【第二十三話『女子キャンプ』】②
お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。
主人公のライバルチームのリーダー。
戦闘スタイルは①鞭②雷結界③詠唱魔法
基本的に動かない中距離サポーター。
長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。
相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ
精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。
幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。
主人公のライバルチームのメンバー。
戦闘スタイルは①大弓②卵の殻シェルター③位置置換分身
アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的な遠距離型。
高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。
陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。
口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。
破天荒:名前はシェラ。太陽牡羊座月双子座。
戦闘スタイルは①爆発ハチェット②爆発ハンマー③リボルバーハルバード
火薬魔法を手と足の噴射口から出してでたらめな動きで戦う近接型。
主人公のライバルチームの3人目のメンバー。
ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。
性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。
すさまじい運動神経を持っている。
精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。
◆第四節:昼食と満腹(土曜13:00〜)
木漏れ日の中、焚き火の上では鉄製の大きなプレートがじりじりと音を立てていた。 もともとは串焼きを作る予定だったのだが、誰かさんが野菜を細かく切りすぎてしまったせいで、急遽メニューが変更された。 肉も野菜も、すべてまとめて炒めてしまえ――そんな軽い発想から始まった料理だったが、結果的にいろいろな美味しいものが詰まった豪勢な焼きそばに変わった。
バターが溶け、ジュウッという音とともに肉が焼けていく。 肉の香ばしい香りと、バターのまろやかな甘さが風に乗って漂い、自然と誰の口元にも笑みが浮かぶ。
「……これは、期待してしまうわね」 ライサがぽつりと呟いた。まだ膝を庇うようにして腰掛けていたが、その目はしっかりと焚き火を見つめている。
「焦がさないように、ちゃんと火加減見てなさいよね」 シェラが口調をとがらせながらも、手元のトングで肉を丁寧に裏返す。その所作は驚くほど繊細で、いつもの乱暴な振る舞いとはまるで別人のようだった。
「……ていうか、シェラ、めちゃくちゃ手際いいね」 アレッタが隣から覗き込みながら感心する。
「うるさい、焦げるっつーの。手ぇ出さないでよね」
けれど、その目元はどこか落ち着いていて、むしろ楽しんでいるようにも見えた。
シェラが一気に野菜を炒め、味噌と醤油の合わせ調味料を垂らすと、煙が立ち昇り、より濃厚な香りが空間を支配する。 甘辛いタレが焦げる匂いに、かすかに焦げたキャベツの匂いと炭の香りが交じり合い、まるで店の屋台にでも迷い込んだような感覚を呼び起こす。
「うわああ、これはやばい!」 アレッタが鼻をひくひくとさせながら、期待に目を輝かせた。
「そっちは焼きそばにしていい。肉は先に取っとけ」「はーい♪」
