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【第二十三話『女子キャンプ』】④

お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。

    主人公のライバルチームのリーダー。

戦闘スタイルは①鞭②雷結界③詠唱魔法

    基本的に動かない中距離サポーター。

    長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。

    相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ

    精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。

幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。

    主人公のライバルチームのメンバー。

    戦闘スタイルは①大弓②卵の殻シェルター③位置置換分身

    アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的な遠距離型。

    高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。

    陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。

    口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。

破天荒:名前はシェラ。太陽牡羊座月双子座。

    戦闘スタイルは①爆発ハチェット②爆発ハンマー③リボルバーハルバード

    火薬魔法を手と足の噴射口から出してでたらめな動きで戦う近接型。

    主人公のライバルチームの3人目のメンバー。

    ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。

    性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。

    すさまじい運動神経を持っている。

    精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。


◆第八節:ツリーハウスと夜の寝顔(土曜21:00〜)


 夜の森は、思いのほか静かだった。


 小さな風が木の枝をくすぐる音と、遠くで虫が奏でる高低のリズムが、かすかに耳に届く。 湿り気を含んだ夜気が、頬を優しく撫でていく。木の香りと、かすかな草の匂い。昼とは違う、夜の森の深い匂い。


 キャンプ場の照明は最小限に抑えられていて、空にはくっきりと星が広がっていた。


 ツリーハウスのベランダに、アレッタが一人腰かけていた。月光を背に、頬に影を落としながら、手の中のぬいぐるみをゆっくりと撫でている。 その表情は、昼間の明るさとは違っていた。静けさに溶け込むような、神秘的な気配。


「……星、すっごく綺麗だね。こういうの、久しぶりかも」


 誰に話すでもなく、小さく呟く声に、遠くで揺れる葉音が応える。


 やがて、小屋の中から、ライサが顔を出した。髪をほどいて、肩にかかるままにしている。 目元には少し眠気がにじんでいて、いつもの凛とした雰囲気よりも、いくらか年相応に見えた。


「もう、寒くない? 外、けっこう冷えるわよ」


 その声には、どこか子供のような頼りなさがあった。強がるでもなく、優雅に振る舞うでもなく、ただ素直な言葉。


 アレッタは小さく笑い、ライサの隣にスペースを空ける。「ううん、大丈夫。ほら、星がこんなに綺麗なんだもん。ちょっとくらい寒くても……ね」


 二人はしばらく言葉を交わさずに、ただ空を見上げていた。 時おり、アレッタが吐く息が白くなる。ライサはその息に手をかざして、子どものように笑った。


 そして、やや遅れて、シェラが顔を出す。


 目元をこすりながら、小さなあくびを噛み殺している。その姿は、どこか不安そうでもあった。 彼女の視線は星空ではなく、アレッタとライサの姿をそっとなぞるように動いていた。


「……なにしてんの、ふたりとも。寝る時間じゃないの?」


 その言葉の奥には、ほんのわずかな寂しさが混じっていた。


 アレッタはふわりと立ち上がり、シェラの手を取って小屋の中へと導く。「ほらほら、じゃあ寝よっか。今日は、いっぱい遊んだし」


 中に入ると、ランタンの光が天井をやわらかく照らしていた。 木の床は少しだけ軋む音を立て、木の香りと布団の柔らかさが心をほぐす。


 布団の上に三人並んで横になると、あたりには自然と深い静けさが満ちていく。


 アレッタが抱いていたぬいぐるみを胸に収めたまま、シェラがその腕にそっとしがみつく。


「……あったかい……」


 その言葉に、アレッタはくすっと笑った。 ライサは軽くうつ伏せになり、手で自分の髪をそっと撫でるようにしていた。 その仕草はどこか、幼いころの安心儀式のようだった。


