表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/60

【第二十一話『甘いお菓子とミステリー』】①


主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。

    戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根

    戦術家だが感情に流されやすい。

    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。

    今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。

    3人目の仲間に天才サポーターのサダルが見つかった!現在チームは連勝中

 親友:現在スランプ中

    名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。

    戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身

    知らない物の値段を当てる特技がある。

    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。

 仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。

    戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成

    リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。

    万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。 

    最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。

    あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。

    一度リゲルの誘いを拒絶した。

お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。

    主人公のライバルチームのリーダー。

    防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。

    長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。

    相手を不快にしないお嬢様言葉で、作中5本の指に入る美人キャラ

    精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。

幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。

    主人公のライバルチームのメンバー。

    アバターはニワトリっぽい大きめのフードが特徴的。

    武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。

    高火力なので遠距離戦でアレッタと戦うのはやめた方がよい。

    陽気な性格の頭残念だが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。

    口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。

破天荒:ライサとアレッタに会い、2日で転校を決めた行動力の化身。

    名前は、シェラ。太陽牡羊座月双子座。

    主人公のライバルチームの3人目のメンバー。

    性格は、破天荒、ツンデレ、暴力的。

    すさまじい運動神経を持っている。

    精霊はオッドアイの白猫のしろっこ。

    通常時は、爆発ハンマーと爆発ハチェットで戦う。

    本気になると、両手持ちのリボルバーハルバードになる。

◆お茶会

訓練棟の廊下を進む途中――ふと、リゲルが足を止めた。


「……ん? なんか、甘い匂いしない?」


鼻をくすぐるのは、紅茶と焼きたてのクッキーのような柔らかい香り。

どこか懐かしく、思考を一瞬ほど緩めてしまうような、そんな匂いだった。


「この部屋……準備室じゃなかったっけ?」


ハクが呟く。

サダルも一歩近づいて、扉のプレートに視線を落とす。


「たぶん、空き部屋になってるはずだけど……」


リゲルがそっとドアノブに手をかける。カチャリ――音もなく、扉が開いた。


中から立ちのぼるのは、予想以上に本格的な紅茶の香り。

視線の先には、簡易テーブルとソファが置かれた、ちょっとした“くつろぎ空間”が広がっていた。


仮設のティーセット、レースのクロス、小さな花瓶。

そして三人の少女たち。


ライサ、アレッタ、シェラが、紅茶と焼き菓子を囲み、まるで午後のサロンのような雰囲気で過ごしていた。


「まあ……妖精さんたちが、匂いにつられて舞い降りてきたみたいね」


最初に声をかけてきたのは、ライサだった。

完璧に背筋を伸ばしたまま、優雅な所作でティーポットを傾けながら、ふんわりと微笑む。


「クッキーは、貰いものだけど、貴方達もいかが? 私たちだけじゃ食べきれないし」


その声はまるで演奏の一部のように自然で、気づけば彼女の周囲には舞台照明のような空気が宿っていた。


「……え、俺たち、入っていいの?」


ハクが戸惑い気味に呟く。

そのとき、部屋の奥から別の声が跳ねる。


「あ、ドジ男だ」


バシッと響いたその一言に、リゲルたちは同時にそちらを振り返った。


そこにいたのは、口を尖らせたシェラ。

赤いリボンを揺らし、両手を腰にあてている。


「ちょ、なにその呼び方……」


目を丸くするハクをよそに、シェラは構わず続ける。


「だってそうでしょ? この前、棚の下敷きになりかけたじゃん。戦闘中だったら即退場だからね、即・退・場!」


その“断罪”に、ハクが視線をそらすと、すぐさま別の声が跳ねた。


「うわあー! やっぱり来た来た!」


ぴょんと立ち上がったのはアレッタ。

椅子を軽く蹴るようにしてこちらに駆け寄り、目を輝かせる。


「ねえねえ、さっきの模擬戦すごかったよ! あのペンギンの子、どっかんどっかんって砲撃してたやつ!