紙皿に盛られた焼きそば、串に刺されたままのジューシーな肉、素焼きのトマト――すべてが出来上がると、三人は囲炉裏の周りにしゃがみこむように座った。
その瞬間、山の風がそっと吹き抜けた。 木々の葉がさわさわと揺れ、どこか遠くで鳥の鳴く声が聞こえる。 小鳥のさえずりが、まるで昼食の香りに惹かれたかのように近くの枝々に集まり、木の間を飛び交っていた。 火の熱がゆるやかに肌を撫で、焦げた肉の匂いが鼻腔をくすぐる。 土と草の匂いが混ざり合い、午後の森全体が一皿の料理のように感じられた。
食事の始まりは、驚くほど静かだった。
カチャリ。 紙皿にフォークが当たる音だけが、風の中でひときわ大きく響く。
その静寂は、ただひとつの感想に変わった。
「……これは、想像以上に――いえ、驚くほど美味しいわ」 ライサが小声で呟き、次の瞬間には遠慮なく頬張っていた。
「やばっ、これ、ほんとにシェラが作ったの? なんか料亭の味するんだけど!」 アレッタも口いっぱいに頬張りながら叫ぶ。
「うるさいっつってんでしょうが! 黙って食べてなさいよ」
シェラはそう言いながらも、自分も同じように口元を小さくほころばせていた。
木々の間から覗く陽光が、午後の空気にじんわりと滲んでいく。 葉の匂い、炭の香り、焦げた肉の匂い、遠くで鳴く鳥の声。 すべてが、胸の奥にまで心地よく染み込んでいくようだった。
食後、アレッタはさっと袋を取り出し、手際よく紙皿や使用済みの箸、食べ残しを分別していく。 シェラも無言でそれに加わり、ごみを一つ一つ丁寧に包んでまとめる。 ライサは濡れた布で鉄板の表面をゆっくりと拭き上げながら、「外での食事にも礼儀は必要よ」と静かに言った。
その整った清潔感のある後片付けの様子に、自然の中でもどこか品位が漂っていた。
「……なんかさ、串焼きよりもこっちのほうが、結果的に美味しくてラッキーだったかも」 アレッタが最後にそう笑って言うと、他の二人も顔を見合わせ、穏やかに頷いた。
このひとときは、まるで世界が息を潜めて見守っているかのように、穏やかで、満ち足りていた。
◆第五節:午後の休息と秘密の遊び(土曜14:00〜)
昼食の片付けが終わると、三人はそれぞれ好きな場所へと散っていった。 焚き火の煙はまだ細く空へ伸びていたが、炭火の熱は穏やかになり、時折ぱちりと弾ける音だけが耳に届く。 木々の間から差し込む太陽はやわらかく、葉を通して散った光が地面に斑をつくる。空は青く澄みわたり、遠くで鳥がさえずっていた。少し甘く香ばしい煙の匂いが風に混ざり、昼食の余韻がまだ空気に漂っている。
アレッタは近くの木の根元にレジャーシートを広げ、その上に寝転がった。陽射しは葉に遮られ、木漏れ日の揺れる光が頬に触れるたび、うとうとと瞼が落ちる。「ふあー……おなかいっぱい……このまま寝ちゃいそう……」 彼女の横では、小さなトカゲが石の上でじっとしている。風が静かに吹き、葉のさざめきと鳥のさえずりが、まるで子守唄のように響いていた。 肌に当たる空気は乾いていて涼しく、日差しの温かさと絶妙なバランスを保っていた。
シェラは持参したマナ石をいじりながら、川辺の石の上に腰掛けていた。川の水は冷たく澄んでおり、そこに指を浸しながら、目を細めて流れを見つめている。 水面が光を反射して、葉の間から差し込む陽の光がきらきらと揺れ動いていた。「ね、知ってた? こういう森の川ってさ、夏は冷たくて、冬はあったかく感じるんだって」 いつの間にか近づいてきたアレッタが、石の上から身を乗り出してそう言った。「気温とのギャップで、そう感じるだけなんだけど……でも、なんか不思議でしょ?」 シェラは「ふーん」と相槌を打ちながら、アレッタの指先が水に触れた瞬間を横目で見た。
一方、ライサは木陰に陣取って、本を読み始めていた。表紙は金の装丁が施された魔術史の入門書で、彼女は時折ページに指を滑らせながら、何度も首をかしげてはまた読み進める。 そんな彼女の足元に、小鳥が一羽近づき、ひょいと落ちたパン屑をついばむ。 ライサは小さく微笑みながら、そっとパンの欠片をもうひとつ地面に落とした。 やがて鳥は、それをくわえると、軽く翼を震わせて飛び立っていった。
