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【第二十三話『女子キャンプ』】①

お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。

    主人公のライバルチームのリーダー。

戦闘スタイルは①鞭②雷結界③詠唱魔法

    基本的に動かない中距離サポーター。

    長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。

    相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ

    精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。

幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。

    主人公のライバルチームのメンバー。

    戦闘スタイルは①大弓②卵の殻シェルター③位置置換分身

    アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的な遠距離型。

    高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。

    陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。

    口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。

破天荒:名前はシェラ。太陽牡羊座月双子座。

    戦闘スタイルは①爆発ハチェット②爆発ハンマー③リボルバーハルバード

    火薬魔法を手と足の噴射口から出してでたらめな動きで戦う近接型。

    主人公のライバルチームの3人目のメンバー。

    ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。

    性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。

    すさまじい運動神経を持っている。

    精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。


◆日曜日のぴーちゃん


目覚ましの音よりも先に、眩しいくらいの光がカーテンの隙間から差し込んでいた。

風はぬるく、気温はちょうどよく、空気には、草の匂いと、ほんのり甘い湿気が混ざっていた。


リゲルがまどろみの中で目をこすると――


「起きたー? 今日はぜったい楽しいことある日だよっ!」


空中に、鮮やかなピンク色の羽根がふわりと弾ける。

その中央に、日曜日のぴーちゃんが両手を腰に当てて立っていた。


きらきらとした目。どこか小悪魔的な笑み。

頬にはうっすらと紅が差して見える。


「快晴、ほぼ無風、気温も完璧。おでかけ指数、超・最・高~!

これで出かけないとか、人生の無駄づかいだよ?」


「……おはよう、ぴーちゃん」


「おっそーい。今日だけでかわいい子が何人、登場すると思ってるの?

リゲルもちゃんと準備しなきゃ!」


ぴーちゃんはくるくると回りながら、羽根を舞わせる。

桃色のきらめきが部屋の空気を明るく塗り替えていくようだった。


「昨日は、ライサちゃん、すでに髪巻いてたよ?

アレッタちゃんはお弁当詰めてたし、シェラちゃんは昨日から寝袋担いでたし」


「……女子チーム、今日はキャンプか」


「そうだよー。昨日は森林公園のツリーハウス貸し切りで、

かわいい子だけの秘密基地ごっこしたんだよ。

ボクも行きたかったな~。でも空飛ぶ孔雀って、虫にめっちゃ狙われるからやめとくね」


ぴーちゃんは、ぷいと顔をそむける。

ちょっと拗ねたような仕草が、子どもっぽいようでいて、どこか計算高い。


「ねえねえ、リゲルはどこ行くの? キャンプ? 森? 湖? まさか川遊び? お昼寝?」


リゲルが口を開こうとすると、ぴーちゃんは一瞬だけ目を細めて、にやりと笑った。


「……あっ、わかっちゃった♪」


「……何が」


「麻・雀。でしょ?」


「……」


「ハクくんとサダルくんと一緒に、ゲームセンターで――でしょ?」


まるで“見えてました”と言わんばかりの顔。


「……なんで知ってるんだよ」


「日曜ぴーちゃん、情報通なの。

かわいい子たちが森でお昼寝してる間に、男子3人はこっそり麻雀。

ふーん。ふーんふーん。いいんじゃない? べつに? 悪くないと思うよ?」


リゲルは少しだけ口をつぐむ。

楽しみなはずなのに、少しだけ敗北感がにじんでいた。


「ま、今日は“女の子回”ってことで。出番は、お・あ・ず・け。」


「……」


「だからこそ、リゲルはリゲルらしく、しっかり“観察者”やってきなよ」


ぴーちゃんが小さな羽根をすっと伸ばし、リゲルの頬を軽く撫でる。


「……がんばりすぎないで。

今日だけは、“誰かの楽しい”を、見守る役でもいいじゃん?」


その声は、どこかいつもより静かで――

けれど、やっぱり最後には、おしゃまな笑みが浮かんでいた。


「ま、でも……勝ったら、ちょっとくらい褒めてあげてもいいけどね?

“ごほうび”の精霊だし?」


そう言って、ぴーちゃんは満足そうに、

桃色の羽根をぱたぱたと揺らしながら消えていった。



◆第一節:出発と再構築の朝(土曜9:00〜)


 週末の朝、学園都市の女子寮前には、まだ少し眠たげな空気が残っていた。 天気は快晴。昨夜の雨がすっかり乾き、空は澄み渡っている。 遠くの街路樹がそよぎ、葉擦れの音が耳をくすぐる。 石畳の隙間からのぞく青草の匂いに混じって、パン屋の焼きたての香りが風に乗って流れてきた。 通りの奥では猫があくびをしてのびをし、どこかの部屋から魔導ヒーターのかすかな残り香が漂ってくる。 そのすべてが、今日が特別な一日になることを、ほんのりと告げていた。 そんな静けさの中、最初に現れたのはアレッタだった。