あとあと、リゲルくんのビット! びゅいーんってなって、きらきらって光ってて、あれ、あたしだったら絶対当たってた!」


「それは困るでしょ」


と、ハクがぼそっと返すが、アレッタは聞いていない。


「はいっ! これねー、バター控えめのミルククッキー! 紅茶は、ベルガモットの香りつきだよ!」


アレッタが、目を輝かせて紹介する。

手元のガスコンロでは、ミネラルウォーターが小さく泡立ちはじめ、ティーポットの底をゆっくりと温めていた。


ふわり、と立ち上る湯気に混じって、淡い柑橘と乳香の香りが鼻腔をくすぐる。

それは紅茶と焼き菓子の香り――だけではなかった。


アレッタのそばには、いつもほんのり甘く、どこかミルクキャラメルのような香りがあった。

体温そのものが拡散しているような、あたたかくて素朴な気配。


彼女の服に染みついた、繰り返し洗った綿の香りと混ざって、それはまるで日向で眠るぬいぐるみの匂いのようでもあった。


「さっき、ライサが“たぶんこれが合うわ”って選んでくれてさ。クッキーと紅茶の相性って、奥深いよね~」


陽気にしゃべりながらも、その動作に無駄はない。

湯温を見極めながら、カップの一つに湯通しをする仕草は、慣れた手つきだった。


その横では、シェラがテキパキと人数分のティーセットを並べていく。

陶器の小さな音が、準備室の静寂に、控えめながらも心地よく響いていた。


シェラが腕を動かすたび、ふわりと柔軟剤のような香りがかすかに立ち上った。

それは、柑橘とホワイトムスクを混ぜたような清潔感のある香り。


けれど、ただ甘いだけではない。

戦闘後の汗すら跳ね返すような、すっとした芯のある残り香がそこにあった。


まるで彼女自身の気質――強くて、まっすぐで、裏表のない気迫をそのまま香りにしたような。


「……なんか、普通に生活感あるな」


ぽつりと漏れたのは、ハクの言葉だった。

視線の先には、焼きたてのようにほんのり温かいクッキーの皿と、花柄のティーセット。


数時間前まで、火花と衝撃が飛び交っていたとは思えない、静謐な午後の光景。


そんな中、ライサが注ぐ湯の動きに合わせて、ごく淡い香水の気配が広がる。

柑橘とは別系統の、白い花のような冷たい甘さ。


それは食器棚にしまわれていた磨き上げられた磁器の清潔な匂いとよく似ていた。

人肌ではなく、あくまで「整った空間」の匂い。誰にも近寄らせない、距離のある気品だった。


「でもまあ……戦い終わった後って、甘いのって合理的かも」


ハクはクッキーをひとつ手に取ると、じっと見つめた。

縁が少しだけ焦げていて、厚みのある焼き上がり。


軽く噛めばさくりと音がし、ほどよい甘さが舌に広がる。


「糖分補給って、たしかに理にかなってるし。疲労回復にも、気分の安定にも効果あるって、前に授業で……」


「はいはい、むずかしい話は禁止~」


アレッタが笑いながら、ハクの前に紅茶を置いた。

湯気の向こうで、彼女の目元が楽しげに弧を描いている。


「でも、やっぱり一番の理由は――」


「美味しいから、でしょ」


言葉が重なる。


少しだけ間をおいて、ふたりとも、くすっと笑った。


ライサが湯を注ぎ終え、優雅な動作でティーポットを戻す。

その所作には、最初から最後まで乱れがない。

まるで日常のひとつとして、お茶会が組み込まれているかのようだった。


「貴方たちも、どうぞ。私たちだけじゃ食べきれないし」


そう言って手招きするライサに、リゲルはほんの一瞬だけ視線を合わせた。

整いすぎた空間。寛ぎきった態度。なのに、わずかに“待っていた”ような気配がある。


――これはただのお茶会じゃない。


喉に触れた紅茶の温度は、驚くほどちょうどよかった。


ハクが口をつけると、表情の端がわずかに和らぐ。


「……あー、これ、マジで効くな」


その一言に、アレッタが自慢げに胸を張る。


「でしょー? 戦ったあとほど、美味しいの!」


さりげなく口をつけたサダルは、何も言わないまま、ほんのひと口でクッキーの甘さを咀嚼している。

その視線はテーブルに向いていたが、耳だけは、どこか周囲の会話に注意を払っているようにも見えた。


ティーカップから立ち上る湯気の向こう――ふと、ほんの微かな“匂い”が、リゲルの鼻先をくすぐった。


新品ではない、けれどしっかりと磨かれた磁器や銀の道具特有の、

どこか骨董品の棚を思わせる、澄んだ清潔感のある香り。


風のない室内で、それは静かに空気の層を満たしていた。


その香りに気づいたかのように、サダルがふいに誰かの手元に目を向ける。


「……それ、色違いの箸?」


サダルの声は、気取ったわけでも、揶揄したわけでもない。

ただ、ごく自然に“観察の結果”を口にしたような調子だった。


ライサは、箸を持ったまま微笑み、指先をわずかに傾けて見せる。


――片方は、深く染み込むような夜藍。もう片方は、やわらかな陽光のような淡金。


「ええ。本来は対のものではないの。けれど、私はこの組み合わせが気に入っていて」


言葉とともに、箸の先でクッキーの欠片をすくい取る。