しばらくして、アレッタがむくりと起き上がり、二人のほうに駆け寄ってくる。「ねえねえ、秘密基地とか、作ってみない?」
「は?」とシェラが顔をしかめる。「子どもかっての……ま、でも、暇だし付き合ってやってもいいけど」
「面白そうね。枝とツタを使えば、それっぽいのは作れると思うわ」 ライサが本を閉じ、ゆるやかに立ち上がった。
三人は森の奥へと分け入り、小枝や枯葉、ツタを使って簡易な小屋のようなものを作り始めた。途中、アレッタが「ここはわたしの部屋!」「ここにカフェスペース作ろうよ!」と大はしゃぎし、シェラが「はしゃぎすぎ!壊れるだろが!」と怒鳴る声が森に響いた。
けれど、それすらも風に紛れて、どこか心地よい響きになっていた。
完成した“秘密基地”は、大人から見ればただの木の囲いにすぎないが、三人にとっては小さな冒険の拠点だった。 午後の陽が傾き始めるまで、彼女たちはそこでおしゃべりをしたり、落ち葉を集めたりして、無邪気な時間を過ごした。
この一日が、いつか彼女たちの記憶の中で、柔らかく光を放ち続けることを、まだ誰も知らなかった。
◆第六節:夕食準備と火の魔法(土曜17:00〜)
午後五時の森は、すでに夕方の色に染まりはじめていた。 木々の影は長く伸び、淡い金色の陽が差し込むたび、葉の縁が光を帯びる。 風は昼より少し冷たく、しかし穏やかで、炊き立ての飯盒からこぼれた湯気と、まだ残る昼の焚き火の炭の香りが交じりあって、しんとした空気に温かみを加えていた。
ライサは川辺から戻る途中、低く垂れた枝をくぐろうとした瞬間、ふわりと落ちてきた何かに肩を撫でられ――「ひゃああっ!?」 思わず、本気で悲鳴を上げてしまった。 驚いて振り払った袖には、小さな毛虫が一匹。「ぎゃああっ、アレッタあああっ! むし! 虫がっ!」
彼女の甲高い叫びに、少し遅れてアレッタの爆笑が響いた。「わ、わははっ、ライサさま、そんな声初めて聞いたかも〜!」
しかし、次の瞬間。「……下がってな」 シェラがさっと前に出て、腰のあたりに手を添えるような仕草をしたかと思うと、その手から放たれたごく微細な衝撃波が、毛虫をふわりと宙へ吹き飛ばした。「反射神経、良すぎでしょ……」とアレッタが呆れ顔で呟く。
そんな小騒動を経て、三人は夕食の支度に取りかかる。 空の色はゆっくりと茜に変わりつつあり、木立の向こうには小さな雲が、金と朱の縁取りを見せていた。 風はやや湿り気を帯びていて、森の奥からはかすかな水音と、どこか遠くの虫の声が届いてくる。 周囲の静寂は、焚き火の準備をする三人の足音や、木の枝を折る音にだけ染められていく。
アレッタは、どこからか拾ってきた松ぼっくりを手に持ち、火床に組んだ小枝の中に慎重に差し込んでいた。「これ、火付きがめっちゃいいんだよ。森の知恵ってやつ!」 そう言って、マッチを擦ると、一瞬で小さな炎が松ぼっくりに燃え移った。 やがてその火は乾いた枝にも伝い、焚き火が柔らかく音を立てはじめる。
一方、シェラは薪を手にしつつ、地面に半蹲みになって呟いた。「魔法のほうが早いんだけどな……」 そして、誰に止められるでもなく、指先からほんの少しだけ火花を生み出してみせる。 ……が。「待てやシェラァ!!!」 アレッタとライサの声が重なって響いた。「爆発系魔法で火つけようとすんな! 燃えるっていうか、吹っ飛ぶから!」「今ここで大爆発したら、テントも荷物も夕飯も全部パーよっ!」
シェラは肩をすくめて、「はいはい」と答えた。「じゃあ、普通に薪くべてくるよ」 彼女の背中が少し不服そうに見えたのは、気のせいではなかった。
やがて火が安定してくると、空気は再び静かになった。 ぱちぱちと薪がはぜる音、わずかに立ちのぼる煙の香ばしさ。 火の熱が顔にほんのり届く。 その火のまわりには、焚き火特有の、言葉を選ばせる沈黙があった。 けれど、その沈黙すらも、三人には心地よいものだった。




