【第二十一話『甘いお菓子とミステリー』】⑤
主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。
戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根
戦術家だが感情に流されやすい。
この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。
今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。
3人目の仲間に天才サポーターのサダルが見つかった!現在チームは連勝中
親友:現在スランプ中
名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。
戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身
知らない物の値段を当てる特技がある。
裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。
仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。
戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成
リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。
万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。
最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。
あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。
一度リゲルの誘いを拒絶した。
お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。
主人公のライバルチームのリーダー。
防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。
長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。
相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ
精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。
幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。
主人公のライバルチームのメンバー。
アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的。
武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。
高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。
陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。
口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。
破天荒:ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。
名前は、シェラ。太陽牡羊座月双子座。
主人公のライバルチームの3人目のメンバー。
性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。
すさまじい運動神経を持っている。
精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。
通常時は、爆発ハンマーと爆発ハチェットで戦う。
本気になると、両手持ちのリボルバーハルバードになる。
◆室内
サダルが拾い上げた革のバインダーは、外装こそ擦れて古びていたが、手に取った瞬間、どこか“熱”のようなものがこもっている気がした。
中の紙は、魔力防護のおかげでほとんど劣化しておらず、わずかに粉のような魔素の匂いが立ちのぼってくる。
それは、封じられていた時間が、少しずつ空気に溶け出すような香りだった。
開くと、硬質な紙に整った筆跡で綴られた数ページのメモが挟まっていた。
ペン先の強弱や、文字の角の鋭さから、書いた人物の集中と熱量が伝わってくる。
「これ……日誌かも」
ライサがそっと覗き込む。
静けさの中、紙がめくられる音が、部屋の空気に小さく響いた。
そこに記されていたのは、ある世代の記録だった。
――校内選抜、一次通過。
――学園都市十二校代表戦、準決勝進出。
――特別専門学校との統合選抜戦、決勝勝利。
――全勝優勝。
「……これって……」
アレッタの声が、わずかに震えを帯びていた。
その感情は、興奮というより、“胸の奥に何かが届いた”ときのものに近かった。
「十年以上前の記録だ。でも、確かにここにある」
サダルがページをめくりながら言う。
その指先が少し湿っているのは、部屋に残る乾いた空気のせいだろうか、それとも別の――
メモには、勝利の内容だけでなく、試合の感想、訓練中の工夫、連携の記録、そして「使えるようになった魔術」や「自分の弱点」などが、驚くほど素直に書き込まれていた。
手のひらほどの紙に綴られたそれらは、どれもが一対一の記録というより、“未来の誰かへ宛てた手紙”のように見えた。
最後のページには、メンバーの名がイニシャルで記されていた。
A・T・G・C・L・V・L・S・S・C・A・P
12人分の記号が、迷いなく並んでいる。
「これ……まさか」
ハクが声を落とす。
「12人。名前は伏せてるけど……」
リゲルが言いながら、自然と天井を見上げる。
壁に残された結界魔法の痕跡、円形のテーブルとソファの配置、くすんだティーカップの数、書棚に差し込まれた手記。
古い布張りの椅子が、沈み込むときにわずかに軋む。
そこには確かに、“誰かと誰かがここにいた”という記憶の痕跡が染みついていた。
照明の加減か、天井に描かれた結界の模様が、まるで呼吸しているように柔らかく波打って見える。
沈黙の中に、自分の鼓動と、仲間たちの気配だけが穏やかに溶けていた。
「この部屋……あの時代、本当に頂点まで行ったチームが、ここを拠点にしてたってことか」
ライサの声には、誇りと、わずかな畏れが混ざっていた。
「俺たちと同じ、学園都市の子どもたち。だけど、あそこまで辿り着いた人たち」
サダルの指が、記録の上をそっとなぞる。
「……同じ制服、同じ校舎。だけど、距離を感じる。届きそうで、届かない」
その空気を破ったのは、アレッタの声だった。
「でもさ……その道筋、今ここに繋がってるってことだよね」