「ねえ……なんか、夜って、いつもより静かでさ……ちょっとだけ、変な感じ」


 ライサのその呟きに、シェラが目を閉じたまま答える。


「うん。なんか、言葉にできないような……変な、ドキドキ」


 アレッタは天井を見上げたまま、そっと目を細める。


「大丈夫。私たち、ちゃんと一緒にいるから」


 その声には、昼間よりも大人びた響きがあった。


 三人の寝息が、やがて静かなハーモニーを奏でていった。 外では、虫たちの声がまだ続いている。 木の上のツリーハウスは、夜の森に浮かぶ小さな灯火のように、そっと静かに揺れていた。◆第九節:朝の森とコーヒー(日曜7:00〜)


 朝の森は、まだ霧をまとっていた。 光が木々の間から差し込み、靄を淡く照らしている。 ツリーハウスの窓には、昨夜の名残のように小さな水滴がついていた。


 鳥のさえずりが遠くから聞こえる。ひんやりとした空気が頬をなで、肩までかかった毛布のあたたかさが、今の世界との境界だった。


 アレッタが先に目を覚ましていた。濃い桃色の寝間着の上に軽い羽織を纏い、まだ寝息を立てるふたりを見つめていた。 まるで森の中にいる妖精のように、凛として静かで、少しだけ大人びていた。


 ライサは毛布にくるまり、顔だけ出してぼんやりと天井を見上げている。 その髪は見事なまでにボサボサで、普段の整った姿からは想像できない。 それが、妙に可愛い。


「……朝……なのね……」 ライサが欠伸混じりにそう呟くと、アレッタが笑う。「おはよう、ライサ。すっごい寝癖だよ?」「……見ないで。今日の私はレアモンスターよ」


 最後に目を開けたのは、シェラだった。 不意に身を起こすと、少しきょろきょろして、アレッタの横にぴとっと寄ってきた。「ん……なんか、ちょっと寒い。……あったかいの、ある?」


「いま作るとこ。ちょっと待ってて!」


 アレッタは嬉しそうに台所へ向かい、小型のドリップセットに水を注いだ。 ガスコンロに火をつけ、金属のケトルがカン、と鳴る。 森の静けさの中に、わずかな火の音と湯が温まっていく音が混じった。


「じゃあ、私がコーヒー当番ね」 ライサが立ち上がり、まだ眠たげな目のまま、フィルターにコーヒー粉を詰め始める。


 その様子を見ていたシェラが、もじもじと指を組みながら、少しだけ首をかしげた。「……あ、あの、やっぱり私、紅茶にしようかな……」


 ライサは「えっ」と顔を上げた拍子に、手元がぶれて粉を少しこぼしてしまう。「ああっ、やっちゃった……ちょっと待って、拭くの取るから!」


 その慌てぶりに、アレッタは笑いをこらえて小さく頷いた。 慎重に湯を注いでいく――が、途中で注ぎすぎて、粉の層が崩れてしまう。


「うぐっ……なんか、ちょっと雑味っぽくなったかも……」「紅茶にする?」とアレッタが笑う。「い、いいの。せっかくやるって言ったし!」


 アレッタはそんなライサの手元をちらりと見て、ふふっと微笑んだ。「ライサってさ、完璧そうに見えて、実際ほんと大事なところではすごく丁寧だけど、どうでもいいところではドジっ子だよね……」


 その言葉に、ライサの頬が一気に赤く染まる。「な、なによそれ……! 朝から失礼ね……!」


 シェラが紅茶を両手で抱えながら、優しく口を挟む。「これくらい雑なの、普通よ。朝なんだし。……うん、私はやっぱり、紅茶の方が好き。」 ほんのり赤くなった頬を隠すように、そっとカップに口をつけた。


 香ばしいけど、ほんのり酸っぱい匂いが漂う中、アレッタは別のポットで自分の分を淹れ始めた。


 その間に、朝食の準備が始まる。


 木製の簡易キッチンの上には、洗いたてのレタスとミニトマトが山のように盛られる。 パリッと冷たいレタスの音、トマトの甘い匂い、指先で皮がはじける感触。 フライパンの上では、ベーコンがジュウッと音を立て、脂が弾ける。