所作は極めて丁寧で、まるで“見えない糸をほどく”ような優雅さがあった。


「太陽と月は、時に並んで昇るものよ。

昼の名残と夜の兆しが、ほんの一瞬、空の端で交わる……そんな時間が、私は好きなの」


窓際、午後の光がぼんやりと差し込んでいた。

ライサの横顔は、その光と影のちょうど境界線にあった。


「……並んで昇る、かあ」


リゲルが、ぽつりと呟く。

隣でクッキーをつまんでいたハクが、ちらりと視線を向ける。


その時だった。リゲルの表情が、一瞬で“設計モード”へと切り替わる。


「ねえ、ハク。君の双剣って、左右で性能ぜんぶ一緒だよね?」


「うん……まあ、そうだけど?」


「もし、左右で別の性能にしたらどうかな? たとえば、片方が吸収型、もう片方が反射型とかさ」


思いつきを口にしながら、リゲルはどこか“戦場”の空気を思い出しているようだった。


サダルも少しだけ反応し、カップの取っ手を無意識に回す。


「……用途に応じた選択肢。戦術幅は確かに広がる」


「でしょ? ビットと同じで、左右対称って、実は非効率かもって思って」


その視線には、もう次の模擬戦が浮かんでいた。


「これ……誰が作ったの?」


サク、と控えめな音を立ててクッキーをかじったハクが尋ねる。


「エルナ先輩!」


アレッタが即答する。


「うちの“ママ”って呼ばれてる人! 今は自分の専門の学科中なんだけどね、朝から焼いてたの見たよ!」


「すごいおっとりしてて、話し方もゆっくりで、怒ったとこ見たことないの。

誰かがケンカしてても、そばにいるだけで静かになっちゃうっていうか……」


アレッタは頬をほころばせながら続ける。


「匂いもね、なんか、紅茶と石鹸を混ぜたみたいな感じで、すっごく落ち着くんだよ……!

一緒にいると、勝手に眠くなる。シェラなんて、何回か本当に寝ちゃってるし!」


聞きながら、リゲルは想像の中で“ママ”の輪郭を探ろうとした。


「……で、戦い方は?」


問うと、アレッタは首をかしげた。


「え? うーん……動かない……のに、気づいたら負けてる、みたいな?」


「立ってるだけで相手が息詰まるタイプか」


と、サダルが分析する。


「うん、あと、回復魔法がすごいんだよ!

『疲れる前に座るのが一番よ』って言って、みんなにクッション配ってくる」


リゲルも思わず笑った。


「なんか……それ、癒しっていうより催眠じゃ……」


「そうそう、癒しの中に眠気と説得力が入ってるの!」


アレッタは感動したように手を打つ。


「……あの人がいるから、ザビチームは無敗なんだよね」


ぽつりと、シェラが言った。

腕を組み、少し不満そうに。


「え? 戦わない人なんじゃなかったの?」


リゲルが思わず聞き返すと、シェラは鼻で笑う。


「戦わないけど……落ちない。っていうか、落とせない」


ぶっきらぼうな口調のまま、彼女は言葉を継ぐ。


「ぶっちゃけ、あの人が全力で回復してる間は、ザビは落ちない。

アレッタの狙撃クラスの一撃が通らないと、削り切れないレベル。

しかも、射線をザビが絶対に通させてくれない」


言いながら、シェラの目が鋭さを帯びる。


「ザビともう一人の刀使い――あの二人がいる限り、こっちの攻撃手段は限られる。

孤立させようとしても、絶対に間に合ってくるんだよね。……ほんと、めんどくさい」


肩をすくめるシェラの声に、わずかに苛立ちと敬意が混じる。


「うんうん!」


アレッタが、クッキーを手に誇らしげに頷いた。


「エルナママは、校内最強のサポーターだよ! 私、いつも餌付けされてるの~。

しかもね、お菓子の完成度がね、変なの。体力も回復するし、たまに魔力も戻る気がする。バグ?」


ぴくりと反応したサダルが、カップを置いた。


「……それ、構造適応型の回復フィールドじゃない?

もしかしたら本人の意図とは別に、アバターごと作用する“波”を出してるかも」


真顔で分析を始めたサダルに、アレッタはポカンと口を開ける。


「えっ……ただの紅茶のつもりだったのに……」


静かに笑ったのはハクだった。


「……なんか、すごい人だな。会ったら、すぐ寝ちゃいそう」


ふっと空気が落ち着いたところで、サダルが低く呟く。


「……補助に全振りで、最強ってのもあるんだね」


それは、単なる感心ではなかった。

機能的な視点で“構造的に負ける”という事実を認めた声だった。


「いや、普通にすげえな」


ハクが手元のカップを傾けながら、ぽつりと言う。


「リゲルのビットでも……ダメージの速度が、あの人の回復に勝てないよ。

戦ってる最中、どんどん再生されてく。あれは、バケモン」


リゲルはと言えば、やや呆けたように小さく言った。


「そんなすごい人がいたんだ……知らなかった」


静寂が少しだけ満ちる。


けれどそれは、萎縮ではない。

自分たちがまだ見ぬ「上」を確かに認識した――その余韻だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