「おっはよーっ!」


 ひときわ大きな声とともに、リュックを背負ったアレッタが軽やかにスキップしてくる。 首からは、見慣れたニワトリのぬいぐるみ“ぷよっこ”がぶら下がっていた。手作り感満載のそのぬいぐるみは、彼女の旅の必需品らしい。


「ねえねえ、やっぱり寝袋の横にはこの子がいないとさ〜……落ち着かなくて寝れないの」 と笑うアレッタに、誰も止める者はいなかった。


 続いてやってきたのは、シェラだった。


「おっそーい! 何時集合だと思ってんのよ、まったく!」


 と言いながらも、手荷物はたったひとつ。魔法トランク。黒い金属のケースに爆発マークのようなステッカーが貼ってある。


「え? これで全部? ……まさか中身、爆薬とかじゃないよね?」「バッッカじゃないの!? そんなもん、外に持ち出すわけないでしょ」


 最後に現れたのは、ライサ。 白地に上品な薄紫を織り込んだ、上質そうなカットソーとワイドパンツ。風通しがよく、それでいてシルエットは完璧。 靴は草の露が映える、薄いベージュの防水パンプス。日常で彼女が着ている制服とはまた違う、柔らかくて女性らしい気配がそこにはあった。


「……ふふ。今日は、誰にも見られないから」


 ぽつりと呟くその横顔に、アレッタは目を見張った。「えっ、えっ、ライサ、今日めっちゃオシャレ! なんか……すごく、あったかそうっていうか……」「ありがとう。でも、ほんとはちょっと……浮かれてるだけよ。こういうの、あんまり慣れてないの」


 その言葉には、学校で“孤高の女王”と呼ばれる少女の、素顔が少しだけ滲んでいた。


 そして3人は顔を見合わせて、ほぼ同時に笑う。


 光が差し込み、石畳がまばゆくきらめく。 遠くで鳥が鳴いた。パン、と張りのある音で羽ばたいたのはカラスかハトか――その瞬間、3人の背筋がぴんと伸びる。 朝の涼しさの中に、冒険の熱がじわじわと滲んでいく。「よし、出発しよっか!」


 アレッタの掛け声で、キャンプの冒険が始まった。 朝の光が差し込む中、3人の影がゆっくりと街の外へと伸びていく。


◆第二節:森林公園の空気(土曜10:00〜)


 学園都市から郊外へ伸びる緩やかな坂道を抜け、魔導バスが森のふもとに差し掛かると、車内の空気がふっと静まり返った。 窓の外には、まるで絵画のような風景が広がっていた。


 濃緑の葉が枝いっぱいに茂る針葉樹林。その合間を縫うように光が差し込み、草の上にはまだ朝露がきらめいている。 森の奥からは、小さな鳥のさえずりや、遠くの水音がかすかに聞こえてきた。


 バスを降りた瞬間、空気の温度ががらりと変わる。 都会の人工的な温度ではない、肌をすべるような軽やかさがあった。 鼻をくすぐるのは、湿り気を含んだ土と樹皮の香り、そして野花のほのかな甘さ。 足元に広がる柔らかな腐葉土の感触。踏みしめるたびに、わずかにしっとりと沈む。


「……んーっ! やっぱ自然って、いいなあ」 アレッタが両腕を大きく伸ばし、背中をそらせて深呼吸する。 その拍子に、首からぶらさげたニワトリのぬいぐるみが、ぽよん、と揺れた。


「さっそく寄り道しそうな顔してるわね、あなた」 ライサが肩をすくめるが、どこか優しい声だった。 その足元では、彼女の防水パンプスが、露に濡れた草を静かに押し分けている。


 シェラは無言で周囲を見渡していたが、不意に足を止めると、地面の小さな流れに目を留めた。 石の隙間から湧き出る水が、透明なリボンのように細く流れている。


「あ、これね」 と、アレッタがさっと近づき、しゃがみこむ。「これ、夏は冷たくて、冬はぬるいんだよ〜。地中の温度って安定してるからさ。……なんで知ってるかって? ひみつ♪」


「地熱とか……そういうやつ?」 ライサが少しだけ眉を上げて問いかける。


「そうそう、それそれ。まあ、詳しい理屈は知らないけどねっ」


 シェラがやや呆れ顔で口を開く。「へぇー、変なとこだけ詳しいのね、ほんと」


「失礼なっ」


 ふと風が吹き抜けた。 高くそびえる木々が、さわさわと葉を揺らす。 日の光がすこしだけ揺らめいて、3人の影が地面にゆっくり伸びる。


 笑い声が、森の入り口にふわりと溶けていった。 3人の足取りは軽く、けれど確かに、これから始まる週末の“冒険”へと歩みを進めていた。


 森の小道に足を踏み入れると、空気の密度がさらに変わった。 木々が生み出す緑の天蓋が、まるで音を包み込むように空間を静かに遮る。 聞こえるのは自分たちの足音と、時折どこかで枝が折れる乾いた音だけ。