 アレッタが手早く卵を割り、ふんわりとしたスクランブルエッグを作る。 トースターからは、香ばしい小麦の香りが漂い、少しだけ焼き目のついたトーストが顔をのぞかせる。


 バターを塗った瞬間、部屋中に甘いミルクの香りが広がった。 並べられた朝食は、まるでホテルのモーニングのようだった。 ミニトマトの赤、レタスの緑、卵の黄色、ベーコンの茶、トーストの金。 皿の上が朝の光で柔らかく照らされ、まるで絵画のような美しさだった。


 3人はツリーハウスの窓辺に腰かけて、湯気の立つ皿を前にそろって手を合わせる。「いただきます!」


 ライサはサラダを一口食べて、ぱっと顔を明るくする。「シャキシャキ……うわ、冷たくて甘い……ミニトマト、完熟してる……」


 アレッタはベーコンを口に入れた瞬間、目をぱちっと見開いて、頬いっぱいに幸せをにじませる。「う〜〜んっ、じゅわってした……! これこれ、朝のごほうびって感じ〜!」


 シェラはスクランブルエッグにフォークを入れ、ふんわりとした断面をじっと見つめてから、静かに口に運ぶ。 目を閉じて、ほっと息を吐く。「……ふわふわ……やさしい……」


 ライサはこっそり、濃すぎるアレッタのコーヒーを一口すすってむせる。「ぶっ……濃っっっっっ!! なにこれ、飲み物っていうか、魔法薬!?」


 アレッタは涼しい顔で「えー? でも、これが一番元気出るんだよ?」と微笑む。


 シェラはそのやりとりをじっと見ていたが、おずおずとアレッタのカップに手を伸ばし、小さなスプーンですくってほんの一滴だけ、そっと舐める。 次の瞬間、ぷるっと肩を震わせて「にっっっが……!」と小声でつぶやき、ぶんぶんと首を振った。「……だ、だめ。やっぱり私、コーヒーはおとなになってからにする……」 そう言って、両手で紅茶のカップをぎゅっと抱え直す。


「……うん、やっぱりこっちがいい。安心する……」


 朝の森に、3人の笑い声と、湯気の香りが静かに広がっていった。


◆第十節:別れと現実への帰還(日曜16:00)


 朝食のあと、3人は思い思いに時間を過ごした。 森の中の遊歩道を歩いて、小さな木の橋を渡ったり、草むらで形のいい石を拾って並べたり。 湿った土の匂いと、日差しに温められた草の香りが混ざり合って、鼻腔をくすぐる。 木漏れ日の光が木々の間を踊り、鳥のさえずりが空の奥から降ってくる。


 途中、風に揺れる枝を見て「リズムが合ってる」と言い出したアレッタが、即興で葉っぱのリズム遊びを始め、なぜか3人で拍子を取りながら歩いた。 乾いた葉が靴の下でシャラシャラと音を立て、そのたびにアレッタが声を上げてはしゃぐ。


 開けた場所では、木陰にレジャーシートを敷いて、寝転がったまま雲の形を指さし合ったり、空を見上げて動かない競争をしたり。 ライサが落ち葉の上に寝転がって「これは背中にいい」と言い出し、シェラも真似して無言で星の形を落ち葉に描いていた。 草のひんやりした感触と、肌に当たる風の微かなざらつきが、眠気を誘うほど心地よかった。


 虫を避けて走って逃げたあと、シェラが真顔で「やっぱり森は自然が多い」と名言のようなことを言って、しばらく3人で笑いが止まらなかった。 その笑い声すら、森に吸い込まれていくようで、耳に残る余韻はどこか甘かった。


