【第二十一話『甘いお菓子とミステリー』】④
主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。
戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根
戦術家だが感情に流されやすい。
この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。
今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。
3人目の仲間に天才サポーターのサダルが見つかった!現在チームは連勝中
親友:現在スランプ中
名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。
戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身
知らない物の値段を当てる特技がある。
裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。
仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。
戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成
リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。
万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。
最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。
あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。
一度リゲルの誘いを拒絶した。
お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。
主人公のライバルチームのリーダー。
防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。
長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。
相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ
精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。
幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。
主人公のライバルチームのメンバー。
アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的。
武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。
高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。
陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。
口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。
破天荒:ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。
名前は、シェラ。太陽牡羊座月双子座。
主人公のライバルチームの3人目のメンバー。
性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。
すさまじい運動神経を持っている。
精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。
通常時は、爆発ハンマーと爆発ハチェットで戦う。
本気になると、両手持ちのリボルバーハルバードになる。
◆ 解決
そこから先は、言ってしまえば――作業だった。
けれど、それは決して単調でも、退屈でもなかった。
夕方の光はさらに傾き、校舎の輪郭が細く長く地面に伸びていた。
訓練棟のまわりには、陽が落ちる直前の、ひりつくような静けさが漂っている。
風は止み、すべての音がいったん吸い込まれ、微かに反響してから消えた。
遠くで誰かが窓を閉める音、草を踏む足音――どれもやけに鮮明だった。
空気は昼間より冷えていて、肌にまとわりつく湿気がある。
草の根のにおい、濡れたコンクリート、制服の繊維が擦れる音――
すべてが、どこか「外」と「内」のあわいに触れていた。
「“占いは信じすぎるな、でも忘れすぎるな”……なんか、ちょっと皮肉だね」
ライサの呟きが、案内板をなぞるように耳に残った。
六人は星図を囲んだまま校舎の配置と照らし合わせるが、図面にはラベルがなかった。
そこでライサが言う。
「ねえ、一度、建物の外を見てみよう? サダルが言ってた、壁の記号……惑星のマークかも」
「うん、それって、もしかして……」
「手分けして確認しよう。対応が分かれば、月の位置も――」
サダルの声にうなずき、六人は各方向へと散っていった。
やがて、色あせた木製のプレートに、風化した記号が見つかっていく。
太陽、火星、水星、金星、土星、海王星……
占星術の古いマークが、確かに残されていた。
「こっちは金星、職員棟の裏!」
「火星は図書棟の横!」
「土星は購買の隣にあったよ!」
声が交差し、六人は再び星図のもとに集まった。
「……ここが太陽なら、月はその対角線上」
サダルが指を滑らせ、リゲルが指さす。
「あの掲示板……」
訓練棟の外れに立つ、古びた木の案内板。
近づいてみると、確かに――
消えかけた月のマークが、そこに残されていた。
丸の下に、かすかな弧。
風雨で剥げたペンキが、沈黙の中に意味を宿していた。
「……見て、ここ」
