広がっていく。 リゲルたちもその輪に加わり、一覧を食い入るように見つめた。


「代表チームは最終戦績で決まるって、明言されたな」 サダルが画面の通達を目で追いながら言う。「それに、Z室。後半戦まで訓練環境が確保されるのはありがたい」「4単位もらえるってことは、最悪負けても卒業には困らない……ってことでしょ?」「でもさ、MVP取れば進路も楽って、ちょっと現金すぎない? 結局“いいとこで映えた奴が勝ち”って感じ、あるよね」「談合とかそういうの管理するの大変なんじゃない?」「それだけ、上層部も力を入れてるってことだろ。 アバター化して激務をこなしている人たちがいないとそれに支えられる俺たちの生活はままならないわけで。」 その言葉に、アレッタが「えっ、なにそれ、聞いてない~」とクッキーを落としかけた。 彼女もまた、分かっているのだ。これがただの遊びじゃないということを。


 自分たちの名前を見つけた瞬間―― リゲルは一瞬、深く息を飲んだ。


「……やったじゃん!」「……最初の5戦で2勝3敗だったんだから、ここまで巻き返せたの、すごくない?」 横でハクが、あっけらかんと笑う。「ギリだけどトップ10に残ってるし!」


 リゲルは、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。 けれど、その表情の奥には別の想いがあった。


 ――サダルが入る前、自分たちは2勝3敗だった。 あのときは、もうここまで届くなんて到底無理だと思っていた。


 確かに、6位に食い込んでいた。 けれど、同率のチームがいくつもいる。 たった一つ違えば、届かなかったかもしれない。


 同時に、感傷のようなものが胸をかすめた。 そんな中、すぐ隣でサダルが冷静に口を開いた。


「同じ11勝3敗でも、うちより上に配置されてるチームがある。 つまり、勝った相手や試合の内容まで評価されてるってことだね」


「……ってことは?」


「後半で代表に選ばれる上位4チームには、現状入ってない。 後半で上積みしなきゃ意味がない。調整と対策は必須」


 ――あっけらかんと喜ぶハク。冷静に現実を見るサダル。 そして、自分はまだ過去の不安を引きずっている。 それでも、この三人でここまで来た。


 淡々としたサダルの言葉に、ハクもリゲルも自然と背筋を伸ばした。


 掲示板の前。 ザビはランキングを一瞥しただけで、すぐに立ち去っていった。 誰もが、ひとり静かに去っていくザビの背中を、どこか息を詰めたように見送っていた。 誰も話しかけようとすらしない。その強さに対する、畏れのような空気。


 シャウラは、大人しそうな淡い紫髪の少女と親しげに話していたが、 次の瞬間、その手を払いのけて一人でどこかへ向かっていった。 (……悪い) そんな小さな声が、唇の内側でかすれた。


 ライサは、ちらちらとこちらを見てくる男子たちに露骨に嫌な顔をしていた。 シェラがその男子たちを一喝し、間に割って入る。


「見てんじゃないわよ。下がれっての」


 その横では、アレッタがのんきにおやつを取り出して、シェラに頭を小突かれていた。


「おやつは教室入ってからにしなさいって言ってるでしょ!」


 そんな光景が広がる中で―― リゲルは、もう一度ランキング表を見つめた。


 これが、今の自分たちの立ち位置。 並び立つ名前の中に、確かに“リゲルチーム”がある。 ここから先に進めるかどうかは――自分たち次第だ。



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