 昼過ぎには、簡単な軽食を広げて遅めのランチ。 バターの香りがまだ残るパンをかじると、口の中に柔らかな甘さと塩気が広がる。 食べる前に誰ともなく始まった食材交換会で、ライサが持ってきたスナックがアレッタに好評で、シェラは一口だけ分けてもらった。 どこかのお菓子屋で買ったらしいクッキーがすぐに溶けてしまい、「次はちゃんとした入れ物に入れてこよう」とアレッタが反省していた。 そのクッキーは、噛むとほんのりバニラの香りが鼻に抜け、指先に残る甘い粉砂糖の感触が、子供のころの記憶をくすぐった。


 午後の森は、どこか少し寂しくて、それでも空気は澄んでいて。 鳥の鳴き声が遠くなり、葉の揺れる音がよりはっきりと耳に届く。 3人は小さな花を摘んで、それぞれのリュックにつけたり、最後に咲いていた一輪をそっと残して去ったりもした。 花の香りはかすかで、でも鼻を近づけると、胸の奥が少し温かくなるようだった。


 ツリーハウスに戻ったあとは、ゆっくりと後片付けを始めた。 敷いていたシートや毛布を丁寧にたたみ、洗い物を分担し、ほうきで床を掃く音がやけに静かに感じられた。 使った調理器具や皿はすべて乾かしてから布で拭き、コンロの周囲やテーブルの上も丁寧に拭き取る。 窓やドアの蝶番の汚れまで気づいたライサが、手ぬぐいでぎゅっと磨き始め、それにシェラもアレッタも続いた。 床板の隙間に入り込んだ細かな葉や砂も、指でつまんで取り除く。


 掃除を終えると、部屋の中に残る香りさえ、ほんのりと違っていた。 焚いたコーヒーの名残と、湿った木の匂いが、柔らかく混ざり合っていた。


 最後にゴミをひとつにまとめ、分別袋に詰めて、リュックのサイドポケットにぎゅうぎゅうに押し込んだ。 持ってきたときよりも確実に増えている荷物に、アレッタが「こんなに増えてたっけ?」と苦笑し、ライサが「あれこれ詰めた順番忘れてるだけよ」と言いながらも、なかなかチャックが閉まらない。 何度も座って押さえたり、順番を入れ替えたりして、ようやくなんとか収まったが、形はややいびつだった。


 シェラが三人分の荷物を見比べて、「帰るって、なんか不器用になるね」とつぶやき、誰も否定できなかった。


 ツリーハウスの中は、来たときよりもきれいになっていた。 空気も、少し澄んでいるように感じられた。


 ひと段落して、ふと気づけば、アレッタの姿がなかった。 あたりを見渡しても見つからない。「……ひよこ小屋じゃない?」とシェラが静かに言い、ライサが軽く頷いた。


 2人で見に行こうかとしたそのとき――風に揺れるカーテンの向こうから、かすかな羽音と鳥のさえずりが届いた。 そして、木の扉がゆっくりと開く。


 アレッタがそっと入ってきた。 その手には、小さなぬいぐるみのようなものが抱えられていて、表情はどこか名残惜しそうだった。


「……ばいばいしてきた。きっと、私より早起きな子たちだし……ちゃんと、起きてた」 その言葉に、ライサとシェラが何も言わずに頷く。


 少しの静寂のあと。 ライサがぽつりと、けれどごく自然な声で言った。「……また来ましょう」


 誰も反論しなかった。 むしろ、その一言だけで十分だった。 アレッタとシェラも、ゆっくりと、でも確かに頷いた。


 太陽が西へ傾き、森の色がゆっくりと変わっていく。 枝葉の影が少し長くなり、風の音が肌に冷たく感じられる頃―― 風が頬をなで、木の葉がさらさらと鳴り、土の上を踏みしめる感覚が足元に伝わってくる。


 3人は、もうひとつの場所へ帰るために、ツリーハウスのドアをゆっくりと閉じた。

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