「うん。もしこの部屋に入る資格があるとしたら――」
アレッタは、真っ直ぐに言った。
「私たちは、“その続きを選ばれた”ってことじゃない?」
「偶然……にしては、出来すぎてる」
シェラがソファに沈みながら、ぽつりとつぶやく。
「でも、偶然でも構わない。
俺は……ここに来れてよかったって思う」
リゲルが、やわらかく言った。
それは“目標を見つけた”ときの声ではなかった。
むしろ、“すでに目標は示されていた”ことに気づいた者の声だった。
六人は、それぞれの居場所を見つけるように、部屋の中で一歩だけ深く腰を落とした。
革張りのソファの匂い、昔の書棚から漂う紙の香り、そしてどこかに染みついた淡いミントの芳香――
それらが、過去と未来をひとつの時間に繋ぎとめていた。
この場所は、まだ正式に“自分たちの部屋”ではない。
サダルがこのあと、教員に報告する予定だ。
学校には他にも空き部屋はあるらしい。けれど、この一室だけは、今のところ“保留”という扱いになっている。
それでも、誰も立ち上がらなかった。
ここが、ただの余った部屋だとは思えなかったからだ。
まるで、そう遠くない未来――自分たちがこの場所を本当に必要とする日が来ると、すでに決まっているかのように。
そして、誰からともなく自然と視線が交わった。
この部屋のかつての持ち主たちがそうしたように――言葉ではなく、意思を確認する視線だった。
かすかに沈んだ照明の中、天井の魔法結界が静かに呼応し、柔らかな光を返す。
まるで、かつての“彼ら”が、いまの六人にそっと背中を預けてくるように。
◆エピローグ
長い時間が過ぎたような感覚だったが、実際には、まだ陽が完全に落ちる前だった。
訓練棟の外廊下に戻った十二人――ATFCLVLSSCAPは、それぞれ一度だけ、開け放たれた扉の奥を振り返った。
「……ねえ、これって、使っちゃってもよくない?」
一番に言ったのは、アレッタだった。
「だって、あんなにきれいに残ってて……鍵も開いたし、もう私たちの部屋ってことで……」
「……それ、ちょっとまずいと思う」
リゲルが苦笑まじりに言う。
「正式な記録があるかもしれないし、勝手に使ったら、あとで面倒なことになるかも」
「じゃあ、報告だけはしとこうか」
サダルが肩を回しながら言った。
「こんな部屋見つけました、って。それで特に用途がないなら、申請すればいい。正式に使うために」
その日のうちに、サダルは訓練棟の管理教員に報告を行った。
教員は、やや怪訝そうに眉をひそめたが、詳しい場所と状況を聞くうちに、ふっと肩をすくめる。
「……ああ、あの辺か。あそこは構造的に手が入れづらくてね。使ってない部屋、けっこうあるんだ。
記録にも用途の記載はないし……正式に“部室”とするなら、生徒会か施設管理課に申請してくれ。保留にはしておくよ」
「ありがとうございます」
六人――いや、十二人は、そろって頭を下げた。
訓練棟を出たとき、あたりはすっかり夕闇に沈みかけていた。
空には、茜と藍がゆるやかに交わり、地上の建物の影を深く染めていく。
けれど、足取りは不思議と軽かった。
「自分たちの場所」ができたわけではない。
ただ、誰かが遺した場所に、たしかに触れた。
あの部屋に漂っていた、古い本革と少し乾いた紙の匂い。
微かな香のように残る、魔力の焦げ跡のような痕跡。
薄暗い照明の下にあった円卓と、貼りっぱなしの戦略マップ。
それでもそこには、不思議と温もりがあった。
誰かがそこにいて、考え、笑い、悔しがった痕跡――「痕」が、確かに残っていた。
それだけで、胸のどこかに火が灯ったような感覚があった。
夕暮れの風のなか、誰かが言った。
「……あの部屋、また行こうね」
「申請が通ったら、ちゃんとみんなで」
「いや、申請が通る前でも、たぶん行くことになると思う」
リゲルが、夜の空気を見つめながら、ぽつりとこぼす。
「……なんとなくだけど。これから先、あの場所が必要になることが、きっとあるって気がするんだ」
誰も否定しなかった。
それはただの予感――けれど、妙に確かな手応えを伴った予感だった。
誰かが道に迷ったとき。
誰かが傷ついたとき。
あるいは、十二人がほんとうに「同じ場所に立った」と感じるとき。
きっと、またあの場所に戻ってくる。
それは、未来に向かって伸びる伏線のように、心の奥に静かに残っていた。
やがて、正門の明かりが灯り始めた。
六人は、校舎前の広場で自然と足を止める。
「じゃあ、また明日ね」
ライサがスカートの裾を軽く揺らして、寮の方向へ歩き出す。
「うん。また明日!」
アレッタが彼女を追うように、弾むような足取りで続く。
「私は資料整理してから寝る。今夜、ちょっと考えたいことがあるんだ」
サダルは端末を開きながら、少し遠い建物を見やった。
「俺は……風呂入って寝るだけかな」
ハクは手を振りながら、笑ってみせる。
「……じゃあ、また明日」
リゲルが小さく言うと、シェラは少しだけ目を細めて、
「早く使えるようになるといいわね」とだけ返し、踵を返す。
それぞれの寮に向かって、六つの影がばらばらに歩き出す。
空にはまだ、夕暮れの名残がわずかに残っていた。
けれど、それが消えてしまっても――あの部屋の記憶だけは、心の奥に、確かに灯っていた。
◆翌日
サダルが教員から受け取った正式な返答は、曖昧で、けれど含みを持ったものだった。
「当該の部屋について、旧記録には記載がなく、現時点での使用予定も確認されていない。
ただし、用途が不明なため、恒常的な使用は現段階では認められない。扱いは保留とする」
「……要するに、今すぐ使うのはダメってことか」
ハクが肩をすくめる。
「でも、取り壊す予定も、別の用途もないってことでもある」
サダルが補足するように言う。
少し沈黙があって、アレッタがぽつりとつぶやいた。
「なんか……残念。あそこ、ちょっと落ち着くのに」
「私たちの部屋、って感じしたのにね」
ライサが微笑む。
「違うよ。まだ、私たちのじゃない」
リゲルがゆっくりと首を振る。
「たぶん、あの部屋は……“誰かのものだった”んだ。すごく昔に、ここで戦った誰かの」
「……あのポスターと、ティーカップの持ち主か」
シェラがぽつりとこぼす。
「勝手に使ったら、怒られるかな」
アレッタが苦笑すると、サダルが静かに言った。
「怒られはしないと思う。けど、ちゃんと“理由”がないと……部屋の方から拒まれるかもしれない」
部屋の方から――
その言葉に、誰も異を唱えなかった。
必要なのは、居心地ではなく、理由。
その部屋で過ごすに足る、自分たちだけの「理由」。
それはまだ手にしていないけれど――きっと、手に入れる日が来る。
「……でも、なんとなく思うんだ」
リゲルがぽつりと前を見て言う。
「たぶん、あの部屋を“また使う日”が来る」
「それは、“借りる”んじゃなくて、“託される”ってことだよね」
ライサがふっと笑って言う。
誰かの記憶が残る場所。
誰かの誇りが息づいた空間。
それが過去ではなく、すぐ隣の時間にあるものとして感じられた。
“今”ではない。けれど――そう遠くない“未来”に。