 風が通り抜けると、枝の間から木漏れ日がスポットライトのように差し込んでくる。 アレッタはそのたびに「わっ、当たった!」と声を上げ、ぴょんぴょんと跳ねていた。


 シェラは何かを探るような目つきで辺りを見渡し、落ちていた木の実をつまんで匂いを嗅ぐ。「食えるかどうかは、帰るまでに判定してやる」 などと呟き、アレッタに「おなか壊すよ?」と突っ込まれる。


 ライサは、時折立ち止まって周囲の風景を見つめていた。 整いすぎていない自然の美しさ。土の匂い、葉の音、湿った空気に満ちた空間。 そのすべてが、彼女の中に静かに染み込んでいくようだった。


 ――ここでは、誰も自分に“視線”を向けてこない。 そんなことすら、忘れてしまいそうになるくらいに。


◆第三節:設営とトラブル(土曜11:00〜)


 陽は高くなり始めていたが、森の中はまだひんやりとしていた。 空気には湿り気が残り、踏みしめた土からは微かに甘い匂いが立ち上る。木々の葉をすり抜けた光が地面に斑模様の影を落とし、風が通り過ぎるたび、ほんのり樹液の香りが鼻先をかすめた。 朝露の残る草を踏むたびに、靴の裏からしっとりとした冷たさが伝わってくる。遠くで鳥がさえずり、どこかで木の枝がきしむ音が風に乗って届いた。


 指定されたキャンプサイトは、天然の木立に囲まれた開けた空間だった。地面はしっかりと踏み固められており、中央には囲炉裏石が組まれている。端には木材で組まれたツリーハウスの骨組みがあり、仕上げは自分たちで行う仕様だ。 その光景は、まるで自然の中にぽつりと残された過去の痕跡のようで、静かな敬意を抱かせるものだった。


「さーて、やりますかーっ!」 アレッタが両手を上げて声を張る。


「あなたの“やる”って、半分は寄り道する意味でしょ?」 ライサが冷ややかに指をさす。


「はいはい、ちゃんと真面目にやりますってばー」 そう言いながらアレッタはロープを引きずって移動していくが、途中で木の根元に咲いた小さな花に気を取られて、ぴたりと止まった。


 一方、シェラは無言で魔法トランクを開き、工具や組立器具をきれいに並べていた。「とりあえず、支柱を固定する。そこの杭、持って」


「あ、はいはーい」 アレッタが駆け寄ろうとした瞬間――「……あぶなっ!」 ライサが素早く手を伸ばした。 アレッタは地面の出っ張った石に足を取られ、バランスを崩すが、なんとか踏みとどまる。


「ほんとに、ちゃんと足元見て……」「ご、ごめんて〜〜」


 ライサはその横で説明書を片手に、テントの組み立て図を凝視していた。 彼女の視線は真剣そのもので、ペグの長さや角度を何度も確認しては、眉間にしわを寄せている。


「……これは、Aのポールを……いや、先にCを……」 その瞬間、ペグを打とうとした手が滑り――「きゃっ……!」 小さな悲鳴とともに、ライサが膝をついて倒れ込む。


「大丈夫!? ライサ!」 アレッタがすぐさま駆け寄った。


「……っ、だ、大丈夫よ。ちょっと足をひねっただけ……ってわけじゃないけど、見てなさい」


 意地を張りながら立ち上がるライサ。制服の膝にはうっすらと土が付き、彼女はそれを払いながらも、誰にも見られていないかのように目を逸らした。


 そのころ―― シェラは、調理器具の隣に並べた野菜を黙々と切っていた。 光を帯びた魔法包丁が彼女の手の中でリズミカルに動き、トントントンと乾いた音が森の静寂にやさしく響く。


 だが、まな板の上に並ぶピーマン、パプリカ、玉ねぎは、あまりに細かく切り刻まれすぎていた。


「ちょっと! それ串に刺す用だったんだけど!? そんな細かく切ったら刺せないでしょ!」 ライサが振り返って叫ぶ。


「え? えっ、そっち? じゃあ何用なの?」「串焼きよ、串焼き! 丸くて大きいままじゃないと意味がないの!」


 短い沈黙が落ちる。


「……じゃあ全部、焼きそばにしよっか♪」 アレッタが笑顔で提案すると、場にいた全員が、しばらくしてから苦笑してうなずいた。


 午前の陽が枝の影を伸ばし、虫たちの羽音が聞こえ始める。 少しずつ、息が合ってきたような気がした。

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