ライサが指をなぞる。微かに震えたその指先に、
六人の視線が自然と集まった。
木板の手触り。
ざらついた木目、指先に残る古い時間の感触。
リゲルの指の腹に、ぬるりとした木の記憶がまとわりつく。
その左下。
確かに、月の記号があった。沈んだような、やさしい弧。
短い沈黙。だが、それは空白ではなかった。
空気の密度が変わり、背中や喉にまで、期待の温度が届いてくる。
誰かが動くたび、空気がさざめく。
その看板を留めていたのは、錆びたプラスネジだった。
「これ……外せば、何か出てくるかも」
だが、誰もすぐには手を出さなかった。
その沈黙には、神聖な“間”があった。
「でも、勝手に外すわけにはいかないよね……」
アレッタの不安そうな声に、ライサが小さく頷き、小走りで訓練棟を離れた。
数分後、戻ってきた彼女の手には工具箱と申請書。
胸ポケットには、教員のサイン。
「交渉成立。調査目的なら、って」
リゲルが工具箱を受け取った。
湿ったコンクリートに膝をつき、ドライバーを構える。
だが、最初のネジは空回りした。
「……あれ?」
「緊張してる?」
「……少しだけ」
角度を変えて――ウィーン。
ねじが、音を立てて回る。
その音は、不思議なほど耳に残った。
二つ目。三つ目。
そのたびに、誰もが呼吸を忘れる。
四つ目のネジが抜けた。
――カクン。
看板の右下が、わずかに浮いた。
誰かの心臓が、跳ねた気がした。
リゲルがそっと板を持ち上げる。
軋む音はなかった。ただ、静かに――開いた。
その内側には、銀色の鍵があった。
くぼみにぴたりと嵌まり、まるで眠っているように。
磨かれた金属は、光を反射せず、沈んだ月のように、静かにそこにあった。
「……やっぱり、本物だ」
アレッタが呟いた。
リゲルが、それをそっと摘みあげた。
冷たい金属の感触が、掌を緊張で包む。
「鍵は見つけた。でも……」
「……鍵穴は、どこだ?」
全員の視線が、再び星図に集まる。
月は保管場所だった。
ならば、開くのは――
「天王星……」
ライサの指が止まり、視線が吸い寄せられる。
六人の誰もが知る建物の名だった。
「訓練棟……」
サダルが言う。
誰かが息を吸ったが、言葉にはならなかった。
「……結局、またあそこに戻るんだね」
ライサが言い、微かに笑った。
その笑みに、諦めと敬意が、かすかに滲んでいた。
「外に出たと思ってたのに、ずっと内側を回ってただけだったなんて……」
アレッタが、ぽそっとこぼす。
「でも、それが“軌道”ってやつかもな」
サダルのひと言に、なぜか六人全員の顔に、同時に笑みが浮かんだ。
◆開錠
訓練棟の廊下を曲がり、さらにその奥――使われていないエリアの突き当たりまで来ると、空気の色がわずかに変わった。
照明はまだ生きていたが、明るさは弱く、壁際には古い掲示物の剥がれた跡が残っていた。
「……こっちって、普段ぜんぜん使ってないよね」
アレッタが声を落として言う。
「うん。このあたり、誰も掃除当番とか回ってこないんだよな」
ハクが言いながら、立ち止まる。
「……あれだ。あの倉庫。前に一回だけ入ったことある」
指差されたのは、鉄製の重たい扉。かつて物資を保管していた名残か、横には擦れかけたプレートで「予備備品室」とだけ書かれていた。
「でもな……確かにこの外見のわりに、中が妙に狭かったんだよ。広そうに見えるのに、棚がすぐ目の前にあってさ。
その時は気にしなかったけど、今考えたら……何か隠されてる感じがする」
「……じゃあ、あの扉の向こうか」
リゲルが静かに銀色の鍵を取り出す。
倉庫の隣の壁には、目立たないドアがあった。
一見すると非常口のようにも見えるが、ノブはなく、鍵穴だけがぽつんと中央に開いている。
まるで「ここを見つけた人だけが、先へ行け」とでも言わんばかりの佇まいだった。
リゲルが鍵を差し込む。
ぴたり、と吸い込まれるように鍵がはまり、カチリと軽やかな音が鳴る。
――扉が、開いた。
ぎい、と静かに軋む音のあと、現れたのは、予想以上に整った空間だった。
「……これって……部屋?」
アレッタが呟く。
奥行きはおよそ十二畳ほど。広くはないが、生活空間としては十分な広さだ。
中には、落ち着いた色のローテーブルと、その周囲を囲むように配置された布張りのソファーが三つ。
小さな書棚、手のひらサイズのティーセット、壁には過去の行事ポスターが一枚だけ斜めに貼られたまま残っている。
一歩入った瞬間、鼻先にふっと広がる、乾いた紙と古い紅茶のような香り。
それは清潔とも不快とも違う、“誰かが長くいた空間”に特有の、柔らかく沈んだ匂いだった。
耳をすませば、誰かの気配がまだ部屋の空気に残っているような、そんな錯覚すらあった。
「これ……状態保護の魔法がかかってる」
ライサが周囲を見回して言う。
「でも……完全じゃない。劣化防止は働いてるけど、経年劣化は少しずつ進んでる。十年……いや、それ以上かも」
ソファの角には色褪せがあり、ポスターの端はめくれ、テーブルの足元には薄い埃の線がうっすらと見えた。
それでも、どこか不思議な温度が部屋の中央に漂っていた。
記憶でも空想でもない、「ここに誰かがいた」ことの実感。
「ここ……誰かの隠れ家だったのかな」
シェラがソファのひとつに手を添えながら言う。
起毛した布地の感触が、今でも人を迎え入れるような柔らかさを保っている。
「壁の魔法刻印……多分、保護用と結界系が組み合わされてる。かなり高度だね」
サダルが慎重に指先でなぞりながら確認する。
アレッタはそっとティーカップを持ち上げる。
すこし曇っていたが、それでも光を受けて、小さく煌めくように反射した。
まるで、もう何年も前に注がれた紅茶の記憶までもが、まだそこに残っているかのようだった。
「……こういう場所が、あるんだね」
ぽつりと、アレッタが呟く。
「なんか……本当に、ちょっとだけ世界が広がった気がする」
その言葉に、すぐ返事をする者はいなかった。
けれど、その静けさは、誰かの思索や余韻で満ちていた。
六人は、各々の足でそっと一歩を踏み入れる。
まだ誰にも「使っていい」とは言われていない。
けれどその空間は、ひとまず彼らを、拒まなかった。




